第97話 死の商人③
セーラー服着た月のお仕置き美少女と九十九里ある浜の歌、似てるよな?
「フッヘッヘへへ、サビを入れ替えても全然違和感ねーぜ」
馬に乗りながら一人歌いつつヘラヘラ笑う俺を奇異な目で見る狐・ゴリ・鶏のトリオ。
傭兵達は巌のような顔面を鼻まで隠すバイザー付き兜のせいで表情が分からない。
「アンタ、その歌はどんな歌なんだ?」
ちょっと呆れの混じった声で傭兵隊のリーダーが声を掛けてきた。
「乙女心を唄ったものだ。何かリクエストがあるなら応えるぞ。俺の世界の歌になるがな」
昨夜は野営することになり、多少なりとも彼等傭兵隊の連中とも交流を持ったわけだが、なんとも愚直というか生真面目というか……
傭兵といえば半分盗賊のようなヤツらなのかと思っていたが、そこらの職業軍人より任務に忠実だ。
特段粗野なわけでもないが、華美といった言葉とは縁遠い。
戦闘に特化した動きは洗練され、質実剛健という言葉がしっくりくる連中だった。
彼等の出身地はハイランド公国らしい。
あのアイリーンの出身地と同じだ。
元々資源に乏しく作物も豊かではない土地であったが、昔から人的資源として兵を提供してきた民族である。
5・60年前に一人の男が現れ、行われた行政改革や教育普及などで各部族の緩い集まりから国家へと急成長を遂げた国でもある。
アイリーン曰く、建国の父とされる『雷神トオル』は多分異世界人との事。
今や領土面積こそ小国ながら、魔術大国として大陸屈指の力を持つまでになった。
傭兵稼業も未だ盛んであり、屈強・頑健・勇猛で引く手数多のハイランド出身の傭兵部隊はハイランダーズと呼ばれ各国で精鋭部隊として活用されている。
設定が北欧なのかケルトなのかは分からんが元日本人のトオル君の可能性は高い。
休憩の際、ハイランダー達のリーダーがマンゴー号を褒めてきたので馬の水やオヤツの角砂糖を傭兵達の馬にも用意してやったら大変喜ばれた。
結構気のいい連中であることが分かり、夜の野営地では作り置きの熱々シチューを振舞ったら戦士の舞踊とやらをハイランダーの傭兵全員で披露された。
「実は俺の相方もハイランド出身でな。魔法使いなんだが、そいつの気に入ってる歌舞を披露しようじゃないか」
ほぉー!とハイランダー達が盛り上がる。
『いくぜ!ワンツースリーフォーーー!』
48人いるのかいないのか知らないが、俺はヘビーなローテを疲労した。
勿論、全力のフリ付きだ。
アイリーンもそうだが、この手の歌や踊りはハイランダー達には馬鹿ウケだった。
これは民族の血がそうさせるのだろう。
狐・ゴリ・鶏の三人は盛り上がるどころかドン引きしている。
そんなこんなで友好を深めた俺たちは、出発翌日の夕方前には目的地の村にたどり着いた。
物々しい集団である俺達一行を前に、怯えはするものの当たり前のように村の中に招かれる。
村の中心で一番大きな屋敷の前に着く。
「ご苦労様でございます。荷が見当たりませんがこれはどうかされましたか?」
村の人間よりは幾分か身なりの良い老人が、こちらに声をかけながら寄ってきた。
この男も武器密輸に関わっているのだろう。
武装した集団を前に怯えなど無く、口調は穏やかだが目が据わっている。
「村長、アンタは黙って指示に従ってればいいんだよ!荷物ならある。馬の世話でもしてろ」
狐は吐き捨てるようにそう言うと、屋敷の中に消えた。
村長と呼ばれた老人は、俺を見るとニヤリと笑い
「これは珍しい」とだけ言うと、村人衆に一行の馬の世話をするよう指示して屋敷に戻っていった。
(この村全体がガゥネッド商会の息がかかっている所をみると、中々根が深いのかもしれんな)
俺は思っていたよりも獲物が大きい事に喜び、内心ほくそ笑んでいた。
————————
保存し忘れたのか、書いたはずの内容が結構消えててモチベーション駄々下がりで書き直しました。
変な文になってたらごめんなさい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます