第76話 ブリスク⑤
五男であるモーリッツの部下から報告を受けた私が、その衝撃で気を失わずに済んだ事を自分で自分を褒めてやりたい。
聖女様より「扱いには細心のご注意を」と、あれほど念を押されたのでモーリッツを迎えにやったのだが……
よもやの三男が使徒様を拐おうとして殺された。
直接手にかけたのが息子のモーリッツだと聞いて僅かに安堵したが、我が家の恥を晒すという失態を挽回できた訳ではない。
この領内で使徒様の身に何かあったらと思うと……
背筋が凍るとはこの事か
聖女様のあの忠告は、『聖人として丁重に扱え』という意味ではなかったように思う。
変な気は起こすなとか、手を出すな、とは直接には言えないような回りくどい言い方であった。
五男の部下にはその足で教団に報告に行かせ、自ら私兵隊を率いて迎えに行く。
領主補佐の長男は「領主自らのお迎えとは些かやり過ぎなのでは?」と不満気であったが、これ以上の失態は万が一にも避けたかった。
次男は大都にいるし、四男は寄子の子爵家に婿へやったので家からはもう馬鹿は出ないだろう。
我が家の癌であった第二夫人との間に生まれた三男を厄介払いのように僧籍に入れたのが間違いだったのかもしれん。
白光教団ではなく
すぐさま第二夫人に蟄居を命じる。
抗命するならば斬れと命じた。
「出発!」供回りとして一個小隊を引き連れて使徒様の下へ向かった。
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よもや腹違いとはいえ、自分の兄弟を手にかけるとは今しがたまでの自分には考えられなかった。
まぁ、自分で殺しておいてなんだが、死んでくれて清々した。
アイツは昔からどうしようもないクズだったので、個人的に今回の件はあのクズを始末する良い切っ掛けではあった。
同じ貴族家の一員としては、些か不名誉かつ今後の成り行きを考えると頭が痛いが……
クズの取り巻きの蝿を数匹斬り捨てると、甘い汁を吸いたいだけの有象無象の者達は去っていった。
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高級宿の支配人に清掃代として大金貨を握らせ、迷惑料は後で領主家に払いに来させると言って五男を指すと支配人は恐縮したがモーリッツは苦笑いで了承した。
快適に過ごせる宿を追い出されたくないからな。
領主館に移動する途中に領主本人が30名程の兵を引き連れているのに遭遇した。
どうやら息子の失態を知り、自分で出張って来たらしい。
街中で領主本人が謝罪など出来ないだろうと思い、
「領主自らのお出迎え、誠に痛み入る!されど互いの親交を深むるをこの場にあらず。お館にてこれを叶わんとせん!」
(今更出て来やがって!お互い言いたい事が色々あんだろ?ここじゃ不味いからお前ん家でやるぞ!あん?)を適当にそれっぽく言ってみた。
「使徒様のご来臨、心よりお待ちしておりました。当家への訪問、恐悦至極に存じます。つきましては、道中案内に馳せ参じたしだいでございます」
辺境伯は本当に信心深いのか、道中でも領主館においても下にも置かぬ対応を見せた。
もうちょっと横柄だったら遠慮なく搾り取ろうと思っていたのだが。
本当にあの間抜けの親なのか?と疑ってしまったが、長男・五男と話した感じは至極まともだ。
貴族、特に領主等の特権階級と揉めたいわけじゃないので、今回はブリスク家が所有するあの高級宿の宿泊費永久無料、食事・サービス代別途自己負担で手を打った。
アイリーンにも手を出そうとしたので2人分だ。
手打ちを終えたところで白光教団のチクポチ巨乳聖女がえらい剣幕で領主館に乗り込んで来たのを「邪魔だ」と追い返そうとしたが、アイリーンに泣いて縋り領主館に居座った。
「流石お姉様!使徒様、領主様、あの
父親を前に、死んだ息子をクズ呼ばわりする聖女にちょっと引いた。
「それで、領主様。使徒様が天より授かりし聖衣を
聖遺物として認定しました。御神体として所蔵する聖堂の方はどうなりましたか?」
俺はまだ死んでないんだが?
この女、オッパイに栄養がいき過ぎて頭に回ってないんじゃないか?
「そちらの方は順次進めてまいりますので、今しばらくお待ちを……」
辺境伯も何か言ってやれよ!
コイツさてはオッパイの僕か……
まぁ、
クラッといきそうになるもんな
「ところで、特に何も無ければ、近いうちに俺達は一度ヒッチーノの町に戻ろうと思ってるんだが、急ぎ手伝って欲しい仕事とかないか?魔石の借りを返す約束だからな」
「あのような素晴らしい聖衣を頂いた上にお力をお借りするなど滅相もございません!使徒様への助力は我らが天命であります故」
完全なる只の初期装備です、ありがとうございます!
しかし聖女はこの何の変哲も無い初期装備から聖気を感じるらしい。
「嘘くさー!」って言ったらどうやら本当に感じるらしい。
何の効果があるのかと聞けば、「善人や聖属性の人間に親切にされやすい!」らしい。
それ、最初から普通に親切にしてくれる人じゃん!
装備効果関係ないじゃん!
まぁ、俺には興味も関係もないのでどうでもいいのだが、やたらありがたがるのでこっちが心配になる。
後で返品とか言われてもクーリングオフなんて応じないけどな。
魔石は既に美味しくポイントに変換されました。
魔石で気づいたのだが、辺境伯もマルコス商会から魔石を購入したはずだ。
「辺境伯も魔石を集めてるんですよね?何処かに送るご予定が?」
「アレはクンニ派貴族が教皇庁に御布施として送ろうとした賄賂です。辺境伯と我々が買い占めてクンニ派に高値で売りつけたのですが、彼らには無用になりましたね」
ヒッヒッと悪どい笑い方をする聖女ってどうよ?
辺境伯は魔石を確保する見返りにクンニ派から結構な額を貰ったらしい。
白光教団・辺境伯・マルコス商会がグルになってクンニ派から金を巻き上げる、ちょっとした市場操作を行ったようだ。
商取引法無くて良かったね
敵対勢力にはなかなか悪どい聖女達だ
しかし、そんな事は俺には関係ない。
興味があるのは購入者が死んだために浮いた魔石の行き先だけだ。
「フム。辺境伯は魔石の使い道が無ければ俺を雇ってみませんかね?対価は魔石で。差し当たり潰して欲しい組織や人物の処分を任せ貰えればと。勿論、善人や罪なき人は無理だが、クンニ派や悪人の……この際なかなか手を出せないでいたような奴等を粛正しておくというのはどうでしょう?」
物騒な押し売りに、軽い感じで「どうでしょう?」はないだろう。
自分でもどうかと思うが、まとまった魔石とレベルアップの為だ。
「あ、いや、流石に使徒様にその様な……」
「領主様、オフレコですが……審問官とその部隊を全滅させたのは使徒様です。我々はその御威光を見ていただけでした。使徒様がお望みであるのなら、お任せしてみてはどうでしょう?」
反対されるかと思いきや、巨乳聖女から援護を受けた。
無駄にオッパイがデカイだけの女ではないらしい
やるじゃんポッチ聖女!
今回、割と強引なレベルアップと魔石回収を進めようとするのには訳があった。
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ブラックホーク・珍太郎
レベル:10→15
職業:まほうつかい
力:25→37
魔:13→16
体:18→26
速:18→28
技:17→24
魔法・スキル
バレット改、生活魔法、身体強化Ⅱ、初級地魔術
格闘術Ⅲ、短剣術Ⅱ、短槍術Ⅰ、射撃Ⅱ、
隠密Ⅱ、察知Ⅱ、魔力操作Ⅱ、狙撃Ⅱ、魔力感知Ⅰ
称号
異世界人、使徒、魔弾の射手(※魔弾の威力小UP・消費魔力低下・精密誘導射撃可能)、粛正者(※神敵特効)
おそらく前回のレベルアップでポイント交換一覧に『
これはもう、レベル上げるしかないでしょ!
『まほうつかい』卒業でしょ!
おいくら
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やっと仕事納めです!
皆様も今年1年、お疲れ様でした!
今夜はすき焼きにお刺身とちょっと贅沢してみました。
クッソ寒いので風邪など引かないようにしましょうね。
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