第70話 神敵

「それで?アレもお前達の仲間か?」


 なし崩し的に同道するマリアンヌに一応確認してみたが

「アレは聖教の旗……異端審問官の旗が混じってるみたいですね。我々とは所属が違います」

 どうやら別口らしい。


 非常に面倒な予感がする


 商業都市ブリスクを目前にして、またしても白を基調とした派手な一団が俺らをお出迎えだ。


 そいつ等は白光教団より悪趣味な意匠の旗と白装束の100人前後で皆武装している様子だ。

 街まであと2時間はかかるという中途半端な距離で待ち伏せし、街道を塞いだ。


 これまた使徒コチラを捕捉しているのかと思ったが、白光教団が同行している俺達は超目立ってるのでめちゃくちゃ分かりやすい一団である。


「我ら聖教審問団!教皇猊下より命を受けた大司教様より使徒の保護と援助を申し使った!使徒をコチラに引き渡すよう願う!」


 やけに甲高い耳障りな声で俺を引き渡せなどとぬかしてきやがった。


「我々は南部・白光教団!聖女位にして託宣を受けし者なり!使徒様をお出迎えいたし、天命により使徒様に助力せんとする者なり!」


 派閥間でのクソみたいなマウント合戦が始まった


 無駄に高い声のオッサンよりチクポチ聖女マリアンヌの方が有利のように思えるが、組織内の力関係は向こうに分があるように見える。


「どちらの大司教様か知らぬが、使徒様を物のように引き渡せとは不敬千万!使徒様の意志は無用と申すならば我ら白光騎士団がお相手いたすが、如何に?」

 白騎士一団の中から壮年の男が一人出てきて胴間声を張り上げる。


 なかなか好戦的だ。一団の中でも一目で"強い"と分かる男だった。


 正直、ストーキングしてたお前らが言うな!とも思ったが、おかげでモブ太は助かったしポイントガッポリ頂いたのでまあいいか。


「其方らは教皇猊下に楯突くと申すのか!未だ力なく困っているであろう使徒に対して、大司教様からのありがたい救いの手であるぞ!其方らは大人しく使徒を此方に引き渡すべし!」


 まぁ何というか、別に俺は自分の事を偉い人間だとは思っていないし、ちょっとは偉ぶりたいが……大それた人間ではないのをよく知ってる。

 だからといってコチラの意思に関係なくその自由を奪われるのを黙って受け入れるほど大人でも従順でもないし、平和主義者でもない。


 俺を含めた転移者達の使命を邪魔する者達は神敵である。

 それらを排除するのが俺に課せられた使命の一つでもある。

 つまり、遠慮はいらないという事。


「あーあーあー!どうも使徒です!俺はアンタらに助けてもらわなくても大丈夫だから!お引き取り願いたい!ここまで来てもらって悪いね!じゃあそんな訳でご苦労さん!」

 一応、商隊に迷惑をかけないように穏便にすます事が出来ればいいかなと思ったが……


「猊下の代理である大司教様の温情が分からぬとは!貴様等使徒達の中にも些か頭の鈍い者もいるのだな!我らと共に大司教様に仕えた方が其方のためだとわからんとは、所詮蛮族異人の類いか!」


 よもや、ウォシュレットも使った事ないような人間に蛮族扱いされるとは驚いた!

 蛮族は電動オナホとかハイテク機器使わないぞ?


 顔も知らん奴に使われたいと思う方がどうかしてるとしか思えないんだが、コイツに言っても無駄だろ。


 白光教団側は激おこで既に臨戦態勢を取っている。

 ボルグは凶悪な顔をニヤケさせ、ガストンは諦めの表情だな。


 アイリーンを見るとヤッてやれと無言で顎をクイッと奴等に向けてしゃくる。


 白光教団にその場で待てと手で制し異端審問官に歩み寄る。相対距離は30m弱。


「なるほど!貴様等は我ら使徒の使命を阻み!また、その力を私欲の為に欲さんとする神敵と定めた!神に仇なす者は排除する!死にたくなければ5秒やる!身を伏せろ!」

 警告はしてやった。


 身を伏せる奴はほとんどいなかった。

 奴等が俺を"未だ力なし"と侮ってくれたので戦闘態勢を取る事もなかった。


 5.56mmバレットをフルオートで薙ぎ払うように射撃。即座に魔力を装填、更に30発を打ち込む。


 ただの虐殺劇だった。

 さしたる抵抗も出来ないままに倒れ伏すばかりの奴等は盾、鎧の意味なく穴だらけ。

 聖教が"奇跡"と称する類いの魔法も発動させる間もなく撃ち殺す。


 三度目の掃射を終えると、立っている者が残り2割強となった神敵へと身を落とした悲しき元聖教審問団。


 この集団の統率者である異端審問官は身に起こった事態に呆然としていたので、両脚をフルオートで穴だらけにして現実に戻してあげた。


 この世の終わりとばかりの叫び声を上げる審問官


 仲間の大半が穴だらけで倒れた事に頭も体もついてこない残った二割強の僧兵達に指を向けると、狙いすましヘッドショットを行いながら歩をすすめる。


 恐怖に混乱し体が動かないのか、ただの的となった奴等の頭が「パン」と弾けて水っぽい音がする。


 掃射で死ねなかった奴等にもとどめを刺してあげる慈悲深い使徒の俺。


 アイリーン以外の商隊のメンバーと白光教団は突然の事態と余りの凄惨さに声一つあげる事なく、その場に立ち尽くしていた。



 詠唱無しで低出力・高連発できる魔法の有利性を遺憾無く発揮した。

 防御・防護魔法を発動させる前に殺す。

 攻撃魔法・魔術を展開させる前に殺す。

 白兵戦を敢行しようと近寄ってくる前に殺す。


 審問官以外を殺し終えると爆乳ポッチ聖女マリアンヌに声をかけた。


異端審問官コイツを死なない程度に回復できるか?出血を止めるだけでいい」


 ちょっとお話ししたいので、会話が可能な程度に回復を頼むとマリアンヌは審問官に近寄って"奇跡"を行使する。

 グチャグチャになった足の出血が止まって多少肉が露出してはいるが死にはしない程度に回復した。

 ポッチちゃんやるやん!とか思いながら審問官の顔を覗く。


 いい感じに恐怖に染まった表情だ


「これ以上の痛みと苦痛と屈辱を味わいたくなければ大人しく質問に答えろ。教皇、神聖教国は俺達の強引な確保又は捕縛を命じたのか?」


「貴様っ!こんな事をしてただで済むと思っているのか!明確な背信こガァぁぁぁあ!」


 ボロボロになった右膝の少し上から先をククリ刀で切り離してあげる。


「マリアンヌ。止血しろ」

 白騎士二人に審問官の体を押さえさせて回復の"奇跡"で止血する。


「もう一度聞こうか。教皇猊下とやらが俺等の捕縛を命じたのか?大司教とやらの独断か?150名近くを確保できるとでも?」


 出血のせいか恐怖と痛みのせいか、顔面蒼白で震える審問官は逡巡を巡らすが

「教皇猊下は大陸に散っている其方らの保護を御命じなされた!大司教様はそこの聖女が託宣を受けたと知り、使徒確保を私に相談なされたのだ!」


 コイツの言ってる事が本当かどうかは分からないが、案の定そこそこ強引に俺達を確保しようとする奴等が出てきた。

 誰が黒幕かは分からんし、今回のが忖度に忖度を重ねた結果だったとしても今後もこのような奴等は出て来ると考えた方がいいだろう。


 正直面倒だと思う反面、めちゃくちゃオイシイ!

 レベルがさっきのでまた上がったようだし、報酬メールの着信もあった!まだ開けてないけど。


 しかしこの討伐というか戦闘とも呼べない虐殺まがいの行為をあまり知られたくない。

 俺が、未だ"力なき使徒"だと思われていた方が何かといいんじゃね?と考えた。


「使徒であるブラックホーク・珍太郎が白光教団に命ずる!本日、神敵を討ち払い使徒を救いしは白光騎士団による働きであった。これを記録し報告せよ!私の言動を他言することまかりならん!」


 つまり、俺がヤったって言うなよ?あん?である。


 白光騎士団は皆跪き叩頭する

「使徒様の御意のままに!」とチョロい聖女。


 商隊連中には「できれば俺は『女に頼る腰抜けの使徒』って感じで噂の一つでも流すように、よろしく頼むよ」とお願いした。


 ボルグは笑って了承してくれたが、他はジト目で俺を見るか困惑の表情だ。

 目撃者は他にいないので今回の虐殺劇変な噂は広まらずに済みそうでなによりだ。



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 やっと週末でゆっくり寝れますね!

 師走で忙しい方も、そうでない方も健康に気をつけましょう!


 何故いきなり電動オナホなのか?

 近況ノートを見て下さい

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