第69話 俺、売られるってよ

「ねぇブラさん……あれ、なんなの?」

 騎馬民族青年チコは昨日の件もあってか、困惑と猜疑の目で"白の集団"を見ていた。


 町の出口の外に街道脇に隊列を組んでいる白光教団


「チコもう一回イッテこいよ。見ろよあのデカパイ!ものにしてこいよ!」


「絶対やだよ!もう騙されないからね!」

 そう何度も生贄になってくれないらしい。

 スレたチコなんて、オジサン悲しいよ!


 商隊が出口で手続きの為に停止したのでマルコスさんの馬車に乗り込んだ。


「マルコスさん、実はアイツらの目的は俺らしい。輸送の邪魔にならないようなら無視して仕事をこなそう。商隊の邪魔をするようなら……どうする?」


 思案顔のマルコスさんは俺を見て言う

「ブラ珍さん、実は聖教のお偉いさんか何かで?」


「そう見えます?」「まるで見えません」となり


「残念ながら違いますね。向こうがどう思ってるかは分からんが、敵ではないはずだ。ただ、輸送の邪魔になるようなら…ね?排除するのも止む無しかなと」


「イヤイヤ、教団や聖教を敵に回すのは不味いですね。人目の無い所で痕跡も残らないのであれば別ですが……いえ、別に多少の遅れは気にしないでも大丈夫ですよ!今回は順調なスケジュールのおかげで余裕はありますし」


 以外と黒いマルコスさんに

「……了解した。邪魔するようなら、こちらで対処するので……」と、馬車を降りた。


 町を出ると一糸乱れぬ白の隊列があの巨乳の『プルン』を合図に立膝の状態になり商隊を出迎えた。


 やっぱりあのオッパイはスゲーな!とか思いながらガン見していると、「そんなに気になるのか?」とアイリーンに言われドキッとする。


「イヤイヤ、そんなに見てないから!ちょっとだけだから!本当に」と言い訳するが、

「何の話しだ……奴等、使徒であるお前を探してて気になるんだろ?」

 あっ!そっち?オッパイをガン見してたのがバレたかと思ったじゃん!


 白の隊列は商隊が通り過ぎると立ち上がり次々と騎乗していった。

 徒歩の者達は残り騎乗した者達はゆっくりと商隊の後に続いてくるようだった。その数50騎。

 不気味だ……

 何も言わずに静かに、しかし異常に目立つ集団にストーキングされる事になるとは……


 せめて何か言えよ!と思わなくもないが、特に邪魔する訳でもないので放っおくことにした。


 ボルグなどあからさまに気味が悪いと顔に出し、チコは半ば怯えてる。


「アイツら何とかなんねーのか?」とボルグが俺を見るが、「護衛が増えたと思ってればいいじゃん」と返す。

 一応ボルグには朝の出発前に軽く話しておいた。

 大して驚く事もなく「へー、ふーん」て感じ。


 昼過ぎに街道沿いの野営地のような場所で休憩していたらモブ太から連絡があった。



 ————————

 黒井さん頼みがある!かなり強力な呪いをかけられてるのを解除したい。

 俺の渡せる物なら、命以外ならアンタに全部渡す。

 助けてくれ!

 ————————

   フーン……

   少しだけ待ってろ

 ————————



 モブ太のくせに生意気な。

 お前の命なんか一文にもならんわ!とは言わなかったが。

 普段の口調ではない。どうやら相当ピンチらしい。


 呪いねー


 確かに当てはある。ポイント交換だ。

 モブ太には使えないのか……


 お目当ての『解呪の聖水EX』を交換一覧表で見ていた。"どんな強力な呪いでも一発解呪!邪神戦のお供に!!"100000P

 高い!高いよ!とてもじゃないが手持ちのポイントでは手が出ない。後、邪神っているの?いても俺は戦わないからな……


 しかし!完全に諦めるのはまだ早い。

 一応手はある。今回の輸送品だ。


「マルコスさんちょっと来てくれないか!アイリーン、すまんがあのポッチ……白光教団の女を呼んで来てくれないか?使徒が話しがあると言えばいい」


 マルコスさんとガストン隊長、神聖ストーカーのポッチちゃんと護衛の白騎士二人が集まる。


「いやー、悪いね。俺がアンタ等の言う使徒なんだが、アンタ等の事なんか全然知らないから昨日はちょっと警戒しててね。でだ、マルコスさん輸送品の魔石、どれくらいの値段で捌く予定だった?」


 いきなりのカミングアウトでポッチちゃんは拝みそうになるが手で制す。そんな暇じゃないんだ。

 マルコスさんは相変わらず反応が早い。


「教会と辺境伯に半分ずつ。現在魔石を両者方が集めており両方とも"今回は"経費込の値段で白金貨140枚ほどですな。」

 今は売り手有利か……

 木箱120個で約1億4千万円

 流石にそんな金は無い。

 おそらく貴族方の魔石は勝手に手を付けるのは不味いだろう。


 神聖ストーカーズを見て話しかける。

「ポッチちゃんは、「私は白光教団聖女位のマリアンヌと申します!この度」分かったから、マリアンヌちゃんね!教会とはアンタ等と繋がってんの?全くの別物?」


「ブリスクの教会とは我が教団の傘下の教会の事かと思います、使徒様。現在、神聖教国の要望で魔石を集めておりましたので」


 それは願ったり叶ったり。

 後はどう報酬を捻り出すかだが、最終手段として身売りだがそれは嫌だ。

 巨乳には興味あるが束縛されるのは避けたい。

 何かないか?


「マリアンヌちゃんさぁ、お宅らの分の魔石が早急に必要になったんだよね、俺の従士がピンチなんだと。そこでだ、「是非、我らの魔石を使って下さい!使徒様の従士殿の危機となれば何を置いても優先して下さい!」あぁ、そう……支払いなんだが、「そんな物は頂けません!使徒様をお助けするのは我らの使命です!」お、おぅ……」

 しかしながらタダより高い物はない、世の中の常識だ。


「それならこんな物はどうだろう?神より賜りし聖衣、今なら何と!同じく天国産!皮のサンダル付き!これを教会に納めてもらうというのは」

 ただの初期装備の巡礼者の装束とサンダルだ。

 神が勝手に装備させていたのだから全くの嘘ではないはずだ。


「はうぅぅぅ!こ、こんな貴重な聖衣をわ、我が教会に奉納しててててて?」

 あ、コイツチョロいなとほくそ笑む。

「こここの溢れ出る聖気!ぁぁぁあ!神よ感謝します!おほぉーー!」

 あ、コイツヤベーなとも思った。


「と言う訳で、マルコスさん。教会に納品する分120箱俺が受け取るがいいかな?」


 マルコスさんには一応確認を取る。


「ええ。教会が支払いを確約して「大丈夫です!ブリスクに戻ってからになりますが、神に誓ってお支払いは確約します!」そ、それであれば私どもとしては教会・教団の意向に否やはありません……」


 かぶせ気味のポッチちゃんにクライアントのマルコスさんの許可は取れたので、120箱の木箱を取り出し護衛総出で箱の蓋をこじ開けてもらい端からポイントに変換する。

 その様子を見ながら拝むポッチちゃん達ストーカーズ。

 全部で130万P弱になった。

 一気にポイント持ちになった!

 しかし薄々気付いてはいたが、ポイント変換率が悪い。

 ゴブリンの魔石一個50gを末端価格約1000円として10Pだからな。

 切り詰めたくはないが現地調達出来る物は極力現地で購入しようと心に決めた。


 まぁ、魔石の大きさや色の濃さなんかでも価格は変わるらしいが大体そんなもんだ。


 ポイント交換で『解呪の聖水EX』をモブ太宛てにプレゼント送信。

「向こう5年間、お前が手に入れた魔石は俺の物な!」と追加でメールしておいた。



「これで何とかなったな。マルコスさんもマリアンヌも助かったよ。本当ありがとう」


 教団側への報酬など実質ゼロで少し気が引けるが、

 概ね全員ハッピーってやつだろう。



「教団側はそんなボロだけでいいのか?」

 何故かアイリーンは爆弾を落とす。


「一晩くらいならこの男を貸してやるぞ?添い寝でもして貰えばいい」


「お前は何「ななななななんですとぉぉぉお!」を言ってるんだ……」

 ブシューと鼻血を吹き出す残念聖女。


「聖女マリアンヌ!」

「其方!何を破廉恥な事を聖女様に対して!」


 気色ばむ白騎士に涼しい顔のアイリーンは

「使徒様の添い寝は破廉恥ではないだろう。お前ら女だからって男を抱きたいと思わないとでも思っているのか?お前らは女を抱くだろ?同じだろう」


 この聖教、性行為御法度では無いらしい。最高じゃんね!


 白騎士達は顔を赤くして何か言ってるが取り敢えず無視しよう。

 そんな事よりアイリーンが何故あんな事を言ったのかの方が気になる。


 アイリーンと集団から少し離れて真意を聞くと、聖女に俺はアイリーンのモノだとマウントを取りつつ教団側に恩を売りかつ今後の協力を取り付けやすく関係を深めるのだと。

 めっちゃドヤ顔で説明された。

 軽く人身売買じゃんね?俺、売られんの?


 コイツ時々ポンコツになるけど今回のはちょっとどうかなぁ……

「あの手の女は一発やったらコッチのモノだぞ」と、アイリーンは言うが……

「あの手の女は手を出すと後々面倒だぞ!」と返す。

 それよりお前は平気なのか?と聞こうか迷ってしまった。

 歳をとると食べる物と恋愛にはデリケートになるのだ。


 取り敢えず聖女と性行為の件は却下して、今回の魔石譲渡の礼として出来る限り武力的な事案に限って助力する事を教団に申しでた。


 少し残念そうな聖女と安心した白騎士達は一応喜んでるが俺の戦力などまるで知らないだろうから、取り繕ってる感がすごい。


 まぁ、お互い納得したし今回はめでたしめでたし!と

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