第33話 正当性
冒険者ギルドをウキウキで出てから、お待ちかねの異世界ショッピングを開始した。
さほど大きな町ではないので店選びも道も迷うこともなかった。
武器屋に入りゴブリンから奪った短剣を下取りし迷いに迷って手槍とメイスを購入。8
初期装備の巡礼者セットで冒険者をやるには流石にまずい。
服装は大事だ。
服に気を使わないオッサンはモテない。
服に気を使い過ぎるオッサンはもっとモテない。
さりげなさが大事だ
女にモテたくてモテたくてしょうがない
防具はとりあえず布製の鎧、といっても中綿入りのキルティングされてる丈夫な服といった方がいいか。戦闘服一式ではあまりに世界観が違うため一応購入した。TPOは大事だからな。
第二次大戦中のドイツ軍限定のコスプレ会場にガッチガチのシールズ風装備のヤツが来たらいたたまれないでしょ?お互いに。
靴はまぁセーフということにしておいた。
防具屋のオッサンに鎖帷子はいくらか聞いたら手持ちがほぼ無くなる感じで、ブリガンダインを薦められたが似たような機能とコンセプトならプレキャリの方が断然性能が良い。
とりあえずズボンと布鎧の上から締めるベルトもセットで購入した。キリよく7Gにしてもらい、店の中で着替えてベルトにメイスを通して店を出る。
大して必要ない干し肉や砂糖漬けのドライフルーツを冒険者の非常食っぽいからという理由で購入。
アイテムボックスがあれば温かい物を温かいまま食べることができるのに…
準備している時が一番ワクワクするのだと思う
これから冒険者生活が始まると思うとニヤけてくるが、一応大事な使命がある事を思い出しちょっとだけ溜息が出た。
野営用の鉄鍋や食器類、毛布を購入し宿に戻ろうと思ったが念のためギルドを出てから尾行してきているヤツらにお話しを聞く事にした。
路地を曲がり駆け出して逃げた風を装ってみせるとMAPの三つの点も慌てて追いかけてくるのがわかった。
二、三横道に入って追跡者の視線を切るとあまり使ってこなかった身体強化で建物の屋根に登る。
跳躍、壁を蹴り二階の窓枠を掴むと一気に身体を引き上げると体がフワりと宙に浮き上がる。
窓枠を足場に路地の反対側の建物に飛ぶと屋根を掴み体を屋根の上に引き上げた。
すぐに追跡者の3人が狭い路地を追いかけてきた
2人は男で中肉中背の金髪と背の低い茶髪
女は赤毛でロングブーツとショートパンツの間から見える太ももがいい!
襲うための尾行では無さそうだが、仲間を呼んでから襲う段取りかもしれないので様子を見る
「クソッ!逃げられたか!」と金髪
「本当に俺達の尾行に気づいたのか?」と茶髪
「じゃなきゃ、あんな必死に走ったりしないでしょ」と太ももちゃん
「とにかく探そう、金は貰ってあるんだ。まさか失敗しましたじゃ、信用ガタ落ちだぜ!」と金髪
仲間や依頼者の元に戻るなら太ももちゃんをストーキングしてやろうと思ったのに…
まぁ、尾行していたのと依頼したヤツがいるのがわかれば多少無茶しても正当化できる。
少なくとも俺の中では…
「とう!」屋根から飛び降り着地
レベルアップと身体強化のおかげで二階建ての屋根から飛び降りる程度ではなんら問題ない
5点着地を使えば2、3倍の高さも飛び降りできそうだ
急に上から落ちて来た俺に対して唖然とする3人に笑顔で挨拶
「こんにちは!死にたくなければ質問に答えろ。」
流石に冒険者なのかすぐに臨戦態勢をとるが、一瞬だけ遅れた茶髪の膝を関節の逆方向に蹴り抜いた。
「武器は抜かないの?舐めてるの?太もも舐めさせて?依頼主はだれ?依頼内容は?」
矢継ぎ早に質問するが返ってこないので
呻いて地面を転げ回る茶髪の反対の膝をバレットで撃ち抜いて
「逃げようとしても殺すし、質問に答えないならコイツの体に穴が空く。コイツが死んだら次はお前らのどちらかの体に穴が空くことになる」
どうする?と
「待ってくれ!俺達はあんたを尾行してただけで襲ったりするつもりは無い!」と金髪が答えるが、茶髪の肩をバレットで撃ち抜いた。
さらに叫ぶ茶髪に「ひどい仲間だな。お前の体に穴が空くのが楽しいらしいぞ?質問すらまともに聞いてないんだ。」と、話しなんか聞こえていないだろう茶髪に同情の言葉をかけた。
「ギルド長よ!貴方の身辺を探るのが目的で、私達は監視して報告するだけ!」
顔面蒼白の太もも赤毛ちゃんは舐めていいとは言ってくれなかった。
金髪は苦虫を噛み潰したような顔をしていた
あの役人風の男か…
「ああ、もう行っていいよ。次は無いからな。」
と言うと、茶髪の止血を済ませると金髪が肩に担いで去っていった。
パイパンヘッドの仲間達が報復する為かなとも思ったが…
まぁ、あの男ならと納得して、今後どう対処するか考えながら宿に戻った。
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