第20話 漢を見せつける使徒

 いつもより強く力が漲る感覚がしたが、レベルアップの確認は後回しにして、燃えてる囲いに水を掛けて回った。


 狼の素材も大半はダメだろな、勿体ない


 ボス魔狼の亡骸を近くで見たが鳥肌が立った。


 死して尚倒れる事を拒むその威厳のある存在に

 単純にその牛ほどもある巨体の威容に


 仔牛程度って言ったの誰だよ!

 牧場主か!


 コレとまともに戦っていたらと思うと、ブルッと体が震えた。


 今だに腰が抜けて立てない息子を置いて親父の方も燻って場所に水を掛け始めた。


「アレも魔法ですか?凄い破壊力でしたね」少し強張った笑顔で聞いてきた。


 無理もない、俺自身の笑顔だってちょっと強張ってるのがわかるもん。


 言葉を濁し適当に笑って誤魔化した。


 魔狼とボス魔狼から魔石を取り出し、ボス魔狼以外は素材が取れそうになかったので、穴に落として埋めることにした。


 この土操作魔法、今回大活躍だったなと思い防御用に掘った穴を埋めていく。


 母屋へ息子を戻した牧場主が奥さんと抱き合うのを見て、討伐できたことに喜びと安堵を感じた。


 ふと水を汲んで置いた樽を見てドラム缶の風呂を思いついた。


 早速、樽の内側を調べて中の水を横倒しにして一旦捨てると、生活魔法でお湯を貯める。

 早速服を脱いでお湯に浸かると

「ふーぁーーーーーっ!」と変な声が出て、疲れと緊張がお湯に溶けていくのをかんじた。


 ある程度片付けたとはいえ、今さっきまで戦闘を行っていた場所で裸で樽風呂に入る俺を呆れた顔で主人が、アラアラといった顔で奥さんがこちらを見ていたので手を振っておいた。


 アイテムボックスからタバコを取り出し吸いながらステータスを確認する



 レベル:6

 職業:まほうつかい

 力:17

 魔:10

 体:11

 速:12

 技:10

 魔法・スキル

 バレット改、生活魔法、身体強化Ⅰ

 格闘術Ⅱ、短剣術Ⅱ、射撃Ⅱ、隠密Ⅰ、察知Ⅰ、魔力操作Ⅱ

 称号

 異世界人、使徒、new魔弾の使い手※魔弾の威力小UP・消費魔力低下


 相変わらずの力よ…

 新しい魔法はもうこの際無視だ

 魔力操作が上がっているのを見てガッツポーズ


『魔弾使い』と『魔弾の使い手』って同義語だろ?威力小UP?助かるぜ!


 魔弾の魔改造でもしようと思っていたら村の男衆が武器を手に(ほとんどは農具だったが)現れた。

 爆発音を聞いて応援に来てくれたのだろう。

 この村いい村だなぁと暢気に風呂に浸って見ていたら、男衆の後ろから村長が息を荒くして姿を見せたので、手を振って「お〜い!村〜長〜!」と声をかけた。


 裸で樽に浸かっているのがよっぽど理解不能だったのか、誰も声を発せずにいた感じだ。


 声を聞いて牧場主が村長に駆け寄り、事の次第を説明していた。


 俺はそれどころじゃない!重大な事実に気がついた!


 タオルがない


 いや、頼めば良いのかもしれんがそれはちょっとカッコ悪いだろう

 アイツ何も考えず風呂に浸かったの?馬鹿なの?的な……


 ここは堂々としていた方が逆にいいんじゃね?と思い

 両足を広げ、樽の縁に立つ!

 ああ、全裸で樽の上で仁王立ちするこの漢らしさよ!

 風魔法で全身の水気を払い、特に乾きづらい股間に入念に風を送る。


 ナニがブラブラするのも厭わず腕を組むその姿はまさに男闘呼立ちと呼んでもいい 


 などと自画自賛していたら、村長と村の男衆は微妙な顔のまま帰っていった。

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