第17話 息子がビクンビクン

 敵対クランのプレイヤーに見せつけるように千本の火矢を頭上に展開させる。


 これで大体のプレイヤーはゲームオーバーを悟る


 相手を間違えたと


 対策を誤ったと


 一見して近接戦闘職なのに魔法職


 魔法対策を十分にしていても、見た目通り近接戦闘もいけちゃう


 力量を見誤った結果はキツいデスペナ


 PKを返り討ちにする至福のひととき


 卑怯者だなんだと言われたりもしたが、敵対する方が悪い


 トップクランの幹部が弱いわけあるかと……


「夢か……」

 現実に魔法が使えてはしゃいでいるが、最強チートで俺tueeeeee!するにはまだまだ遠い。


 MAPを確認して窓から外を眺める。


 MAPの最大索敵範囲は300m


 これに隠蔽や隠密等の能力やスキルを持った敵はさらに狭まる。

 勿論視界に捉えていれば300mを超えても認識できるが。


 今は夜、雲が厚く月明かりもない暗闇だ。

 おいおいスキルの察知Ⅰが上がれば索敵MAPも強化できるはず


 夜襲を掛けるならまずまずの夜だろう

 これで雨でも降っていたら完璧だが…

 今夜で間違いないだろう


 焚き火が爆ぜて見張りをしている牧場息子がビクッとなるのを見てついニヤっとしてしまった。


 一度下に降りてお茶でも飲もうかとしたところでMAPに反応があった。


 距離150m

 夜間や暗闇なんかの環境条件でも索敵範囲は狭まるのか?とボンヤリ考察する。


 視界では確認できないが数は7頭


 内、一個だけ赤点を縁取る赤丸がされているものがあった。


 これがボスの魔狼だろう


 欠伸をしている牧場息子に、事前に決めていた合図を出す。

 慌てて父親を起こすため母屋に走っていく息子を横目にMAPを確認すると、距離をゆっくり縮めてきていた。


 牧場主は狩猟用のボウガンを担いで息子は槍を構えて配置に付いた。


 牧舎と直角に隣接した納屋で出来たコーナーに事前に柵を立て簡易な防御陣を作っていたのだ。

 簡易とはいえ馬防柵付きにして突進を防ぐようにしたので、打って出るような真似をしなければやられはせんだろう。


 牧場主のボウガンの腕がどれほどかは知らないが、自分で鴨を撃ってくるくらいだ、ちょっとは期待できる。


 息子の方は……無理だろうな……

 ボウガンのリロード中に牽制ができれば御の字だ

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