第16話 暗闇にほくそ笑む者
牧場に戻ると陽が落ち始め、煮炊きの煙りと匂いが漂っていた。
見張りをしていた牧場主に手を振って敷地に入ると、牧場主の奥さんが挨拶をしてきて夕飯を食べてくれと食堂に案内してくれた。
息子と見張りを交代したのか牧場主も食堂に来て向かい合う席に着く
「どうでした?」少し疲れた顔で聞いてきた。
「5頭狩ってきた。1頭は魔獣だ」
「そうですか!そうですか!」とても嬉しそうだが
「ヤったのは群れのボスではないな。恐らく仲間を殺されて気が立ってる、今日明日には来るぞ」
狼の魔獣を倒したことで[コマンド]魔物図鑑に魔狼の詳細が更新されていた。
魔狼は仲間同士で魔力で繋がりあっているという一文があった。
顔を強張らせる主人に少し心配風の奥さんが食事を運んできて、労るように肩にそっと手を置く。
「…あなた。ごめんなさいね、お客さん。さぁ、食べて!おかわりもあるから遠慮なく」
笑顔でそう言うと炊事場に戻っていった。
良い奥さんだなぁとボンヤリ思いながら出された飯を食う。
さらに料理も上手いとか…
独身貴族最高!独身はむしろ勝ち組派だったがこういう場面を見ると、結婚というのも良いのかもなんて思った。
「なぁ、娘はいないのか?」と真顔で聞くと、訝しむ主人
「できれば奥さん似の」と笑顔で言うと、
「ワハハハ、すいません。あのバカと、町に出てる息子がもう1人いるだけです」と答えた。
「それは残念だ」と笑うと、頷く主人。
恐らく鴨かそれに似た鳥だろう肉をフォークで刺しながら「近くに水場でも?渡り鳥がくるような」となんとなく聞くと、
「ええ、ちょっと大きい池がありまして。鴨の営巣地になってます」
と、ようやく緊張がほぐれた感じで「美味いでしょ?」なんて聞いてきた。
肉を口に入れた状態なので頷いて答えた。
敵を前に恐怖しない者、緊張しない者はそういない
戦いを生業とするものであってもだ、素人なら言わずもがな。
過度の緊張は身体も思考も鈍る
恐怖に呑まれたら戦えない
これらの感情をコントロールしないと人は戦えない
正確には全力を発揮して戦えない
軍人ではないのだ逃げてもいい
だか敵を目の前に身体動かない、思考が停止するのは駄目だ
これは死を意味する
助けながら戦う?最初からいない方が良いし、そんなに俺は強くない。
牧場主だってそれは分かっているし、生き物を殺す事も初めてではない。
食事を終えると牧舎の二階、破れた囲いを正面に捉えた窓がある狙撃ポイントで横になった。
目を閉じ昼過ぎの魔狼戦を思い返す。
身体の中で一番硬い部位とはいえ攻撃を弾かれたのは少なからずショックであった。
勿論ノーダメージではなかったし、すぐにリカバリー出来たので一方的な戦いには変わりなかったが。
一撃の威力不足感は否めない。
ボス魔狼は昼間倒したものより大きい分、耐久性も上がるだろう。
魔弾の貫徹力の向上か純粋な威力・破壊力の向上が必要か…
魔力の圧縮率は今の所最大だ
一発に込められる魔力は最大のため、単純な威力は現状無理である。
ふと浮かんだのは形状である。
AP弾アーマーピアッシングは色々と理論があるのだが今手を加える事が出来そうなのは形状だ。
先を尖らす
あとついでに回転を加える
何だよ魔力の塊りを尖らすってと思わなくはないが、魔法はイメージが大事ってラノベでは常識だ。
火の鳥の形の炎魔法や龍の形の氷魔法を思えばかわいい方だろう。
元の魔弾に手を加え、すでに魔改造の領域に足を踏み入れているだろう。
そう思うとほくそ笑み眠りについた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます