第5話 逃避
目覚めは最高だった。
朝は
しかし
昨日の夜に、今日の朝飯の準備も済ませてある。
もうしばらく
しかし、
昨日洗ったので、
洗って
早く治療してあげたいけれど、
早い所、神様と
けれど、その前に今日はやることがある。
昨日、村の作りはある
今日やることは、笛作りと、武器集め、あとは
キナが
この島にたまに流れ着くらしい。
見つけたら、大人に知らせて役人に
ってか『
役人について聞いてみたが、ずいぶん前から見たことがないそうだ。
つまりは自衛するしかない。
と言うわけで、
指笛が使えるのはモエだけで、他の子達も使えない。
キナの件でわかった事だが、悲鳴を上げても村の
モエの指笛で
笛は、竹で俺が作る。
小学校の夏休み工作で、作って以来だが・・・。
あとは村の出入り口に門が
しかし、俺の工作スキルが残っているか先に確認したほうがいい。
小学生の夏休み工作以来、初めて作ったのが先日のお
アレははっきり言って、竹を切って穴を空けただけの
竹を曲げたり、
その他に、自分に
単純な竹弓を作ったところで、
今の俺が、村にある簡単な道具で作れる、簡単に使える遠距離武器・・・
「おはよう、よく
「おはようございます、
「気持ちよすぎて布団から出たくない」
「キナはそのまま寝てろ、つかしばらく動くの禁止」
「ええっ」
「ええっじゃない、痛みがないからわからないかもだが、お前、
「わかった、寝てる」
「なんか、キナ
布団から顔だけ出しているキナを、モエが優しげに見ていた。
キナの顔は、まだ
「うん、布団気持ちいいし」
そう言ってもらうと、
昨夜、作っていた朝ご飯を手早く
みんな、よく眠れたようだ。
朝のうちに畑仕事を早々に片付け、倉庫をあさり、武器になりそうな物を探す。
簡単に使えそうなのは、
鉈に
村の森に少し入ると竹がある。
まあ俺の知っている竹とは少し
人の手でちゃんと管理されてきたようで、種類の違う竹が、区画整理された上で生えている。
まあここ数年、管理する者がいなくなったせいで、色々な物が
でも欲しい竹はここで全部手に入る。
まずは笛からだ。
枝部分の細い竹で作ってみるが音が出ない。
全員分の笛を作って、
次に、作り方を覚えている、竹馬を作る。
竹馬には、竹を加工する基本が
これが作れれば、簡易的な門を作る事も可能だ。
何度か失敗したが、まともな竹馬がちゃんと作れた。
とりあえず、強度を確認するために乗ってみる。
視界が高くなり、雑草の向こうを
これはこれで使い道があるかも知れない。
草に
それに、草で視界が
竹馬の強度的にも問題ない。
次は
竹のパーツ4つを作り
こちらは、ガキの
竹で、鉈用の鞘を作っているときに武器を思いついた。
ガキの頃、
水道用の塩ビパイプに、
子供心に、『人に向けたら死ぬな』と思ったものである。
鞘ができたので、
思ったより
吹き筒は、竹の節間を切って、面取りしただけの簡素な物だ。
吹き筒ができたので、矢の針、
釘を見つけるが、五寸釘より大きな四角の釘だった。
矢の針には、デカすぎるし重すぎる。
色々探してみたが、一番使えそうなのは、
数本拝借して、丁度良い長さに
矢の針部分は出来た。
次は風受け、矢を飛ばすため、空気を受ける
各家を回って、紙を探すと見つかった。
障子用は
筒のサイズに紙を切り、米で作った
そのまま放置すると糊が
見事に
ふむ、威力的には問題ないようだ。
まあ、
下手に手加減してモエ達が死ぬことがある位なら、手加減はしない。
キナは足首と手首の筋を切られていた。
その後の事なんて、想像もしたくない。
とにかく、この吹き矢を使えるようになる。
まずは、どれくらいの
練習するのみだ。
矢の再利用も全然できる。
子供の頃作った、吹き矢の矢は、新聞紙やチラシを使ったため、ペラペラで強度は無く、3回も使うとボロボロだった。
今回作った紙は少し厚いけれど、丈夫で、何度も使える。
糊が
手持ち3本の矢を持って練習を続ける。
しかし、飛距離がもう少し欲しいな。
筒の長さを長くできれば、飛距離も
竹の節が長いものを見つけて作ったところで、数センチ長くなれば良い方だ。
とりあえず石を投げてみる。
もの
多分50mは飛んだが、威力と正確性が問題だ。
威力をどうやって上げるか、スリングだっけっか? 紐とか利用して石を投げるやつ。
たしか手ぬぐいなんかでもできるんだったかな?
正確性はともかく遠距離はいけそうだ。
投げた石は明後日の方向へ飛んで行くが、何度も投げるうちに大体の場所には集まるようになってきた。
ただ、これは石の形状が関係しているのか?
投げた石の
右に曲がったり、左に曲がったり、投げる度に軌道が変わる。
真っ直ぐ飛ばすためには真円の玉が必要なのだろうか?
いや、回転するなら同じか?
それに手ぬぐいではなくて、やっぱ紐タイプの
「何やってるんですか?」
「ああ、自衛用の武器をどうするか悩んでたんだが、良いところに来た、紐を編んでこんなの作れるか」
地面に絵を
「なにに使う物でしょうか?」
「ああ、石を投げる。まあ見た方が早いか。俺から少し
「はい」
とりあえず10回ほど投げて見せた。
「すごいですね」
地面に絵を
「もう少し長い紐で、石を置く場所というか包む場所を太い紐で編めば帯状にできるだろ。この部分は紐でこっちに輪っかを作る、この輪っかに指や手首を通しておけば、もう片方を手放すだけで投げられるし、紐が
「なるほど、紐の長さはどれくらいが良いです?」
「あんまり長いと難しそうだし、短すぎると威力がな。とりあえずこの手ぬぐい二つ分位かな?」
「試してるのでしたら、長いの、短いのいくつか作ってみましょうか」
「そうしてくれると助かる」
「さっそく作ってみますね」
「いや、それは急がない、つうか急ぐけど今すぐじゃ無くていい。それよりこっちの笛と吹き矢が使えるか試してくれ」
モエに笛を
「これは何ですか」
「笛だ笛」
「?」
「まあ、見てろ」
笛を
ふむ、良い感じだ。
「これを作ったのですか?」
「うん、大声で
モエの目が
笛の重要性を知りたいからなのか、知らない物を試したいだけなのかはわからない。
「試してみて良いですか?」
「ならモエは砂浜で、俺は反対の村の入り口まで行く。お
「分かりました」
村の入り口についた、一度笛を鳴らす。
しばらく待っていると笛の音がギリギリ聞こえてくる。
二度鳴らし、お返しの笛の音を聞く。
なんとか聞こえている。
風なんかが強いと少し
その時、俺の笛の音とは明らかに違う指笛の音が聞こえた。
こちらの方が俺の作った笛より良く聞こえる。
しかし現在、指笛はモエしか使えないのだ。
三回鳴らして先ほどの場所まで
「
「モエのも作ったけど、モエの指笛の方が良く聞こえたし、モエには必要ないか?」
「いえ、頂けるのであらば欲しいです!」
モエが前にズイッと踏み出して、少し大きな声で主張した。
「こ、こんな笛でいいのなら。ヒモを付けておいたから首から
もの凄く嬉しそうに首から提げると、笛を手に取り嬉しそうに眺めている。
「ユウジさんの笛と私の笛、音が
「分かるのか?」
手作りなので、俺の作った笛は同じ音が出ていない。
音感が良ければ、ドレミファと音階がわかるのかもしれないけれど、俺に音感は無い。
「手作りだからな、全部音が違うぞ、吹いてみるか?」
モエは、目をきらめかせながら、出来たばかりの6個の笛を吹いて音を聞き比べてはじめた。
あれ? モエの
まだ、
モエが
モエの目がキラキラしている。
「乗ってみるか」
「はい、ぜひ」
とりあえず、モエの前で何度か乗って見せて、竹馬を
3度ほど失敗したけれど、そのあとは何事もなかったように乗りこなすようになった。
筋が良い。
俺サイズで作っているので、モエにとってはかなり高い竹馬となっているけれど、
「凄いです、高いです」
「
「はい、遠くまで見えます」
ひとしきり遊ばせたあとに、吹き矢を教えることにする。
吹き筒を渡すと、また目をキラキラさせる。
「これは?」
「吹き矢って言う武器だ。少し離れた場所にいる敵に、この弾を当てて
とりあえず、モエの前で
モエの瞳が
今までの表情では、考えられないくらいの変化を見せている。
モエにやってみろと、矢を渡すと
ってか俺より筋良くない?
もしかして、モエって遊んだことがないのか?
「モエ、この島の遊びってどんなだ?」
モエの顔が暗くなった。
「その、色々ありましたから、遊んだことがないんです」
「なに? もしかしてキナ達もか?」
「はい、遊び相手もいませんし」
「そうか、笛とか、竹馬とか、吹き矢は面白いか?」
「はい、凄く面白いです」
いかん、少し泣けてきた。
こんなことで、目をきらめかせているモエが
「全部モエの物だから、好きに使って良いぞ」
「本当ですか、私だけこんなにもらって良いんでしょうか?」
うっ、モエが後ろめたそうにしている。
「
「本当ですか、ありがとうございます」
遊びのために作ったわけではないけれど、こんなキラキラした目で見られると、他にも作ってしまいたくなる。
モエが吹き矢に夢中になっている間に、竹とんぼを製作してみる。
気がついたら、モエが竹とんぼ製作をもの
表情が豊かになっている。
普通に笑っている顔だ。
瞳に光が
小学生の頃は、羽に角度を付けると飛ぶと思っていたけれど、今は
必要なのは、羽の丸み、上が丸く、下は平ら。
火で竹とんぼの中心を、火であぶっり、ねじって角度を付ける。
あとは左右のバランスがとれれば、大体飛ぶ。
気合い入れて作ったおかげで、空高く
「凄い、飛びましたよ、本当にすごいです」
あまりの喜びように居たたまれなくなってきた。
「ほら、コレもモエのだから、好きに遊べ」
竹とんぼを、それはそれは嬉しそうに飛ばして遊ぶ14の娘がいる。
どうも俺は
モエには遊んでおくように言いつけて、他の子達の吹き筒や、竹とんぼを作る。
竹細工をしているときに、
試しに倉庫に転がっていた木材で作ってみる。
試してみると、想像以上に飛んだ。
投槍の大きさをいくつか作ってみて、羽あり、羽無し、太さ、長さを変えながら、一番飛距離が出るものを検証していると、いい
そういえば、モエの姿が見えない。
もうすぐ日が落ちる。
もうそんなに、時間が経過していたのか。
「ゴメン
「何を作ってらしたのですか?」
目をきらめかせて、モエが
「まあ飯食いながら話すよ」
俺のせいで遅くなってしまった。
俺は、アユに食事を
しかし、アユの食事があまり進まない。
アユの顔が
「アユどこか痛いのか?」
「うん、お
「なに? とりあえずお腹に手を置こうな、
「うん、ユウジが
モエがハツにご飯を
「アユごめん、あとでまたお
ハツの顔を
「ハツ? 聞こえてるかハツ?」
いつもなら俺の場所を顔が追ってくるし、「あー」とか「うー」とか声を出す。
しかし呼びかけても、顔は動かないし「あー」とも「うー」とも返事が返ってこない。
ってか、左右の目が昨日より変な方向を向いていないか?
「アユ、ハツに今日変なことなかったか?」
「ご飯前に苦しがってたけど、ユウジ来る前に大人しくなった」
えっとこれってヤバい状態じゃね?
なんか寄生虫が脳みそに寄生する事もあるとか何とか?
ってかホントにどうする。
俺にはどうにもできない、神様の
治療しかないけれど、あまりにも成果が出ないので
今日の武器作りは必要だったのも本当だけれど、それを言い訳に逃げたのだ。
どうやって治療する?
明日とか言っていられない気がする。
ハツの顔はハッキリ言ってヤバい。
なんか
お
風呂が
ってか病人を入れるのが
「ミコ、神様に聞いてくれ、ハツは治療すれば治るのか?」
「治るって」
「
やることは決まった。
今は原因が何かより、ハツを治療することだ。
原因が分かったところで俺にはどうにもできない。
神様任せで治療するだけだ。
しかし、どうやって治療する?
それだけが問題だ。
考えろ。
キナの時は何とかなった。
しかしあれは
なんで治療できたのか自分で理解していない。
「ハツの治療、手伝う」
ミコが決意のこもった顔でこちらを見ていた。
「え? ってか神様?」
「うん、手伝いたい」
「わかった。モエ、ミコをお前の家まで運んでくれ」
「はい」
俺はハツを
「暗いです」
「ごめんな、こっちの方が集中できるから」
「そうなのですね、わかりました」
目から入る情報は
なるべく雑念はない方が良い。
治療をするのにモエの家を選んだのも、匂いや、小虫などが気にならないためだ。
「神様は、治療の準備できてるって」
「そうか、やり方とか分かるか?」
「キナの時と同じでいいって」
「それが難しいんだがな。わかった、集中するから俺が話しかけるまで
「うん」
さて、やり方はわからない治療方法。
とにかく集中だ。
キナの時は頭の中がキナで
参考になるのはあの時だけだ。
それほど多くないハツとのふれあいを思い出す。
初めてハツのお腹を触ったとき、とてもいい顔をした。
強張った顔が
ハツを
あの顔がもう一度見たい。
痛みのない世界に連れて行ってあげたい。
ハツのふっくらした顔を見てみたい。
ハツとおしゃべりしてみたい。
ハツ、ハツ、ハツ、ハツ・・・・
しかし、
時間だけが過ぎていく。
ダメだ、何が違う。
必死さか?
あの時と何が違う。
キナは死んでいた。
俺が手を止めた時点で本当に死ぬ。
ただ、
俺の
その先を考えたくなかった。
ハツが死ぬ。
同じだ。
このまま時間が過ぎればハツは死ぬ。
死んだハツを目にして俺は正常でいられるのか?
来る。
あの黒いのが来る。
あの絶望がまた来るのだ。
今すぐこの場から
だが、逃げたところで何も変わらない。
逃げた先で、ハツのことを思い出せばそれまでだ。
おれは飲まれる。
あのドス黒いモノに飲まれる。
飲まれたくない。
体の感覚が
思考だけははっきりしている。
「繋がったよ、そのまま」
ミコの落ち着いた声が聞こえる。
体の感覚も、視界も、音も
神様と繋がるのに必要なこと。
ミコの時は神様がやったと聞いたが、あの時も
キナの時も逃げ出したかった。
そして今も。
「そのまま、今度はモエのことを
考え事をしているとミコの言葉だけが聞こえる。
感覚は
なのにミコの声だけは
なんでモエ? とも思ったが、言われたとおりモエのことを考える。
海岸に打ち上げられた俺を助けてくれた。
ご飯も毎日作ってくれる。
それに、今日の嬉しそうなモエ。
どうかモエが良くなりますように。
「もう少し頑張って、次はアユのお薬」
アユの事を考える。
アユは、キナの事件の時に、自分の名前も呼んで欲しいと言った。
あの時の顔が忘れられない。
必要とされたいと思っている。
俺が必要としている。
だから、アユも元気になって欲しい。
「終わったよ」
体の自由が戻ってきた。
「神様がね、モエも一緒にって言ったの、モエも治療できたよ」
「そうか、良かった。ハツは大丈夫なのか?」
「大丈夫、治るよ」
「そうか、本当によかった」
集中したせいで、少し
「ところで、薬ってなんだ?」
「わかんない、でもコレを飲めば痛いのなくなるって言ってるよ」
「そんな物も作れるのか・・・、ってかモエは大丈夫か?」
「・・・大丈夫ですよ・・・」
なんか、声の調子がいつもと違う。
こう、
「痛みはないか?」
「痛くないですよ」
声の調子が
「体に変なところは」
「お腹が幸せで一杯です」
幸せで一杯・・・
神様、なんか変な薬出していないよな・・・
「えと、痛くなかったか?」
俺には神様が何をやっているのか知る術は無い。
ただ、治療には痛いイメージしかないのだ。
「いえ、全然痛くないです」
「動けるか、少し休むか?」
「動けますよ。もう少し幸せな気分を味わっていたいですけれど」
「なら少し休もう」
モエの
隔離所に戻り、
もうしばらくは大丈夫だとは思うけれど、用意しておかないと
モエの家に戻ると、三人とも眠っていた。
俺はハツの横に
ちゃんと暖かいし、呼吸は安定しているし、心音も少し早い気がするが、動いている。
顔は暗闇で良くは見えないが、苦しみに
俺にはこれくらいしか
ミコの言う、神様の言葉を信じることしかできない。
桶を用意していたおかげで、大惨事は
モエは何が起こるかわかっていたのに、悲鳴を上げた。
端から見るのと、自分の中から出てくるのでは気持ち悪さが違うのだろう。
ハツはお腹の様子を見ながらタイミングを計り、寄生虫の
気を失っている間に排泄するのが幸せのようだ。
いつもの場所で、俺一人で寄生虫の処理をやる。
今回は、出てきた寄生虫の形をちゃんと観察した。
できれば見たくは無いけれど、今後の事もある。
俺は
なら、得られる情報を捨てる事はしたくない。
観察すると、モエの桶から6種類の形が違う寄生虫が確認できた。
ハツの桶からは8種類の寄生虫。
観察を終えて、
眠っていたモエを起こし、全員で隔離所に戻る。
ハツを、布団に
顔が少し赤いのか?
ほろ
それに、瞳に光が戻っている。
遊んでいたとき、普通に戻ったのかと思っていたが、こちらが普通だ。
「モエ大丈夫か、気持ち悪くないか?」
「大丈夫ですよ、なんかフワフワして、雲の上を歩いてるような気はしますけど、気持ちいいですよ」
「治療気持ちいいよね」
いい笑顔でミコが言う。
「はい、こんな幸せな気持ちになったのは初めてです」
「お腹ポカポカで気持ちいいよね」
「はい、今もポカポカしてます」
「いいな、ミコも、もう一度治療して欲しい」
「ですね、治療だから痛いと思って覚悟していましたけれど、ちっとも痛くなくて、治療がこんなに幸せでいいのか不安になります」
「そんなに気持ちいいの」
「気持ちいいですよ。キナは・・・そうか、キナを治療したときは死んでたんですよね。なんかもったいないですね」
「お腹がポカポカしてたのは、目が覚めたときに思ったけど、そんな気持ちがいいなら、キナも、もう一度治療して欲しいかも」
「ずるい、アユだけまだだ」
「いいじゃないですか、ハツもキナも意識がないときに治療受けてますから、アユはこの気持ちよさを味わえるんですよ」
「アユの治療はいつですか」
「少し待て、今日は無理だ。近日中に必ずやる」
「やた、楽しみ」
「アユ薬だ、飲んでおけ」
「わあ、ありがとう」
薬を飲むアユを見守る。
薬の効果を知っておきたい。
「どうだ? なんか体に変化があるか?」
「凄い、痛いのが遠くに行った」
「ん? 遠くに行ったのか? 痛いのは消えてないんだな?」
「そう、でもすっごく遠くで痛がってる感じ。こんな痛くないの初めて」
「俺が手を置くより痛くないんだな?」
「うん、痛くない」
「そうか、ご飯食べれそうか?」
「うん、食べれる」
一応保険として、アユのベッドの下に桶をセットしておく。
先ほど飲んだ薬にどんな効果があるのか、わかっていない。
もしも虫下し効果もあった場合、大惨事になりかねない。
「ユウジも、ご飯食べないと」
「ミコありがとう、じゃあご飯を食べながら聞いてくれ」
まずは治療について。
今日のことで覚悟が決まった。
俺は、いつやる! と決めておかないといつまでも先送りしてしまう。
それにミコが手伝ってくれたおかげで、二人も治療できたうえに、痛み止めの薬まで用意してくれた。
神様と繋がる方法も、おぼろげながら見えてきた気がする。
とにかく感覚を忘れないうちに治療しよう。
明日、アユの治療を行う事を告げる。
後は、知らない
全員に笛を配り、吹いてもらう。
笛が
あとは、今日みたいに、
最後に全員に竹とんぼを渡す。
まあ、この子達は手を自由に動かせないので、まだ遊べない。
キナも手の筋を切られているし、治具で固定しているので遊べない。
モエが貴重な油の灯りを付けて、皆の前で飛ばしてみせる。
皆瞳をキラキラさせて舞い上がる竹とんぼを見ていた。
「お腹痛い、でる」
アユの声が
準備していたおかげで、スムーズに対処できた。
自分から見えない状態にもかかわらず、アユも悲鳴を上げた。
出てくる感覚が、相当気持ち悪いらしい。
いつもの場所で地面に棒でスケッチして、焼却処分を終わらせる。
スケッチするのは、あとで筆記用具を見つけた時に記録に残す
一度描いておけば、
アユの中から出てきたのは七種。
全部、ハツやモエで確認されているのと同じ種類。
これで全員の虫下しが終わった。
現時点で一番種類が多かったのがハツ。
少なかったのはモエ。
なぜ種類の違いがあるのかも調べないとな。
重量は俺の感覚ではあるけれど、全員あまり差はないように感じている。
ただ、あれだけ重い物が腹から出たというのに、体が軽くなった感覚はないらしい。
皆で、3組の布団を並べて
俺の
まだ目を覚まさないけれど、
もう少し
アユとミコは、全員で寝るのが
ただ、顔が
直るって言っているけれど、どの程度直るものなのか。
キナの顔は、かなり良くなっている。
内出血でかなり
神様のお薬のおかげなのだろう。
モエが明かりを消して、布団に入ってくる。
すぐに
早いな。
俺もハツの
早く良くなれと願いながら。
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