変わり者たちの出会い方(11)

「……っ! こ、ここは?」


 意識の最奥から目覚めた俺は何故か外にいた。

 明らかに校内ではない。どこかのアパートの一室の前で俺は倒れていた。


 面している道にあまり人通りは無いらしく、俺の視界に人が現れることはないし、それはつまりすぐに助けは来ないということだ。

 

 どうやら俺は、この場所まで運ばれてきたらしい。


「……女子一人で、よくもまあ男一人をここまで運んできたもんだ」


 俺の居る場所は二階。学校からここまでどれほどの距離があるのかは分からないが、それでも女子一人でここまで運び、更に階段を上がるというのはかなりの重労働だろう。

 俺はそこまで重い方ではないが、それでも60キロ弱はある。一体どうやってここまで運んできたのだろうか。いささか疑問だ。


「……アホらし。さっさと帰ろ……」


 辺りにはあの女の姿も見えない。きっと意趣返し八つ当たりに人通りの少ない所に俺を放置し、そのまま帰ってしまったんだろう。なんとも面倒くさいやつだ。


「よっこいせっ…………あれ?」


 年寄のような掛け声と共に立ち上がると、今度は首に何か違和感があった。そして歩き出そうとすると、やはり首を何かに引っ張られているのだ。


 もしかしてすぐ傍で女はまだ俺のネクタイを引っ張っているのか、と思い、ばっと勢いよく後ろを振り向く。しかし、そこには誰も居ない。


 その代わりに、俺は今、多分それ以上にヤバい展開に直面していることに気付き、額から今までにない程の冷や汗が流れるのを感じた。


「……おい、マジか」


 後ろにあるのは錆びてボロボロになった鉄柵。用途は勿論、人がアパートの二階から転落するのを防ぐためのもの。それが決して人を縛るための物でないことは最早言うまでもないだろう。


「そう、言うまでも無いん…………じゃゴラぁ゛あァァァァァァァ‼」


 俺は力の限り叫んだ。こんなに一日の内に何回も絶叫することがあるだろうか。少なくとも俺は今までの人生で今日以外に一度も経験したことはない。


 しかし、今はそんなこと……さらには世間体も何もかも全てひっくるめてどうでもいい。問題は、何故俺が叫んだかである。

 なんと俺のネクタイは、その鉄柵に結び付けられているのである。しかも、そのネクタイを解くことが出来れば、まだタチの悪い悪戯で済んだのだ。


「んぎぎ……! なんだよこれ! 全くほどけねぇ‼」


 あろうことかネクタイは俺の知らない……いや、恐らくは世間一般的に使われないであろう未知の結び方で鉄柵に括り付けられており、どうやって解けばいいのかの検討すらつかない。


「マジかよ……どうすんだこれ」

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