変わり者たちの出会い方(7)
「ヤバいわね、ここ人の気配があるわ」
そして目の前には悪魔が居る。八方塞がりなうえに前門に死神、後門に悪魔というまさに踏んだり蹴ったり潰したりのオンパレード。
俺が頭の中で連想した来迎図が次第に地獄絵図へと切り替わる。
しかも、目の前の惨事は一向に終わる気配の無い模様。JKは短く舌打ちして俺の
ネクタイを力任せに引っ張った。
「んぐうぇっ‼」
「こっち来なさい!」
そのまま俺はされるがままにすぐ近くの一室に引き込まれていった。
ちなみに、制服のネクタイによって俺の首は絞められ、声を上げることは全く敵わなかった。
嗚呼、部長。貴方は結局、俺を助けてはくださらないんですね。恨みます。
◆◇◆
部屋に入ると、すぐさま後ろで乱暴にドアが閉められる。
どうかその音で部長たちが気付いてくれないだろうかと、悪あがきにも似た期待をするが、外で人が動く気配はない。だーめだこりゃ。
「本当はこんな薄汚い所に入りたくないんだけど……」
今一番有難いのは、さっきよりもこの女の拘束が緩く、目も見え息もできるということだ。
依然ネクタイは引っ張られ身体も押さえつけられている所為で身動きはとれないが、それでも感覚が生きているという安心感はさっきの比じゃない。
そしてこの部屋に入って最初に感じたことは、春とは思えないほどの寒さと薄暗さ。
今日の天気は快晴で、気温も25℃を上回っている。だというのにこの部屋は余りにも肌寒い。
さらには強い芳香剤の匂いが充満していて、その中に微かなアンモニア臭も混じっている。しかし、不快なようでそこまで実際はそこまで不快ではない。むしろどこか落ち着くような気もする。
目の前に広がる青い壁タイル、そして鏡。それを見て俺は確信した。
ここは女人禁制の地、南校舎4階の男子トイレであると。
「バッカお前なんてところに入ってん……」
「ここで叫ばれたくなかったら!」
激しく抗議する俺に、女は語気を強めて俺の言葉を制す。
「無駄口を叩かないこと。じゃないと大声出すわよ」
その言葉の真意を悟った俺は、冷や汗の様な物を感じてそのまま押し黙る。
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