変わり者たちの出会い方(5)

「……何、なんかめっちゃ睨まれてるんですけど」

 平日の高校に女子高生がいることは何の問題もない筈だ、という至極もっともな意見が脳裏をよぎるが、問題はそこではない。


 何故部員以外の人間がここに居て、何故仁王立ちをして、何故こちらにガンを飛ばしているのか、という点に疑問が寄る。


 それに、と言っても女子に仁王立ちして真正面から睨みつけられること自体が俺にとっては前代未聞の経験だ。


 試しに身体を左右にずらしたりしてみるが、その女子の目線はしっかりと俺を捕らえている。……とても、愛の告白、というような状況でもない。

 数秒の間、無言の応酬が続いた末、埒が明かないと判断した俺は、女子の視線から目を逸らして何事も無かったかのようにその場を通り過ぎようとする。


(……きっと部長がまた何かトラブル起こしたんだろう。そうだ、きっとそうに違いない)


 多少無理やりな気もするが、正直あり得ない話ではないので、そのように都合よく自分の中で折り合いをつける。


 我が部の部長は、表向きは全生徒の羨望を集める生徒会長であるが、その実は割とトラブルメーカーでもあったりする。

 部の仕事柄、いろんな人間を相手にしているのだが、その中の数人からは過去に反感を買って面倒事が起きたこともしばしば。

 一番不思議なのはそんなポンコツ具合がいまだ関係者以外に気付かれていないということ。マジで意味が分からない。


 さてさて、何事も起こらずに通過させてくれよ、と心の中で神頼みをしながら仁王立ちJKの横を通る。ある時点から女子の目線は横を通過する俺に向くことは無く、そのまま真正面を鋭い眼光で睨みつけている。俺の後ろには誰もいない筈だけど……。


兎にも角にも、女子の目的はどうやら俺ではないようだ。あー良かったー……


「ねぇアンタ、ちょっと止まりなさい!」

「ギョエェェェェェェェ‼」


 ほっと一息、安心できたのも束の間。完全に脱力していた俺にドスの効いた低い声で脅しをかけてきたのは、勿論そのJKである。安心しきっていただけに、流石に衝撃もでかい。


 俺はまるでギャグマンガの登場人物のような声を上げて絶叫し、その俺の口元も女子の平手によって封じられてしまった。状況が状況ならば完全にホラーである。

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