変わり者たちの出会い方(4)

 学力やルックスに関しては凡の字が付いて離れない俺にも、一つだけ自信を持てるものがある。


 それは、俺が面白そうだと思ったことに関しては時間と経験を惜しまないということ。


 俺は、高校生活は楽しくあるべきだと考えている。多分これは、多くの高校生たちが一様に考えていることだろう。


 しかし残念ながら、楽しさというものは、能動的に行動しなければ入手することはできないものなのである。

 しかも新しいことを始めるという行為は、それ自体にかなりの労力を伴う。いざ新しいことを始めようと思ってもなかなか最初の一手がつけられないのが、その最たる例だ。

 だから多くの生徒は、部活に所属したり、外部でアルバイトをしたりするのではないだろうか。色事だって例外ではない。


 だが、俺はその「最初の一手」に掛かる労力を微塵も惜しむことは無い。

 部活やアルバイトだって、本来高校生の手の届かないところにある「楽しさ」を手に入れるための踏み台に過ぎないのだ。


 手間をかけて覗いた玄関が、想像以上にあっけないものだったときは、そりゃ落ち込みもする。軽く自己嫌悪に陥る可能性もある。


 だけど結果は裏切っても、経験が裏切ることは無い。その経験がいつか役に立つものだと思って割り切れば、無駄なことなんて何一つ無いのだと俺は思う。


 そもそも高校受験を頑張って、ほんの少しレベルの高いこの高校に入ったのだって、家から近いという理由よりも、が高い、という点を魅力に感じたからだ。

 「変わり者」は、世間からズレた人がそう呼ばれるわけだが、高校入学試験より前の当時の俺は、そのレッテルがとても輝いて見えた。

 個性の塊であるその「変わり者」に俺もなりたかったんだ。俺の受験のモチベーションはこの程度の物だった。


 俺は他の何よりも、好奇心に忠実に従う。その性格は時に、周りから迷惑がられることがある(というかそれがほとんどだ)けど、『あらゆることを経験するために生きる」という信条を掲げる俺にとっては、この性格は宝のようにすら思えるのだ。


「……ちょっと自画自賛が過ぎたな」


 歩きながらで退屈だったとは言え、少し自分の性格を過大評価しすぎてしまった。  

 本当は本当はこんなに褒められた性格はしていないことに気付いて、俺は一人忸怩する。

 反省反省……と、つぶやきながら歩いているうちに、いつの間にか部室前の通路に差し掛かっていた。


 何もせずに歩く五分は長いが、考えながらの五分間は大層短く感じる。そして流石に、ここまで校舎の辺境まで来ると部員以外の見知らぬ人間は一人もいない。いつもならば。


 ……いつもならば、とわざわざ言うからには、それはまたを返すとということになる。

 なんと今日は、そのいつもと違って廊下の数メートル先で、黒髪ロングの女子高生が現在進行形で仁王立ちしているではないか。

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