変わり者たちの出会い方(3)

 廊下は教室よりは人が多く、それなりに賑やかだった。


 一年の頃に同じクラスだった奴に途中で捕まったり、他愛のない挨拶を交わしたりしながら俺は校舎の辺境を目指す。


 俺は割と誰でも上手くやっていける自信があるけれども、わざわざ自分から積極的に友達を作ろうとはしない。理由は単純。人付き合いの立ち回りがヘタクソだから。


 俺は、日々の生活で一緒にいて楽しいと思える数人がいれば良いと思っているのだ。ここで言う親しい人間と言うのは、悠生レベルで中の良い人間のことをさす。


 もう少し時間が経てば自然と他のクラスメイトとも話すようになるだろうし、一年の頃も他の人との交流を完全に拒絶してクラスで孤立していたわけでは勿論無い。


 ただ、親しい人間とそれ以外との線引きが明確にある。それだけのことだ。


 廊下の人間も、校舎の辺境に向かうにつれてだんだん少なくなっていく。

 俺が今向かっているのは、南校舎の最上階である四階。更にその一番右の端の教室である。


 そこはかつて図書準備室で使われていた部屋なのだが、数年前の校舎増築に際して、図書室関係の設備達は丸ごと北校舎へと移転になり、空き部屋となった。

 何か悪いことをするにはなんともお誂え向きな場所ではあるが、生憎その場所に巣食ったのは我らが文学部であった。


 文芸部では無く、文学部。


 その二つの間にどんな差があるのか、実は二年生の俺にも分からない。そしておそらく、部長も知らないと思う。

 しかし、俺がこの部活の門を叩いた理由はごく簡単なものであった。


「面白そうだったから」


 この一言に尽きるだろう。

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