変わり者たちの出会い方
終業の鐘が校舎中に鳴り響く。同時にそれは、生徒たちの放課への開放を意味し、俺達は晴れて自由を手に入れる。これから後の予定はそれぞれが異なり、部活のある者、塾へ通う者、特に予定の無い者等様々だ。
全生徒が一斉に動き出し、やがて学校全体が喧騒に包まれる。
俺こと
学業の成績は褒められるほど上澄みでもなく、かといって澱という訳でもない、中途半端なところを反復横跳び、常に漂っている。しかし、最下層に居た入学時と比べれば、ここまで登ってきたのは自分なりに大きな進歩だと思っている。
……まあ、総括すると、ごく一般的な平凡に近しい人間というわけだ。
「あー疲れた。今日―も一日平和だったなぁー」
一人の男子生徒が背伸びをしながらこっちへやってくる。
背は俺よりも数cm高く、長身で、顔は贔屓目に見ずともきっとイケメンに分類されるのだろう。野郎はともかくとして、女子なら道ですれ違えば、十人中五、六人は振り返るのではないだろうか。
男の俺から見ても明らかに恵まれた容貌を持つその男は、名を
「ご苦労さん。昼に弁当ひっくり返しても、それもお前の中じゃ平和の一部なんだな」
リラックス中の友人に対し、俺は冗談めかして言う。昼のトラブルも彼にとっては平和な日常の一部に過ぎないらしい。
「ああ、何もトラブルは無し。忘れ物はせず、授業中に寝て怒られることもない。マンホールの蓋は飛んでこないし、校舎が爆発することも無かった。今日も世界は平和だ」
「学校が爆発? 最高に面白そうじゃん」
俺は帰り支度を進めながら、適当に言葉を返す。
「平和を願っていれば、おのずとその通りになるんだよ」
一人の人間が平和を願っているだけで校舎の爆発を食い止められたら世界中の戦争や紛争は綺麗さっぱり無くなるだろうさ。……そもそも学校が爆発すること自体現代ではレアケースだ。俺としては一度学校が爆発するところを見たくはある。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます