僕の家へ
ここ最近、星川の家に泊まる事が多くなった。
勝の件があってから家に誘われる頻度が増えたのだ。
それはほぼ毎日と言ってもいい。
そして、星川の家に泊まった次の日の朝は決まって腰が痛かったり、体が熱かったりする。寝床が合わないのだろうか。
その痛さの具合は日によって異なり、
「月くん、今日は8回目だよ」
最近気付いたが、こういう風に星川を苗字で呼んでしまった回数が多い日に腰が痛くなる気がする。
何故か嬉しそうに僕が間違えた回数を報告してくる星川はやっぱり変わっているのかもしれない。
そういう日に限って当然知っているかのように労ってくれるので気にしないようにしている。
まあそのおかげで家に父の恋人に会わなくて済むし、気が楽だったのだ。
しかし、家の事を最近やってなかったのでその腹いせだろう。
最近僕が夜遊びをしてろくに家に帰らないと父に伝わり、昨日の夜電話がかかって来たのだ。
「月くん、今日は僕ん家来れないの?」
「うん、ずっと星川の家にお邪魔してたから今日は流石に帰らないと」
星川は少し考える仕草を見せた後
「じゃあ…僕、月くん家行ってみたいな」
そう言ったのだ。
今まではっきりそう言わなかったのは僕の事情を何となく察してくれていたからであろう。
でも…どうして今になって?
「えっと…それは」
「月くん、僕たち…ともだちだよね?」
「え…」
「だから大丈夫だよ。僕、月くんのお家がゴミ屋敷でもお化け屋敷でもまったく気にしないから!」
星川は無垢な笑顔で続ける。
一瞬何かモヤっとしたものを心の底に感じた気がしたが僕は気付かないフリをした。
たしかに…父の恋人は外面がいい人だ。初対面の人を不快にさせるような事は言わないだろう。
だから来てもらう事は何も問題ない。
たぶん星川が帰った後で文句は言われるだろうけど。
星川は勘が良いのでおそらく気付いてしまうだろう。
ただ、友達から可哀想やつだと思われるのが嫌なのだ。
そんなやつじゃないって分かっているが。
「ねぇ、お願い。月くんの部屋を見れたらすぐに帰るから!」
そんな自分の外見を最大限に活かしながら上目遣いで縋って来られても僕には通用しないぞ。
周りの奴らならイチコロなんだろうけど。
んー、でもすぐに帰るって言っているし少しなら大丈夫か?
それにいつもお邪魔させて貰っているのに自分の家はダメだなんて確かに失礼…だよな。
しばらく考え込むのをじっと見つめてくる星川のプレッシャーに僕は負けてしまった。
「…長居出来ないだろうけどそれでもいいなら」
そう告げると
「ほんと?!やった!!」
目をキラキラさせている星川にやっぱりちょっとかわいいなと密かに思いながら僕たちは学校が終わった後帰路を進んだ。
「星川、なんで今日そんなに荷物多いの?」
「…さぁね?ふふっ。9回目、新記録だね。」
「…。めんどくさくないの?その数えるやつ」
「ぜーんぜん?数が増えていくほど僕は楽しいよ。どっちかっていうと月くんのが大変だと思うけどな。」
「…?」
また訳の分からないことを言う。
しばらくそんな話をしながら歩いているとようやく僕の家に着いた。
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