第44話 呼

 一人の時間も大事にしたいと思う。もっと言うならば、やはり私は一人で生きていく練習をしなければならないのだと思う。


 四月だった。どこを歩いても桜が満開で、華やかで、それでなんとなく死にたくなった。一年の節目となるこの季節を、希望を抱いて迎えたことが一度たりともなかった。綺麗なものを素直に綺麗と思えない自分が醜い生き物のように思えてならない。私だけだった。私だけが黒い羊だった。


 ジャンクフードに囲まれる生活の再来。自堕落でいっそ清々しい。

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