第41話 標

 二日酔いのような頭痛とともに迎える朝はどうにも最悪で、ご飯は相変わらず食べれないままだけれどもその状態に慣れた家族がそのことを咎める様子もなく、好きに寝て好きに起き、そうやって何もしていない間に太陽は半分回って月が昇り、それでやっと長い一日が終わる。

 エスエヌエスは見ないまま。

 いいことだと思う。


 戯れにピアノを弾く。

 習い事として長いこと練習してきたはずなのに指が滑らかに動くことはない。それはそうだろう。その長い期間の中でさえほとんど練習してきてこなかったのだから。だからピアノを弾くときに時々思い出すのは先生の呆れたような顔だった。上手に弾ける同級生を羨ましく思うことはあってもそうなりたいという向上心に至ることはついぞなかった。

 なにもピアノだけではない。この飽き性な性格のせいで離れたコンテンツはこの短い人生の間でも山ほどある。

 もちろん挑戦することは大事で、でもそれも続かなければまるで意味がない。たくさん挑戦してきたのに、結果身についたものなんてひとつもない。

 ただ、こうして好きなときにだけ触るピアノは好きだった。


 またあのパステルカラーのふわふわな夢を見たいと思う。近いうちにじゃなかったとしても、いつかの日に。

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