第40話 切

 私は、この感情を知っている。

 私は、この思い出したくなかった感情を覚えている。

 呻いた。

 それで救われるのなら、どんなによかっただろうか。


 上手に笑えなかったと思った。目を合わせるのが苦手だと思った。慣れていないと思った。それでもうまく取り繕えたのだと、次の約束がそれを証明してくれている。演じ切れた安堵感が先に来てしまった。間違えているのかもしれない。いまいち自分の感情に自信がない。

 もう少し馬鹿になりたかった。もう少し浮かれていたかった。


 隠し通せば私の勝ちです。

 これも何度目のセリフだろう。笑いが込み上げてくる。

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