第38話 再

 好きだ。報われなくても好きだと思った。振り向いてくれなくても好きだと思った。だから最悪だった。気づかないまま生きていけたらよかった。

 このままでいい。いいわけあるか。そんなわけないだろうが。


 時間。たくさんある。どうやって使おうか。暇なときにやるようなことがなかった。暇潰し。文字盤が規則正しく動いているのを眺めている。壁の模様の数を数えている。部屋にあるもの全てが緩やかに朽ちていくのを眺めている。どうしようか。どうしようもできない。

 この時間の使い方を私はまだ知らない。久しぶりだ。脳のほとんどを占めていた事柄を、やっと追い出すことに成功した。成功はしたが、それから何をすればいいのかわからなくなっている。


 美しい夢だと思う。今でも眩しいと思っているよ。


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