第22話 品

 ご飯が食べれなくなった。数日前までは極めて健康的な生活を送っていただけに不可解だ。定時に眠り、予定よりも早くに起床し、ご飯は三食しっかり食べる、そんな、普通の生活をやっと確立できたと思っていたのに。

 仕方がない。そうだろう。

 食費が浮くだけの話だ。

 それだけだ。


 夜より朝が辛かった。夜は眠りさえすればそれでよかったが、朝は、何もない一日だとわかってて体を起こさなければならないのが、気づけば自分の中でもかなりの苦痛と化していた。毎日布団の中で泣いてから起きるのが常態化していた。孤独だ。一番なりたくなかった「寂しい人間」とやらに近づいているのがわかった。どうしようもない。救えない。

 誰も愛してくれない。

 誰も愛してくれない。


 自分で自分のことが認められなくて、自分が幸せになることが許せなくて、だから享受できたはずの幸福すらも跳ね除けて自ら今の不幸を選んだのだから、だから誰も何も言えないはずだ。


 嘘でした。全部嘘でした。突然ごめんね。

 だから綺麗さっぱり忘れてね。

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