第21話 犀
まただ。
またこの世界に起きてしまった。
全てうまくいかない。思い返せば人生で上手くいったことなんて一度もないのではないかと思うくらい成功体験が少なかった。覚えていないだけなのかもしれないが、大きい挫折をここ数ヶ月で多く味わいすぎた。もがくことに意味があるなんて言えるのは成功者だけなのに。
全て捨ててしまいなよと言った。
プライドも何もかも捨ててしまえば楽になれるよ。
そんなことは言われなくてもわかっていた。わかりきったことだった。うるさい。黙れ。何も言わないでくれ。お願いだから。
耳を塞ぎたくなる忠言の数々、それらはいつからか聞こえなくなっていた。もう手遅れだろう。
昔の記憶に今日も襲われる。十代の自分もそれなりに多くのことに悩み苦しんでいたはずなのに振り返ればそうやって思い煩っていたことを含めて全てが美しく思えるのだった。思い出は全て美しかった。それが、はらわた煮え繰り返るくらいに憎たらしいことのように思われた。
それでは、私は一体何をしているんだろう。全部捨てた。当時持っていたものを全部丸ごと捨てて、残ったものが何もない。
憎かった。違う。この感情はなんだろうか。
時々自分が理解できなくなることがあった。ここ最近はそういうことが特に多い。理由は明白だった。
現実から目を背け続けているという、それだけの話。
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