第18話 柚
頭の中に棲みついた羽虫をどうやって追い出すのか、今日も考える。解決方法など端からない。そんなことは分かりきっていた。虫なんていないのだから。いないものをどうやって消すのか、それだけを考えて、今日も時間を無駄にする。
弱かった。弱いのに弱いことを隠したかった。失望させたくなかった。自分のことが許せなかった。演じ続ければいつか本物になれると信じて自分を作り上げるところまではよかったのだが結局最後まで演じきることができなかったのだ。上手に生きることができなかった。偽物はどう足掻いても偽物だった。それを突きつけられたときに何かが壊れた。壊れたものは元に戻らないのに。あーあ。
砕け散った自尊心の欠片を眺めながら綺麗だなとか、どこか的外れな感想しか思い浮かばなかった。拾い集める気力はなかった。大の字に寝転んで空を見上げてみたけど空虚は空虚のままだった。君じゃ私を満たせない。私は幸福になれない。最初から答えは出ていたのに意味もない答え合わせを終わらせて、ただそこからどうすればいいのかが思いつかないまま、わからないまま。
拝啓あの日の私へ。私はどうするべきでしたか。
できれば一緒に不幸になりたかったのに。
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