第16話 鷹
心臓に悪いと思った。だから全部無くしてしまいたかった。何もかも忘れて布団に潜ってそのまま息も止めてしまいたいと思った。痛みと苦しみはよく似ていて、痛みにおける鎮痛剤というものが苦しみにはないだけの話だった。時間が解決してくれるだろうか。解決しないでほしい。この苦しみさえ私だけのものだ。誰もわからない。誰もわかってくれるな。
気持ちがわかるという言葉は好きではなかった。私自身は誰にも共感できなかった。だからこそ余計に誰にもわかってもらいたくなかった。固有性というものを常に重視していたのかもしれない。趣味を自ら人に打ち明けたこともほとんどない。将来の夢だって誰にも教えたことはない。何にも知られたくなかった。知られないうちは本当の私は揺らぐことはない。一度誰かに見せてしまったら、そんな自分が変えられてしまうことだってあるだろう。それが可能性の一つの話であっても、たまらなく怖かった。人に変えられたくなかった。だから誰にも知られたくなかった。今も私は一人のまま。
あれから誰にも会ってない。そろそろ一人にも慣れてきた。
ずっとずっと苦しい。でも時間が経てば苦しくなくなることもわかっている。だからこの痛みは今だけのものに違いないのだ。苦しかったこともいつか振り返ったときに意味があったことだと言えるようになるに違いないのだ。
こうやって今も泣いてることにだって、きっと意味はあるのだから。
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