第15話 忘

 昔読んだ本、見た映画は、大なり小なりあれど自分の影響に人生を与えているのだということを実感することがある。内容自体を覚えてなくても、物語の根幹にあるテーマやメッセージ、それらが心弱ってるときに突然水面に浮かび上がり、訴えかけてくるのだ。

 物語は、力を与えてくれる。そして、それがありがたいこともあれば、ちょっと辛くなることもあり、今の自分で言うなら後者の状況だった。

 私は、物語を多く摂取しすぎた。


 一週間前に綺麗にしたはずの部屋がまた散らかってきた。不可解だった。生きてるだけ、生きてるだけなのに綺麗な状態を保つことができないでいる。これがいわゆるエントロピーの増大ってやつね、とか、高校で習ったかろうじて覚えてる化学の知識と照らし合わせて納得するも、納得だけで部屋が綺麗になるわけじゃない。知識そのものは問題解決には関係しない。要するに行動力が圧倒的に足りなかった。何もしないでまたここにいる。罪深いことだと思う。


 限界だった。とっくのとうに限界を迎えていた。何をしているんだろう。ずっと当てもなく彷徨ってる。難しいので何も考えたくなかったけど世界はそれを許してくれない。私は私が楽になるのを許せない。許せない私が認められたい。だから何もかも忘れたいと思った。寝たら忘れるなんていう幸せは私のところには来なかった。

 早く最強になりたかった。

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