第11話 離
日本語が読めない。
また一人であることを再確認した。空腹にはならなかったが二、三度ほど倒れかけたので大人しく普通にご飯を食べることにした。いろんな人に心配かけてしまった。申し訳ない。食欲減退で調べると難しい病名が延々と出てくるので調べるのをやめた。一過性の鬱の症状の一つなのは自覚していたので、多分身体の不具合による不調ではないだろう。
鬱の治し方は知ってる。完全に一人になればいい。
中途半端に人を頼ろうとするから弱くなる。今更誰かに弱さを見せられるわけがない。そんなことするくらいなら全部隠したまま消えてしまいたい。はたから見れば愚かだろう。自分のプライドが意外と高いのは最近知ったことだった。
爪のネイルが剥がれかけてかなりみっともないことになっている。セルフネイルは定期的に塗り替えることが必要なのに、外に出ないのをいいことに放置しきっていた。
好きな色が視界に目に入るのはいい。それが自分の体の一部なら尚更だ。髪を派手色に染めるのも似たような心理だろうか。その点、指の方が手間の少なさや金銭的な意味でもお得だろう。
ただ、それも飽きっぽかったら意味ないのだろうけれど。
自ら勝ち取った孤独は楽しい。一人は自由だった。誰にも縛られず、誰のことも気にしないまま、好きに生き、好きに眠れる。朝日が眩しい。他者のことを一切気にしなくていい。
ただ、世界と中途半端に繋がりがあるせいで、かつて自分がいた眩しい世界を度々直視しなければならなかった。振り返ったその一瞬のせいで何度も苦しめられた。吐きそうにもなったが幸いなことに胃の中には何も無かった。今更未練があるのだろうか。自分がわからなかった。自分が、わからなかった。
全部捨てて一人になりなよと悪魔が囁いたのは昨日の出来事だった。それも悪くないのかもしれないと思えるほど、精神はすっかり参ってしまっていた。
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