第7話 雑

 数字が五月蝿い。目を閉じても奴らは瞼の裏でチリチリと圧をかけてくる。数字に色はない。形もない。数字自体に意味もない。概念が苦しい。

 数学を美しいと思っていた時期もあった。無秩序の中に一つの確かな秩序を発見、特に自分の力だけで到達できたとき、そこには確かに数学をやってる者にしかわからない、数学でしか生まれない感動があったのだ。

 感動には時間がかかる。そして今時間がなかった。時間が異様に足りない。足りない。


 かなり昔から自分は自分のことが嫌いだったらしい。少なくとも昔の日記にはそう書かれている。数年ごときで人は簡単には変われないらしい。そりゃそうだ。髪を染めて、メイクをして、別人のように見た目が変わったとしても身は自分のままなのだから。お金をかけても性格は変えられない。嫌いな自分がまだここにいる。

 自分で自分を好きになるたった一つの方法を、叶えられなかったから今私はここにいる。少しだけ苦しいと思う。


 過去の自分が、今でも自分を許してくれない。いつか和解できるだろうか。いつか赦してくれるだろうか。

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