空を見上げるひと
「綺麗だね」という呟きに
わたしの心がはっとした
その人の視線の先には
淡い夕焼け色と
どこまでも広がる水色が
染まり合う空
やわらかな白い線が二本と
仄かに見える欠けたお月さま
誰も気付いていないと思った
地上の人々は
いつも前を向いて 下を向いて
画面を覗き込んで
イヤホンをして 音を楽しんで
耳を閉ざしている
空なんて、誰も見ていない
そう思っていた
だけど、
ここにいた
一人いた
見上げていたその人の隣
その人の大切な人も
空を見上げてくれた
ここに二人
空を見てくれる人がいた
なんだか嬉しくって
心が跳ねて
じわりと涙が染みてきた
わたし以外のみんなにとって
空なんて
もう必要ではないと
飛行機雲や夕方の月なんて
もう特別ではないと
そう思っていた
誰かに見上げてもらえて良かった
わたし一人だけで楽しんじゃ
もったいない
小さな涙を一粒
アスファルトに残して
わたしは往来に紛れて消えた――
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