<幕間> 「麗しの雷の女帝」ルシアの雷撃について語り合う男たち
参加者:サバンさん、盗賊団「牙」の団員(以降、「名無し」と表記)、マンティコア、メイガス魔導師
サバンさん「本日はお忙しい中……ええい、めんどくさいな、とにかく、今日はルシア様の雷撃の魅力について、みんなで忌憚のない意見交換を行うぞ」
名無し・マンティコア「……」
サバンさん「なんだよ、その沈黙は。ここにいるみんなは、ルシア様の雷撃をその身にあびた仲間じゃないか」
名無し・マンティコア「……」
サバンさん「さあ、遠慮するな。ルシア様の雷撃の、例えようもない良さを、思いっきり語ろうぜ。……あっ! お前!!」
サバンさん、「牙」の男をにらみつける。
名無し「ビクゥ!!」
サバンさん「そういえばてめえ、畏れ多くもルシア様に不埒な真似をした、例のゲス野郎だったなあ!!」
名無し「ひぃいいいいいい!!!!」
名無し、おびえて逃げ出そうとするが、サバンさんに襟首をつかまれる。
サバンさん「ルシア様の服の横から手を突っこんで……うおおおおおおお!! キサマ、許さん! この場で天誅を加える!!」
サバンさん怒りのあまり、目を赤く光らせ、筋肉がパンプアップし、狂戦士モードに突入。
ガスッ! バキッ! ボスッ! ズガッ!
名無し、なすすべもなく、ずたぼろになり再起不能、担架で退場。
サバンさん「ふぅ、まだ気が済まんが、今日はそういう会じゃないからな。さあ、マンティコア、あの雷撃の魅力を思う存分語ってくれ」
マンティコア「グワーッ」
サバンさん「ん?」
マンティコア「グワーッ、グワーッ、グワーッ」
サバンさん「なになに? ワタシにはダンジョン再建の仕事があるから、こんなことやってるヒマはない?」
マンティコア「グワッ!」(そのとおり)
サバンさん「けっ、そうかいそうかい、いいよ、お前なんかさっさとダンジョンに帰っちまえ!」
マンティコア「グワッ!」(そうさせてもらうよ)
マンティコア、ギャロップで退場。
サバンさん(さみしそうに)「なんだい、みんな、せっかくよう……俺は、みんなと楽しく……ルシア様のよう……あの、バリバリ、ビリビリッてくるのがよう……」
メイガス魔導師、ここでサバンさんの肩をポンとたたく。
サバンさん、驚いてふりかえる。
サバンさん「ん? そういえば、あんた、何でここにいるんだ? あんたは関係ないだろ」
メイガス魔導師、瞑目し、首をゆっくり振る。
メイガス「……わかる、わかるぞ、サバン君」
サバンさん「えっ?」
メイガス「……あれは、もう何百年も前のことだ。わしが初めて、ルシアに雷の魔法をおしえたのだが……」
サバンさん、身をのりだす。
サバンさん「うん、うん、それでそれで?」
メイガス「才能溢れるルシアは、幼いながらも、わしの指導通りに、渾身の雷撃を放ったんだ。持って生まれた魔力は十分だが、まだ、コントロールがうまくつけられなかったんだろうな、ルシアの雷撃は、狙いを外れてしまってな。横で指導していたわたしを頭上から直撃!」
サバンさん「おおぅ! 直撃か?!」
メイガス「そうだ。直撃だ。そのとき、わたしの全身を駆けめぐった、電流のようなしびれと衝撃、まあ、雷撃は文字通り電流なんだがな」
サバンさん「ああ、いいなあ……うらやましいなあ……おれも、いちどで良いからルシア様の、あの雷撃を、直撃でこの身に」
メイガス魔導師、遠い目をする。
メイガス「うん、あれは、いいものだ……あの例えようもない、いっしゅんで魂が消し飛ぶような感覚は、何百年経とうと忘れられぬよ……」
サバンさん、思わずメイガス魔導師の両手を取り、その後、二人は、がっしりと固い握手。
サバンさん「おれは今、同志を見つけた! あんたこそ、本当の友だ!」
メイガス「おお、友よ、今日はとことん語り合おう!」
その日の、ふたりの友情の会話は、どこまでも続くのだった。
ルシアさん「くしゅん! くしゃみ? なんだか、だれかがわたしの噂をしているような気がする。ぞくぞくへんな寒気もするし、おかしいから、今日はもう寝てしまいましょう……」
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