第5話

 僕とちーちゃんはそれからもずっと毎日のようにお互いの家に行き来しそれは高校生になるまで変わらなかった。

高校生にもなると周りの環境が大きく変わった。

もう大人に近づいているんだなと実感したのを覚えている。

僕とちーちゃんが毎日一緒にいると

「2人は付き合ってるの?」

など冷やかしは当然あるもので

段々とお互いに一緒にいる時間も話す時間も減っていった。


高校二年生の夏

決定的な出来事が起こった。


 文化祭があり、最後に誰かが告白をするという定番の流れだった。

そこに僕がいかないかと周りの友人達に言われちーちゃんに告白をしろ、というのだ。

僕はあまりのしつこさと恥ずかしさに苛立ち


「誰が好きになんてなるかよ!」


空気が張り詰めた。

僕も言葉を発してすぐに後悔したが遅かった。ちーちゃんがすぐ近くにいるのを知ってて友人達も言ったのだ。

もちろん悪気があるわけでは無い。冷やかし半分ではあるがこれは確実に僕が悪かった。

ちーちゃんはポロポロと涙をこぼし走っていってしまった。


「おい、追いかけなくていいのか」


友人にそう言われたが

僕がなんて言葉をかければ良い。

次の日もその次の日も声をかけようと、謝ろうとタイミングをみていたが、長引けば長引くほど言葉が消えていくのを感じる。


時間は過ぎ、僕達は卒業式を迎えた。

あの日からちーちゃんと話すことはなかった

進路などは親からお互いに聞いてはいただろう。

僕は進学を選択し県外へ行くことにしていた


卒業証書授与式が終わり皆で撮影などをし僕達は解散した。ちーちゃんが少しいい?と尋ねてきた。

少し離れたところに移動しちーちゃんが話し始める。


「県外行くんだってね。」


「うん、」


「たまには帰ってくるの?」


「どうだろう、分からない」


「そう。また会えるよね?」


「どうだろう」


僕はごめんの一言も言えず沈黙の時間が流れていく。


「じゃぁそろそろお母さんくるから行くね、大学がんばってね」


「うん、じゃぁ」


帰ろうとすると僕の体が引っ張られた。


「大丈夫だから!待ってるから!」


泣きそうなのを我慢し笑顔で言うちーちゃんを見て僕は幼い日の気持ちを思い出した。

だがもう遅いだろう。勝手にそう思ってしまった。



桜並木を歩く君を見て僕は切なく

そして罪悪感に駆られ

このまま君の中では満開の桜が散る頃にはきっと僕という存在も儚く散ってしまうのだろうなと感じた。


別れの季節の香りと

出会いの季節の香りがする。


僕達は大人へとなっていくのだろう

それぞれの道を選びながら

きっともう出会うことはない

桜の香りが風に吹かれやってくる


「いつかきっと」


ボソッと呟き僕も足を進める

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