第21話
「東部戦線が突破されましたッ!」
「急いで予備兵を派遣しろ!」
「第三部隊との連絡が途絶!全滅したものと思われます!」
「同じく第八部隊との連絡が途絶!こちらも全滅したと思われます!」
「伝令より連絡!第十二部隊は半壊!現在撤退中!」
「ええい!急いで予備兵を各所に配置し、遅延戦闘に務めよ!」
「
通信兵の悲痛な叫びと、指揮官の怒号が入り乱れる総司令部。
飛んでくる報告に喜ばしい報告はなく、どれも悲痛な報告。
自軍の全滅と撤退を示すものばかりであった。
それだけ自軍が追い詰められているということだろう。
ここは中東戦線。
今まさに赤の津波に飲み込まれようとする戦線。
それでも赤の津波に飲み込まれまいと決死の努力する戦線。
常に好調で連戦連勝。アメリカ社会主義国の撃滅も見えてきたアメリカ戦線とは正反対の地獄の戦線。
アフリカにいた兵士はすでにアフリカ戦線は諦め捨て、スエズの防衛に当たっている。
オスマン帝国、トルコはすでに赤軍の前に敗北し占領されている。
我ら栄光ある大日英帝国は赤軍の前に敗北しかけていた。
「和也大将!ご指示を!」
将校たちが僕に指示を仰ぐ。
絶望に染まった瞳を向けて。
そう。もはや我ら栄光ある大日英帝国の敗北は決まったようなものだった。
いくらアメリカで勝とうとも、中東を失い、インドを失い、中華を失えば意味がない。
「さて、諸君。今まさに敗残兵と成り下がらんとする栄光ある大日英帝国諸君」
僕はゆっくりとさほど大きくない声で。されど染み渡るような声で話し始める。
「諸君。このまま敗残兵となることを許容するか?」
「諸君。このまま敗北することを許容するか?」
「諸君。このまま赤軍に村々が母国が蹂躙されることを許容するか?」
「諸君。このまま守るべき女子供が犯されていく様を許容するか?」
『否であります』
将校たちの瞳に意思が宿る。絶望の中でも光る意思が。
「ならばどうする?」
『勝利を!絶対の勝利を!』
「あぁ、そうだ。勝利だ。勝利こそが我々を救う。たとえどのような手段を用いようとも。後世から罵られようとも。我らは母国のため、愛する人達のため、勝てねばならない。勝たなくてはいけないのだ」
「さぁ、諸君。勝利を捧げよう。天皇陛下に、イギリス王室に。たとえどのような手を使ってでも」
「それでは、君。あれは一体いくつ用意できている?」
「はっ!5発にございます!」
「よろしい。それでは3発ほどのここに持ってきなさい。もう一発はイギリスに。もう一発は安全な軍港へ」
「了解いたしました!」
さて、この身を煉獄へと捧げるとしようか。
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