第22話
大日本帝国は倫理という枠組みから開放された。
その結果は悲惨なものだった。
大日本帝国は大規模な撤退を開始。
中東を一帯から大規模に撤退。インドの方まで撤退した。
その殿を務めたのは何の武器も持たされていない中国人であった。
「731部隊は後方の港まで撤退。輸送船に乗り込ませろ。特大の合図とともに出向。予め決めてあっった地点へ上陸作戦を実施しろ」
「はっ」
使うのを控えていた虎の子の精鋭毒ガス部隊に指示を出す。
世界最悪の作戦のための下準備だ。
「入電!全部隊の撤退が完了したとのことです!作戦準備は完了とのことです!」
「そうか……では作戦『白夜』を開始しろ」
■■■■■
この日、世界に3つの太陽が膨れ上がった。
■■■■■
「な、なんだこれ」
俺は呆然と呟く。
そこにあったのは地獄だった。
今まで乾いた砂漠が嫌だった。
雨が降ることを望んでいた。
そして、その願いは叶えられた。
ただし、降っているのは黒い雨だが。
中東の大地を歩く敵兵は……なんだ……。
俺の知る言葉では言い表すことなど出来なかった。
敵兵が着ている軍服は皮膚と一つとなり、皮膚は酷く爛れ、腕の皮膚などは地面に着くほど垂れ下がっていた。
髪の毛は縮れ、顔は腫れ上がりその人の顔はわからない。
皮膚は赤く染まっている。
黒人も、白人も、黄色人種も、皆赤く染まっていた。
ポトリ。
俺のすぐそばを歩いていた敵兵の目玉が落ちる。
それを敵兵は慌てて地面に落ちる前に掴もうとする。
しかし、出来ず目玉は地面へと落ち、敵兵も身体を急に動かしたせいで転んでしまう。
爛れ、目玉なのかもよくわからない残された瞳と俺の瞳があった気がした。
「ーーー」
爛れていてもなお瞳としての機能をはたしているのか、俺を認識した敵兵が俺の方に手を伸ばし、何かを話す。
だが、その言葉は外国語でなんと言っているかわからない。
それが俺にとって救いなのか、救いじゃないのか。それすらもわからない。
吐くことも、泣くことも、動くことも出来ない。
俺は何も出来ない。
何もすることが出来ない。
ただ目の前の惨状を前にただ呆然と経っていることしか出来なかった。
黒い雨が呆然と立つ俺を打つ。
「黒い砂漠……」
中東の砂漠が黒い雨に濡れ、黒く染まっていく様子を見て呆然と呟いた。
あぁ。ここは何だ?
間違いなく地獄なんかを越えているだろう。
この世はなんだ?
人は……人間はこんなことすら出来るのか?
これが……戦争なのか……。
黒く、黒く、黒く、砂漠が染まっていく。
黒い砂漠
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