腎臓、1個いくら？

第66話 遺伝子

毎週金曜日はカウンセリングを受ける日である。

どんな家族構成なのか説明するのが面倒だった私は、俳優とジャニタレの名前を出して、こんな顔してますと伝えた。

父親も割とイケてる方で、母親も可愛いのにどうして私はこんな顔なんだ。

メンデルの法則か？

そろいもそろってみんな男は理系なのは、なんなんだ。

ステレオタイプ化した私の理想の男性像。

はんだごてやドライバー、ニッパー・ペンチなどの工具が使えない男

テレビや家具家電の組み立て・修理ができない男

ミッションの免許持ってない男

無理～～～～～～～～～～

このクソ女、身の程をわきまえろ雑種、そう自分に言い聞かせたい。

私はできるもん！（精神年齢：３さい）

こんなことを言ってるからいつまでたっても彼氏はおろか好きな人もできないのである。

とはいえ、わが子のこともあり、男性に対して嫌悪感が半端ないため今の1人がとても居心地がよい。

私の実家にはスロットの実機が置いてあった。

吉宗か北斗の拳かジャグラーだった記憶がある。

祖父母の家には雀卓があった。

ちゃんと牌も全部そろってる。

スロットに関してはもう処分してあるため触れないが、雀卓セットに関しては祖父が亡くなってからもあることが分かったため、私がもらうことにした。

祖父の遺品はお宝の山で、色んなものをもらった。

母方の祖父も私にプレゼントをくれた。

それは高校入学時にくれた腕時計。

北川景子さんが宣伝しているもの。

とてもかわいく、私は今も大切にとってある。

値段を見たとき、目が飛び出た。

2人のおじいちゃん、空で見てますか？

きっと立て続けに亡くなったから、お互い天国で会って驚いていることと思います。

孫である私は、2人のおじいちゃんになにかできましたか？

亡くなると分かっていたら、そんなことばかり考えます。

成人式の姿、見せてあげられなくてごめんね。

あの日、もっともっと話してお泊りすればよかった。

実家を嫌って帰省せずに、顔も見せなくてごめんね。

痛かったよね。家族の中で私一人だけが、延命措置を望んで泣き叫んだんだよ。

パパおじいちゃんが延命措置を望まなかったってお父さんから聞いて、私は自分にできることを教えてって泣いたよ。

朝の6時に病院に行ったら、パパおじいちゃんはモルヒネで眠ってたよ。

私は病院なのに心マしたい気持ちにかられたよ。

機械がまだ動いてる、だから生きてるって。

お医者さんが最善の手を尽くしてくれたって。

なのに、心拍数が20からいきなり０になった。

よくドラマで聞く、あの電子音を聞いたよ。

わんわん泣きたかった、でも私より泣きたいのはパパおばあちゃんだと思ったから必死にこらえた。

なんでかな、心臓は止まってるのに、身体はすごく暖かくて

パパおじいちゃんの優しさが伝わってくるんだよ。

お父さんが涙を流して、お医者さんにお礼を言ってて、私はその時生まれて初めて自分の父親の泣いているところを見たんだよ。

パパおじいちゃんは私にいろんな話をしてくれた。

もちろん私とパパおじいちゃんの秘密。

でもきっとそれは言わなくてもパパおばあちゃん分かってると思うよ。

パパおばあちゃん、パパおじいちゃんのこと大好きだってさ。

生まれ変わってもパパおじいちゃんと結婚するって。

だから、万が一パパおばあちゃんに何かあったら、パパおじいちゃんの大好きなパジェロで迎えに行ってあげて。

パパおばあちゃんもそれを望んでたよ。

ママおじいちゃんがもう目を覚まさないって聞いて、お願いだからママおじいちゃんに会わせてってお願いしたんだよ。

元々入院してたからいつ何があるか分からないって聞いてびっくりしたよ。

ホスピスに移った時、ああこれはって思った。

最後に会った時にはもう私のこと忘れてて、お母さんと間違えてたね。

それでもママおじいちゃんの中で、私のこと大切にしてくれたこと覚えてる。

ママおじいちゃんは知らないかもしれないけど、ママおばあちゃんは泣いていたんだよ。

亡くなった当日に、ママおじいちゃんの顔を見に行ったら、私の手をつかんで離さずに泣いたんだよ。

それくらい愛されてたよ。

お通夜や葬儀に出られなくてごめんね。

パパおばあちゃんのお手伝いもあって行けなかったんだ。

そんなこと言わなくても、パパおじいちゃんなら知ってるかな。

2人とも、苦しい顔じゃなくてすやすや寝てる顔で良かった。

色んな確執やしがらみがあって、両家共に大変だとは思うけれど、

それでも私はこの家に生まれてよかった。

2人の孫でよかった。

あの時、大学に行かずに、嫁入りしてウェディングドレス見せればよかった？

あの時、地元で就職して結婚すればよかった？

そんな後悔が募ります。

どうか、パパおばあちゃんとママおばあちゃんを見守ってください。

そして、わが子を守ってください。

2022年1月21日　なぎさ

私も大切にしたいと思える人に会えるように頑張ります。