第5話 作家なんかやめちまえ
〈なんか、もやるな〉
〈どうしてリク?〉
〈色々調べてみたんだ。毎日更新ってのをすればいいんだってよ。でも、俺は完成してるものは早く読者に届けたいから、一日で全話を公開しちまったり、分けて投稿してもタイトルとあらすじが悪いのか人が増えない〉
〈読み合いして、お互いの作品のタイトルを決める?〉
〈いいのか? 忙しくないのか?〉
〈僕は大丈夫〉
タイトルとあらすじをお互いの作品につけあった。しかし、ここで判明する。作品名を長文にしたところで、どうしても流行りのタイトルにならないと。検索キーワードの問題と同じだ。流行になる要素が一つもなかった。タイトルを長文にしたおかげで「ベスニラ戦記」は、「狼男は戦地で赤ずきん少女と無双する。狩人を率いて魔王軍をせん滅しちゃいます」になったが、それでも、「追放系」ではないし「ざまぁ」も「もう遅い」要素もない。PVはようやく二ケタ台になったが。そして、嫌な予感がする。
〈画伯。俺気づいちゃったかも〉
〈なにを?〉
〈長文タイトルの作品って。タイトルを決めてからそのとおりになるように作品を作るのかもしれない……〉
俺には同時に無理な話だと思った。俺の書きたいことと、一致しない。こんな問題が起こるとは思わなかった。流行っているのかもしれない。書籍化するのかもしれない。ランキングに入るのかもしれない。だけど、そのためには、書きたいことが書けなくなるかもしれないことに気づいたんだ。
〈リク。書きたいことを書くっていうのは、創作の第一歩のはずだよ。きっと流行ってるから書くって人もいるのかもしれないけど。僕たちは、そういう器用なことはできないのかもしれないよ〉
人の気も知らないで。俺は落選したんだ。お前は、一次選考通過しているじゃないか!
〈なあ、リク。僕、もうウェブでの公開はやめにしようと思うよ〉
はぁ? なんでお前がそうなる? スマホを持つ手が震えた。川で魚が楽し気に跳ねた。
〈今日、感想欄に書かれたんだ。こんな作品を書くぐらいなら作家なんかやめちまえって〉
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます