レシピ8 ネガティブ錬金術師と二人のギルドマスター3

 その後いくつかの質疑応答を何とかこなし、また次来る時には必ず回復薬と閃光弾を持ってくる事を約束させられた。

簡単だけど量産はちょっと無理だから、数はそんなに約束出来ないとは言った。簡単なのいっぱい作るのめんどいから。


 ようやく解放されて再びフロアに降りたら、即座に赤毛が飛んできた。

「アイハ、大丈夫か!? 何もされなかったか!?」

 オレの事を待っていたのか。でも何で?と思ったら、彼の持っている袋が目が入った。

あ、そうだ。オレの買った服預けっぱなしだったわ。忘れてた。

一応礼を言うべきだな。


「ありがとう」

 ボンッ

 赤毛が顔まで赤くなった!?


「ぶ、無事なら良かった……!」

震えながらそっぽを向いている。

礼を言ったんだから荷物を返してくれても良いと思うのだが……?

「ほ、ほら、この後食料買いに行くって約束しただろう?」

買い物は行くけど、約束はしてなかったと思う。

あれ?したっけ?


「私も行こう」


「わひゃあっ!?」

 いきなり頭上から降ってきた声に油断していたオレは変な声が出てしまった。

振り返るとイーサンさんが直立でオレを見下していた。みおろして、ではない。みくだして、だ。

目だけこっち向いてて超こわい。

やっと解放されたと思ってたのに、いつのまに、なぜ付いて来てたんだ!?


買い物には、大変興味がある。

 私も行こう」

 意味ありげな言い方に、疑問を持つ頭を押し付ける様に、同じ言葉を繰り返した。

「おおおっ!執務室にこもりきりの仕事の鬼のイーサンが買い物に出るだと!?

 こりゃ今日は飲まなきゃな!!」

何とか断ろうと口を開くより先に、アガトさんが大きな声で喜色をあらわにし、オレの肩を抱き寄せた。

「なっ……!」

「うおっ!」

 赤毛が何か言う前に、イーサンさんの袖から棒が伸びてきた。し、仕込み杖……?この人商人じゃなかったのか?


「アガト……公衆の面前で嫁入り前の女性に抱きつくとは恥を知りなさい」

「おお……これはますます面白ぇぞ。なぁアイハちゃん!」

 思い切り杖を突きつけられているのに、アガトさんは物ともせずに腕は外さずオレの顔を覗き込んだ。


「……ん?

 アイハちゃん、珍しい目の色してんな。もしかして移民か?」


「え!」

 しまった、油断していた。

「すごいな……黒水晶みたいに真っ黒で透き通ってる……。吸い込まれそうな瞳だ……」

 アガトさんがオレの顔を両手で掴んで至近距離でマジマジと見てくる。離そうともがくが、ビクともしない。この筋肉オヤジ…!!

 しかし拘束はイーサンさんの更なる突きと赤毛の突進によって解かれた。助かった。と思ったらイーサンさんもオレの目を覗き込む。

「確かに珍しい瞳ですね。全てを映しこんでいるので、本当の色に気付きにくいですが、夜の闇の様に真っ黒だ」

「黒い瞳の移民……?ん?最近どっかで……」

 やばい、赤毛がいらない事を思い出そうとしている!


「買い物!ワタシ買い物に早く行きたいな!!!」


「えぇ、そうでしたね」

「おう、行こう行こう」

「おぅ!まかせろ!」

 話題をぶった切りたくて思い切って声を上げ、お願いのポーズをしてみたら、3人の男はさっきまでの会話を忘れたかの様に、オレに向き合って賛同の意を示した。

 マジで妖精の呪いのせいだとしたら、恐ろしいにも程がある。



 あれ?何か気付いたら4人で買い物行く事になってない?

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