八 げふ
喧噪の中。
咲ちゃんはアダルトのDVDショップだろうが、中古のCDを扱っていれば全て廻る。
端から見れば撫子さんはぼっと突っ立っているようにしか見えない。
ハウスチェックのスカート丈も短めなので、盗撮されてもおかしくないが、
後ろに目でもあるかのようにその辺りはさりげなく気遣っている。
撫子さんより頭二つ分背の低い制服姿の咲ちゃんがめざとくチェックを入れると、
「行こうか」と店を出る。
撫子さんは従順な足音で付いてゆく。
更に幾つかのショップを巡る。
棚を眺めていると、咲ちゃんから
「行こうか」
と呼びかけられる。
しかし、咲ちゃんのお目当てのアーティストが目の前にあったので、
指し示そうと指を立てた途端
――げふ――
と突然こみ上がったげっぷが漏れる。
咲ちゃんが乾いた笑い声にお腹を抱える。
撫子さんは耳まで真っ赤にしている。
店員さんに注視されるのが恥ずかしくて咲ちゃんの袖を引っ張るのだが、
カーディガンがほんの少し伸びるだけで、
咲ちゃんはけたたましく笑い転げたままだ。
帰りの電車、メールが届く。
色々書いてある。
「ちよーぅける。
(*へ*)
って顔してたね」
思い出すと恥ずかしくて、
また、耳まで赤くなった。
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