第5話 甘いけど甘くない
今日の外周も昨日と同じで走り辛い。
色々な視線を痛い程に感じる。そう感じながら走ってると正門のバス停に遥がいた。違う制服で学校内にいるのは少し心配だったのでそこなら大丈夫と手を振ると眼鏡を片手で押さえながら小さく手を振ってくれた。
その時未来しか知らない事を遥が知っていたらまた来て欲しいと爺ちゃんに言われていた事を不意に思い出した。
俺の名前は未来しか知らない。こいつらは全員りりんと呼ぶ。確かではないけど未来が知ってるように遥も知ってんじゃ無いかと思う。
大橋ファイトオーと女子ソが外周してる。萩原が遥に手を振ってるそれにお辞儀で答えてるのを見て仲良くなったのかなと単純に思った。それを見たはじめが不思議そうな顔をしている。あれと指差してるはじめに仲良きことは美しきことかなと伝えるとより一層不思議な顔をした。
その光景がおかしくて俺は笑いさっさと終わらせようと走る速度を上げた。
良く考えればわかることだが外周は回数ではなく時間なので早く走れば走る程多く走る事になる。
なんでこんなに疲れたんだと愚痴ったとこでそれに気づいた。
女子ソも終わったのか萩原がやってきて遅れてはじめもやってくる。
「やっと終わったね。走り込み基本だけど段々抜くの抜かれたのになって勝負になっちゃうんだよね」「僕はついてくので精一杯」とはじめはそこにへたり込んだ。
「俺はなんかムキになっちゃってほんと暑い」「珍しく真面目に走ってたよね」「本当それ。しかもこの後出かけんのにこんな汗かいてるとシャワー浴びに一回帰ってからになるわ」「一緒に家にいくの」はじめの驚いてる声を聞いて自分の言った事の重大さに気づく。「そうじゃない。何処行くかも決まってないし。それに今日はクリームソーダの日なんだよね」
「クリームソーダってなんですか?」突然遥が会話に入ってきた。「クリームソーダってのはメロンソーダの上にバニラアイスが乗っててってあー説明面倒い。面白くないかもしんないけど一緒にくるか?」本当に行って食べるだけなので全く面白くない可能性もある。
「きっと甘いものですよね?同士が餡子以外に浮気してるなら喜んでそれもチェックにいきますよ」と腕に抱きついてくる。
「だからくっつくなっての」その手を払うと「もうケチ」そう言ってほっぺを膨らませる。
「俺ならいくらくっついても大丈夫」と何処から来たというか良く嗅ぎつけたというか湊が混ざってた。
後ろから彼女が来てる。
お前はこっちと顔を手で挟み彼女の方に向けた。「それに甘いもの食べに行くのに来んのか?」「今日は甘い物の日か。それは大丈夫。んじゃまた明日」湊は甘い物は苦手だ。そう言って彼女と歩いて行った。
「これ登録しといて下さい。お願いします」湊の彼女が駆け寄ってきて必死な勢いでメモを俺に渡して湊の後ろを追いかけて行った。
ピンクの付箋に緑のペンでLINEのアドレスと上谷碧と名前が書いてあった。
ピラッと眺めてると
「りんはいいかっこしすぎだと思います。そんなものなんで受け取ってるんですか」珍しく遥が怒ってる。確かにとはじめも萩原もうなずいてる。
「いや違うそんなんじゃ無いって。外周行く前に湊の事で相談があるって言ってたから」
3人揃って「ふーん」と言われた。
「と、こ、ろ、で甘いものの日って何ですか」遥がいつもよりも更に近い位置に顔を寄せてくる。
将来の事なんて話すか少し悩んだが「俺、将来料理人とかお菓子の職人になりたいと思ってるんだ。父さんも職人で色々食べたり、見たり、色んなものに興味を持てって言われてるんだよね。その辺は説明すると長いから省くとしてそれでも美味しいもの食べた事ないやつは美味しいもの作れないだろと言われて確かにって思ったから週に一回は甘いもの新しいとこに行ってみる事にしてんだ」「じゃあお菓子の職人になったら最初のお客さんは私にして下さいね。すっごい楽しみ。あんまり先の事は約束しない様にしてるんで特別ですよ」
あんまり先の事は約束してないその意味に気付き一瞬黙ってしまったが
「約束だぞ必ず来いよ」と遥の目を見ながら言うと見つめ返し「はい。約束しました」そう微笑んだところで
「はいはい2人で世界つくらないでよね」と手を叩きながら萩原が入ってきた。「全くだよ。この距離で置いてけぼりとかやめてよね」ごめんごめんと言ってはみたがなんかおかしくて笑ってしまった。
「じゃ我々はクリームソーダに行ってきます」2人に向けて敬礼をした。遥が隣を歩きついてくる。あ、そうだと遥が萩原とはじめの方に行く
小声で「今度私いない時にりんに未来の事を聞いてみてください。ずっとりんを見てた萩原さんなら真意に気づけると思います」
そう言って俺に聞こえてないか確認して横に並ぶ。
「何話してたの?」「内緒です」と人差し指を唇に当てた。
「それはそうと満月堂はどうなったんですか」「それは大丈夫だって一回家よろ。父さんいるからちょっと面倒だけどパパッと着替えて用意するよ」「え、お父様いらっしゃるのですか?緊張するなー」珍しく少し困った顔になっている。「大丈夫俺は行ったからね」とニヤリとして遥をみる。
「そうですねじゃあ頑張ります。満月堂とクリームソーダの為に」「俺じゃないの」とツッコミ歩き出した。
「なんだか激しくお似合いだよあの2人」と萩原に伝えると「でも本当のライバルはあの子じゃないって本人が言ってたのよ」「それってじゃあららぽの子がって事かな。その子が未来?」
2人して悩んでみたが答えは出るはずなかった。
「今日はバイクじゃないんだな。じゃ俺の自転車だ」荷物をカゴに突っ込んで荷台をあける。
「学校にアレは目立ちますからね」
そう言ってあのライダースーツのチャックを上げる仕草をした。
確かにそうだなと思う。
いくら俺でも学校内で2ケツはまずいから門が見えなくなるまで歩く。
遥にお尻痛いんじゃないかと思い、いつも持ってるけど使わないタオルを置いた。スカートだから横向きに座って腰に手を回す。
「じゃいくぞ」ゆっくりとこぎはじめる。
「自転車のこういう二人乗りちょっと憧れてました」風を受けて髪をかきあげる仕草にドキッとした。
桜は散って葉桜の綺麗な緑になっている。紫陽花が少しずつ色を染め始め鬱陶しい梅雨の始まりを感じさせていた。
後ろに女の子を乗せて重そうに自転車はこげないから上り坂をダッシュで登る。
そこからはこがずに降る勢いでそのまま坂を下っていく。
「明日からは普通に学校?」
「そうですね。私なら清心にいますよ。でも平日は勉強と生徒会の手伝いをしてるんでほとんど時間ないんですよ。次会えるのはまた週末になるかなー」
「遥は先の事ちゃんと考えて一生懸命だよな。正直うらやましいよ」
「りんもあるじゃないですか?諦めなければきっと叶う夢ですよ。私応援してますから」
「そうだよな。ありがとう」照れ臭い感じを隠しながらもこんなに素直にありがとうと思ったのは初めてかもと思えるほど素直にありがとうが言えた。
(さて車は)と確認すると(やっぱあるか)なければ父さんいないんだけど後は起きてるかどうかだな。
「ちょっとまずは着替えてくる。父さん寝てたらいんだけど起きてたら」と説明してるとドアが開き父さんが出てきた。
「お、お帰り。ん?」遥を見て動きが止まる。「こりゃとんでもないの連れてきたな」
「りんさんのお父様ですね。初めまして。私遥と申します。不束者ですがよろしくお願いします」
不束者って婚約者かと心でツッコむ。
「なかなか面白いお嬢さんだ。遥ちゃんこちらこそ出来の悪い息子ですがよろしくお願いします」と父さんが頭を下げる。(ん?何がおこってるんだ?)
「二人して何してんの?」正直に聞いてみる。「お前はほんともう少し考えろ。この面白さがわからないとは」
「そうですよ」そう言って二人で笑ってる。これが萩原やはじめの気持ちかと思い
「出かけるの?」と確認すると「なんなら戻ろうか?」と悪い顔で言う。
(この感じ誰かに似てるな)それは言うまでもなく遥だ。いや結構と伝えると
「ちょっと夏の打ち出しで業者が相談あるって言うからお酒と買い物ついでに電話してくるわ」そう言って歩いて行った。突然俺が女の子と帰ってきたからびっくりしたのか普通を装ってるんだろうけど足元が健康サンダルとビーサンになってるのをみて指をさして遥と笑った。その瞬間振り返り
「ガキがガキつくんなよ」と一言いいスマホいじりながら歩いて行った。
少し赤くなってる俺をみて「私は構いませんよ」と悪い顔になってる。
「でたその顔。まとりあえず上がってよ。ちゃっとシャワーだけ浴びたら準備するから」
とリビングに遥を案内して風呂場へ向かった。
自慢じゃないが俺の風呂は早い。5分程で出て頭を拭きながら急いで着替えてリビングに向かう。私服に着替えたのだが遥が制服だから俺も制服にした。
「まずはこれだ」と満月堂のおはぎを取り出す。「あえてのおはぎとはやりますね。ですが少し硬くなってしまうんですよね」
「まだまだ甘いな遥君。おはぎは結局炭水化物なんですよ。だからレンジの弱で40秒程温めれば」チーンと定番の音が鳴る。
「柔らかい。この餅米の潰し具合が絶妙です」「だろ。良かった外したらどうしようかと思った。団子屋であえてのおはぎだから。後爺ちゃんと婆ちゃんのも買ってるから持って帰って」「これ自分で調べたんですか」
「ん?そうだよ」と自分のをつまみながら話す「ご飯がレンジでいけんならおはぎもいけると思って。一回強でかけたら熱くなって弱にたどりついた」
「なるほど」と遥が考え込んでいる
「どうした?」
「やはりりんは自分で思うほど頭が悪い訳では無いと思いますよ。ただ興味が持てないだけって感じですかね」
「う、なんでそんな話に。でもそれ確かにあるな。これが何の役にたつんだって気持ちは常にある」
「きっと何も役には立たないですよ。ただ中学生全員がやってるから物差しにはなりますよね。勉強が何より好きだって人もそんなにいないから嫌いな物とどう向き合うかの目安にもなります。受験にしてもテストにしてもやはり勝負事で順位がつけられるものですから出来ないよりはできるの方が何かと便利だとも思います」正論すぎて何も言えない。
「発想と転換そっちの方は今回のおはぎの事でやれるとわかったのでこれからは理数をメインに進めていきましょう」
「おおぅ」と気のない返事をするので精一杯だった。
煎茶は70〜80℃と言いながら沸騰したお湯を一度火から外し少し冷ましてから急須に入れる。んで40秒くらいーと数えて3回に分けて入れる。「ほい」と渡してふーっとして飲む。
ほんと昔の人は偉い。お茶と餡子の組み合わせを考えた人は天才だと思う。
「りんは本当に同士ですね。ここまでこだわってるとは思ってなかったです」
まじまじと褒められるとそんな事にはなれてないので慌ててしまい少しお茶をこぼしてしまった。
「熱っ」っとてを払うと遥の胸に当たってしまった。
「悪い。わざとじゃないんだ」そう言って頭を下げてほんとごめんと遥を見ると潤んだ瞳で俺を見つめ手を掴まれ胸に当てる。
「私今凄いことしてますよね」そう言って眼鏡を置きボタンを外し始める。胸に当ててある手からは遥の心臓の鼓動が速くなってるのが伝わる。
「おい遥何してんだよ。うわっ」ドンと押し倒され遥が馬乗りになる。
「このままね」と俺のシャツのボタンも外しはじめる。
何も言えずにその様を見てる俺に
「りん目を閉じて下さい」
そう言って顔を近づけてくる。
真っ赤になってる遥の顔を直視できず俺も覚悟を決め目を閉じたところで胸を俺の胸に押し付けてくる。
少し間が空いて
「今の私があげられるものはここまでです。この続きはどちらかになった時にと思ってます」
そう告げられたのを聞いて目を開ける。
「私は未来に負けたくないんです」泣きそうになってるのか目が赤くなっているし声が震えてる。
「あの日二人でベットにいるのを見てました。いつかどちらかが消えるなら私を選んで欲しいと思ってます」
もう完全に泣いているので掠れ掠れになりながら声を絞り出している。
「でもそんな重いものりんに世話わせたくはないんです。私を遥を見てくれてるそれで十分だと」抱きついて大きな涙を落としながら
「私はずるいです。こんな事言わなきゃいいのに私が未来に変わったら二人で花火するんでしょ」段々声の質が変わり始めてる。もしかして未来になりそうなのか?
「こんな事言うとやりにくいでしょ。でも少しでも覚えておいて欲しいから」
こんな弱そうな遥をほうっておけず強く抱きしめる。
「今俺が抱きしめてるのは誰でもない遥だ。ちゃんとこの暖かさを俺は覚えている。頭良くって甘いもの好きで俺みたいな奴の将来の事こんな応援してくれる子忘れる訳ないじゃないか」このまま押し倒してしまいたい気持ちがない訳じゃない。けれどそれは今じゃない。
「嬉しい。約束ですよ」溢れる涙を見せながら無理矢理笑顔を作る。
「ああ必ずだ。クリームソーダは一人では行かない必ず一緒に行こう約束だ」遥が消えそうだ。それは今だけなのかもう会えないのかわからない。俺も泣いている。
「もっと抱きしめて下さい」
「消えるのか本当に」
「必ずまた戻りますから」そう言ってそっと俺の右手を両手で掴みそこにキスをした。
「私はズルい女ですから」
最後にそれだけ言うと姿が未来に変わり眠ってる様に動かなくなった。
あれからどれくらいたったのかわからない。少しなのか結構なのか何にせよ動けないでいた。
机に置いてあるお茶を飲み一息つく。とにかくこのままでは父さんが帰ってくるとまずい。説明出来ないんだから別の女の子と思われても困ると考え今自分が実はピンチだと言う事に気がついた。
まずは一番困ってる未来のシャツのボタンをとめようと下から順に止めていく。
目覚めるなよと思いながら一つまた一つと順調に止めていく。
全部とめきった。よしっ
「で、何してんの?」
「えっとそのなんて言うか」鉄拳が飛んでくると避ける準備に入っていたが
「まあ見てたから何してたって聞くのはズルいわね」そう言って起き上がり服の乱れをなおしてる。
「この服ヒラヒラしてるから好きじゃないのよね。そうだ」と鋭い目で俺を睨む
「遥には関わらないでって言ったでしょ」怒っているが遥も自分なのだ。全く本当にと言いながらもそこまで怒ってない様だ。
「安心しなさい。消えたりしてないわよ。ここで眠ってるだけ」と自分の掌を胸の真ん中に当てた。
「そうか良かった」とりあえず一安心したところで
「じゃ帰る」と眼鏡をポケットに入れて玄関に向かう。迷いなく進むあたり遥の中で見てたんだ。
「今来たばかりだろ」団子食べてけよと言おうとしたけどさっきの遥の言葉が引っかかって言えない。
「二人で仲良くすればいいのよ。私が消えれば丸く収まるでしょ」全部見てた上でそう言われると言葉に詰まる。だが
「簡単に消えるなんて言うなよ。俺は正直どっちも消えてほしくない」
心からの本心だ
「りんのそういう甘いとこ嫌いじゃないよ」
「じゃあ」
「でも今日は帰る。遥のあの言葉を聞いてあの消え方で私と花火できる」
「それは」言葉に詰まり下を向きそうになる。ダメだ未来といる時は下は向かないと誓った。
「じゃあせめて送ってくよ。それならいいだろ」他にできることはないか考えてみてるが何も浮かばない。
「タクシーで帰るのにあんたどうやって家から帰るのよ」確かに。前回なかなかの距離を歩いたでもまた歩けばいいかと思い
「いやまた走って帰るし」これしかない
「私が嫌よ。来てもらって歩かせるなんて」
「じゃあタクシー呼ぶんじゃなくて駅まで送るこれでどうだ?駅ならタクシー沢山いるしここから駅までは徒歩10分かからない距離だから」それならと
「じゃあお願いするわ。駅の場所なんてわかんないから助かる」と今日初めての笑顔をみせてくれる。
「よしじゃあ行こう」
「ちょっと待って」そう言って後ろを向いて袖の下から手を入れてなんかもぞもぞやってる。
「何やってんの?」
「うるさいわね。ちょっと後むいてなさいよ」何か肩から外して引っ張ってる。何やってんだと覗き込むと「後ろむけ」と必殺の鉄拳が飛んでくる。少し目が慣れたのか加減をしてくれたのか交わせた。
「あーもう大きさが合わなくてブラ外したいから向こう向け」恐らく同じ速さで飛んで来た鉄拳だがこれは交わせない。えって思った時には当たってた。
「すーすーするから早くいくわよ」そう言って向かう方向もわからないのに家を出て歩き始める。
「そっちじゃないこっち」と俺が歩き始めると横をついてくる。となりに未来がいる事が嬉しいと思う自分がいる。
(まてよ今ノーブラって事はあのブラウスの下は!)気付かなくていい事に気づいてしまうと意識がどうしてもそっちにいってしまう。
死ぬ程冷たい目線で
「あんた何考えてんの?」
「いや、何も。ほんとに。ほんとに」
「死ね」と言われてその言葉が抜けないくらい刺さる。
それでも手を繋ぎたいなと思い出すと段々その気持ちが大きくなってくる。でも払われたりしたらへこんでしまいそうだし誰か見てたらと考えるとそれも困る。
でもやっぱり繋ぎたいと手を伸ばそうとした。
「あれ?りりん駅に用事?」
おおう、はじめなんてタイミングにでてくるんだよ。
慌てて手を後ろに隠して
「そうそう駅にね。んじゃ」と交わそうとすると
「この子が遥さんの言ってた未来さん。ちっちゃいよねほら僕とそんなに変わらないよ」
と横に並び自分の頭の天辺に手を当ててそれを未来の方にスライドしてみせる。
(あ、未来のがおっきい)手は未来の頭の少し下で止まり自分のとった行動にへこんでいる。
「あんたも遥遥ってやかましいわね」と手を振りかぶる。
危ないと思い伸ばした手はギリギリの所で掴む事が出来た。あ、手繋げた。なんて思ってる場合じゃない。
「落ち着け未来。何をそんなに怒ってるんだ」「このバカ」と真正面から蹴ってくる。これをかわすと駅みたいになるので掴んでた手を引っ張って軌道を変える。
それに更に怒り
「あんた達なんか遥と仲良くしてればいいのよ。もうほっといて」
手を振り払い駅の方に走っていく。
「待てよ」そう言って追いかけるが距離はどんどん離れていく。
結局追いつけないままタクシーに乗り込み行ってしまった。
「なんか僕悪い事しちゃったみたいでごめん」後から追いついたはじめが深々と頭を下げる。
「いいよ今日はなんか機嫌悪いんだ」
「そりゃあの口ぶりだと遥さんに嫉妬してるんじゃないの?」
そうか今日の出来事を遥の中でずっと見ていたんだ。今追いかけてもなんて言ったら良いのかわからない。それよりあの暴力をどうにかしないとな。出来たら同じ学校に通いたいし。
「こっちこそごめんないきなりだからびっくりしたろ」あんなに手がすぐ出るとはほんとどうしたものか。
「かなりびっくりしたよいきなり殴りに来るなんて思いもしなかった。短気というか台風みたいだね」
「本当それ自然災害のがしっくりくる」
「じゃほんとなんだかごめんだけど僕帰るよ。来月はりりんも一緒にテスト行こうね」う、今一番聞きたくないやつ。そうだみんな確か県の統一のテストに行ってるんだ。俺も来月はと言いながらも4月5月と行ってない。「そうだな今の自分がどれくらいなのかは知っとかないとな」遥にとにかくやってみると言われたのを思い出した。
未来はどうするつもりなんだろ。タクシーで帰ってしまったので家にスマホ取りに帰るかな。そうだもう引かないって決めたんだ。今は何を言っても聞いてくれなさそうだしなんて言えば良いかもわからない。だから出来る事をしよう。
あの手をあの蹴りをあの暴力をやめさせない事には一緒の中学にも行けるようにならない。そう誓い俺の知る限り最強に聞いてみようと急いで家に帰った。
父さんも帰っておらず誰もいない。
部屋に入ると未来のために買った団子が残ってる。明日には固くなってしまうので大好きな三色団子を食べてみる。
確かに美味しいのだが何故かいつもより甘くない気がした。
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