第2話 もう一人の自分

あんなに盛り上がった夜なのに終わりはいきなりやってきた。

ピンポーンとチャイムがなり未来が慌てだす

「どどどどうしよう金曜はそういえば家事の人が来てくれる日だった」

慌ててシャツのボタンをとめて荷物をまとめてベットと玄関の間の部屋(さっきご飯食べたとこね)のクローゼットに入れと言われる。

俺としてもこの状態で誰かとは会いたくないのでそれに従う

「いいあの人は必ず来たらトイレとお風呂をまず片付けるからその隙に部屋から出るのよ」

了解と敬礼して「俺明日午前は部活だから終わったらここにくるから」そう伝えると「わかったわでも1つ忠告よ。私が遥って名乗った時は私じゃないからその時は関わらず帰って。これは命令だからね」

(言い方)とツッコミたかったがさっきとは違う意味でドキドキしてるので頷いてクローゼットに隠れた。

アニメなどでよくクローゼットから部屋を見るシーンがあるけど締め切ってしまうと何も見えない。こんな人が入れるほどのクローゼットなのに服は何枚かしか掛かってないから開けられたら絶対みつかるとか掛かってる服少なすぎなど色々考えているとドアが開き人が上がってくる気配がした。カチッっとドアの閉まる音がしたのでこれで入ったで間違いない。ガチャっとドアの開く音がして予想通り横の部屋に入ってドアの閉まる音がした。

今だと思い飛び出し玄関に向かう。靴でバレるじゃんと思ったら玄関にはなくちゃんと扉横の中に入れてあった。ベットに横になっている未来にナイスと親指を立てる仕草をするとこっちに頭を出し言葉には出さずにまたねと伝えて手を振ってくれた。

その光景を最後に俺は部屋を出た。


慌ててエレベーターのスイッチを押すと一瞬で上がってきた。待ってる間に2006と部屋番号を確認した。

意外と冷静と思えたのはここまでで今の時間を調べようと思うとスマホを部屋に落としてしまっていることに気付く。同時にはじめと萩原にも連絡出来ないし家にも連絡できない。もう戻れないから歩くしかないと覚悟したが多分1時間くらいかかるなととぼとぼと歩き始めた。(あーあ)と思い歩いていると何かに背中を押されてる気がして早歩きになり、徐々に小走りになり俺はついに走り出していた。



「りーんーお風呂ー」

一階からお母さんが呼んでいるのが聞こえる。「はーい」と返事を返し階段を駆け降りて脱衣所に入る

学生服を脱ぎながら姿見用の鏡で自分の身体をまじまじとみる。

 女子っぽくない日に焼けた顔や身体。ボールが当たって出来たアザやバットを握って出来たマメを見ながら

(りりんもやっぱりあの女の子女の子してるのがいいのかな)と2人手を繋いで走っていく後ろ姿を思い出していた。

 りりんは澤西りんで私は萩原りん名前が一緒だからそう呼んでいた。でも2年の自己紹介の時かんでしまってそれ以来みんなそう呼ぶようになった。私だけの呼び方にしたかったのに嫌な思い出と一緒になってるからどう思ってるのかなと考える。

問題集も湊と行ったのは夏休み二人で会うって展開を狙ってた。はじめがいるとりりんははじめに聞いちゃうから湊だったのに。

やり場の無い気持ちを頭の中でぐるぐるさせてたらくしゃみが出た。流石に5月でも裸でいるとダメだ。「さぶっ」と寒気がしてLINEの返事が来ない事が気になりながら早くお風呂に入ろうとドアを閉めた。

 バサーっとお湯をかぶり湯船につかり顔を半分くらい沈める。ぶくぶくと自分の息の泡を見つめながら明日あの後何があったか本人に聞こうと思って目をつぶって潜った。




 中々の疲れ具合で家に着いた。「ただいまー」とドアを開けると「何をしていたのかな?こんな時間に連絡もせずに」と間違いなく角の生えてる母親が出迎えてくれた。

あ、これヤバいやつと思ったが何も真実は話せないと思い「まった、確かに連絡しなかったのは悪いと思うでも皆んなでららぽの本屋に問題集見に行くってのは伝えてたはずだ。お金ももらったし。それで皆んなで色々選んでくれたんだけど結局決まらず帰ろうと思うとスマホないし焦ったんだよ。もしかしたら学校に忘れてたらまずいし。で自転車もパンクしてるし遅いから直す事も出来ないし連絡も取れないから走って帰ったらこんな時間なんだって」

「で」と言う言葉に素直に「ごめんなさい」と伝えると「よし。まあどうしても上手くいかない日っていうのは確かにあるからね。気持ち切り替えて。大方前みたいに部室にあるかもしれないから朝練で行ったら探してね」そこまで言うと少し考えるそぶりをして「自転車パンクかー。バスで行って直して乗って帰ってくればいいんじゃない」と言われてそうすると言い「もうさ走ってお腹すいたからご飯にしてお願い」といい仕上がるのにちょっとあるから風呂に行っちゃってという提案に乗りシャワーを浴びに風呂場に向かう。

 台所の時計は21時を少し過ぎていた。

うりゃっと一気に全てを脱いでシャワーを浴びながらさっきあった事を思い返していた。

 家は裕福ではないが普通よりは少しいい家庭だと思ってる。父さんも母さんも正社員で働いてる。父さんは夜勤で今日はもう仕事に行ったのだろう帰ったよって言うのを連絡してるのが聞こえると同時に明日まためちゃ怒られる事を理解した。

それでも今日の経験により怒られるというのもそんなに悪くないと思えた。帰ると誰もいない部屋。想像するだけで背中に冷たいものが走るのがわかった。

 そんで少しいいというのは夜勤と日勤で働いているから家には大体どちらかはいる。

 風呂から出るとご飯が出来てて「いただきます」を言い一気にかき込む。あったかいご飯を食べると未来の事を考えてしまい思わず泣きそうになるがそんなそぶりを母さんに見せたくないので堪えて食べ続けた。

「明日お昼はどうする」と聞かれ

「父さんに怒られてから考えるよ。浅草に行けたら行きたいけど自転車ないと月曜困るからそっち優先にする」と伝え「ごちそうさまでした」と言いテレビをぼんやり見て遅いし少しだけ勉強して寝るわと伝えると自分から勉強するとはいい心がけと褒められた。


 自分の部屋に入り教科書とワークを開いたが今日の事がきになり全く集中出来ない。

 未来の事はもちろんなのだが萩原やはじめとも連絡が取れないのでどうしたものかと思ったが明日朝とにかくスマホは取りに行こうと決めたので早めに寝ようかと時計を見ると23時をさしていたのでもう寝ようと電気を消しベットで横になると部活とマンションからのダッシュで思っていたより疲れていたのか即落ちした。



朝練がある日は6:30に起きるのだが6時に起きてリビングに向かうと「今日は早いねーなんかいい事でもあったのかな」とからかい半分で母親が詰めてくる。「スマホが部室かもだから早めにね」って言うと確かにと頷きパンを焼いてくれる。

(今もあいつ一人で部屋にいんのかな)パンが焼き上がるまでに体操服に着替えていつでも出れるようにした。

パンを食べながらお茶を水筒に入れてたら「そういや自転車ないなら送ろうか?」

と言ってくれたのだがスマホはあの高級マンションにあるんだからいや大丈夫と言っていつもより1時間以上早く家を出た。


 ららぽは新大橋で俺が住んでるとこのすぐ側には大橋中央駅がある。そこから新大橋行きのバスに乗れば近くに行けると考え駅のバス停に歩いて向かう。

親にららぽ集合でここからバスに乗って帰りは家の車って事がたまにあるのでいつもの3番で待っているとすぐにバスが来た。

 降りる場所がよくわからないから急に降りる事になっても困らないよう出口近くの座席に座った。朝のこんな早い時間なので数人の学生が乗ってるくらいでガラガラだ。これがもう少しするか夕方になれば恐ろしい混み方をする。

 15分程走るとタクシーでよったコンビニが見えたのでそこで降りてマンションに向かう事にした。まあ部活は7:20からなんでギリで間に合うかってとこだなと考えてると眼鏡をかけてる未来がコンビニから出て来た。

(なんか感じが違う?)髪が完全に黒く瞳が優しそうに見える。そして胸が妙にボリューミーだ。学生服も昨日と違う。ひょっとして人違い?って考えてると「どうかされました?」未来から話しかけて来た。(これがもしかして遥?いやそんなまさか)とは思うが他に今の現状を説明する方法がないので「知り合いに似てるんだけど未来であってる?」訪ねてみると「確かに私は遥未来ですが遥と呼ばれてまして未来と呼ぶ人は知り合いにはいないですわね」(うーん困った。このままではスマホがとれない)考えた末家の事を伝えてみようと「えーとそこのマンションにスマホ忘れちゃったんで取りに行きたいなーって思ってるだけど助けてもらえないかな?」

「私そこに住んでないですよ?もしかして新手の何かですか?」と怪訝な目つきで見られる。「じゃあ聞くけど昨日の18時ごろ何してた?」しばらく沈黙が流れる。

考えてるがわからないように見える。そりゃそうだよな別人格の自分が誰かとあってるなんて想像つくやつなんていない。

 「知らないひとですよね遥さん。早く行きましょう」突然会話に割って入った女子に遥は連れて行かれてしまった。それならと後姿に俺はここの事も知っているぞと自分の胸をさしてみた。

胸がどうとかよく考えたらさらに怪しい人だと反省した。

 結局ナンパか何かだと思われてしまったようでこりゃ本格的に困った。あの制服はどこだろうかって考えたがわかっても流石に学校で待つ勇気はないな。最早お手上げ状態だ。追いかける事も考えたがもう姿も見えないので部活に行こうと決めバス停に戻った。

タイミング良くバスが来てくれたので飛び乗り大橋中学前で降りて部室に向かう。ギリ間に合ったと感動していたら次の問題はじめと湊、そして萩原の3人に出迎えられた。


「さて説明してもらいましょうか」何度も見てるけど今日ほど萩原の仁王立ちに言葉がないと思った事はない。なんせやましい事ばかりだ。しかも言えない。

「あの子は誰なの?」とはじめに聞かれ「お前いつあんな美人と知り合った?しかも街中で手を繋いで走るとか羨ましすぎるだろ」と湊に攻められる。(ん?ちょっとまてよ)「萩原とはじめはいいだがなんで湊がいるんだよ。彼女の出来たお前には関係ない事だろ」ともっともな意見を伝えると

「俺も昨日ららぽにいたんだよ彼女と」と段々小声になっていく。

「確かによしじゃあ湊は帰って」俺も知りたいとしつこく言ってくる湊を萩原が睨むと少しずつ、少しずつ離れていって体育館に入っていった。

「湊は行ったからじゃあ話してよ」はじめが詰め寄ってくる。(ヤバい全然何も浮かばない)

 一言も発せないままただ時間だけがすぎていく。

 悪いとは思うのだが起こったことは言えない。ここは正直に言えることを伝えると決めて「昨日はほんとすまない。ぶつかって騒ぎになってあんな事になってしまった。俺の頭ではあそこを離れる以外あれを治める方法が思いつかなかったんだ」

「じゃあそれはわかったとしてなんで連絡くれなかったの。あの子と何かあったの?」「そうだよあの後LINE待ってたのに」それはスマホをあの子の家に忘れたからとは言えず「あの子とはあの後駅でわかれた。スマホは落として困ってるんだよなくしちゃって」二人とも疑いの眼差しをあからさまにこっちに向けながら揃って「本当に?」と言い「本当に本当にスマホないから困ってる。じゃ部室調べたいから行くわ。昨日はほんとすまん」と小走りに抜けて部室に向かった。


(当然ないよな)未来の家では一度もスマホを出してないのでもしかしたら部室かもと思ったがやはりない。(100%マンションだわ)これであるとこは確定したがどうやっていくかという最大の問題が残った。

 

「大橋ファイ」と女子ソがグランドで走ってる。見えないはずの萩原の痛いほどの視線を感じながら同じ外周じゃなくてよかったとホッとする。


今日は外周正門からスタートだわと思い向かっていると人だかりが出来てるのが見えた。

「何やってんの」近くにいた隣のクラスの男子に聞いてみると「すっげー美人がいるんだってしかもあの清心女子の子だよ。なんでこんなとこにいるのか」と言ってるところで「あ、やっぱりこの学校でしたね」と近寄ってきて腕に抱きつく。「何用だよ朝知らねーって言ったくせに。てか抱きつくなよ」と手を払うと「いいじゃん減るもんじゃないし」(うおっこれって男のセリフだと思ってた)自分の胸を両手で触りながら「ここの事で話があるって言えばわかるかな」「誤解を招くようなポーズをまずやめろ」ああ昨日に続いて今日も人が溢れてくる。

「朝とは全然感じが違うんだな」

「あの時は学校の子がいたしここの事は誰も知らないから」とさらに胸をむにむにしてる。

(なんなんだこのエロねーちゃんは)

まじでここから連れ出したいけど部活動休みなしは受験の際の数少ないプラスポイントなので点の悪い俺としては休むわけにはいかない。

「悪い部活は休めないから終わってからでいいか?」と言う問いに貴方を見てるわと答え近くを見渡し校庭脇にある椅子に座って手を振った。何故かそれに全力で振り返してる湊がいる。(どっからわいたんだこいつは)

これはまた面倒臭い事になる。その予想は言うまでもなく的中する。


そっからは地獄だった。体育館ではレギュラーメンバーがカッコいいとこ見せたいから物凄く気合を入れてやってるが遥はそっちは全くみないので恨みの視線が最早レーザーのように刺さる。

陸上や野球やサッカーもそれ練習って気合の入りようだ。

 そして最もこまるのは男子ではなく女子で胸になんの覚えがあるのよってよからぬ噂をまた流されてる。しかも最悪な事に昨日ららぽにいた子がいる様で別の女の子と手を繋いで走ってたと噂されている。

外周10周が終わる頃にはここには敵しかいないと思えるほど痛々しい視線に包まれながら部室に行き早々と着替え「じゃっ」と言って逃げるように遥の元へ向かった。

 やましいことなんかないんだから堂々としてよくねって考えたが萩原とはじめが話しているのを見かけてしまい何故かそっとそこを離れる自分がいた。


「さてどうしたものか」と遥に伝えると「ほんとどうしましょう」とこちらも困ってる。

 軽く頬杖をつき俯き加減で考える姿はテレビのワンシーンのようにみえる程で学校のやつが言ってたすげー美人もわかると思った。 

 困っているのは明らかに数人につけられている事だ。話したい事は確実に人がいるとこでは話せる内容ではない。

「考えがひとつあるのでついてきてくださいね」そう言って段々と人通りが多い道路に向かっていく。スマホを操作しながら「次右ね」「はいはい右。うおっ?」

曲がったとたんドンと押し込まれた所にはタクシーが来ておりその横に遥も乗り込む「新大橋のコンビニにお願いします」そう伝えると愛想の悪い運転手は返事する事もなく車を動かし始めた。


「改めて初めましてりんでいいのかな?」

(俺名乗ったっけ)じっと返事を待ちこちらを見ているので「ああそれで大丈夫。そっちは遥でいいのか?」

「大丈夫ですよ」そう言って笑顔を向けてくる。「それであのマンションに何があるんですか?」本当にわからないみたいだ。話すか悩む。未来には遥なら帰れと言われてる。しかしここまできて何も喋らないって言うのは学校まできた遥に失礼だと思い話す事にした。「昨日未来と名乗る女の子に出会って一緒にあのマンションの部屋に行ったんだ。それであの傷を見た。遥って名乗ったら私じゃないって言われてたんだがあそこにスマホを落としてしまってて朝とりに行こうとしたら」「私に会ったと」そうだと伝える。「世の中には理解が出来ませんが現実に起こってることは多々あると思います。それを確かめに一緒に来てくれませんか?」流石に怖いのか声が段々小さくなっていく。それとあわせて俺の手を凄い力で握ってる。「遥がいいなら行こう。俺はきっと何も出来ないけど一緒にいる事くらいは出来るから」そう伝えると「もし怖くて逃げそうになっても手を繋いでてくださいね」と言ったので「これで大丈夫だろ」と握ってる手を硬く結ぶ。「嬉しい。じゃあ行きましょう」そう言ってタクシーを降りた。支払いは?と聞くと「専属を呼んだんで大丈夫ですよ。まとめて払ってるので」

どうやら遥未来はお金持ちなんだなと理解した。


 マンションの入口前で車を停めてくれたのでそこでここの事を説明する。指紋認証と虹彩認証だからこのセキュリティで入れたら絶対と言っていいほど他人ではないと思う。

自分の知らない部屋があってそこに向かうってどんな気分なんだろうかって考えるが俺なんかの頭じゃ役には立たない。だから握った手だけは離さないでいようと強く握ると遥かも握り返して来た。

 入口は昨日と同じでドーンと構えてる。その扉の横にタッチパネルが無機質に光っている。恐る恐る手を伸ばして近づける。

ピッと短い電子音と共に扉が開いた。

明らかに顔色が悪くなってる。学校で見た子とは別人のようだ。

「怖いなら今日はここまででもいいんじゃないか?」一瞬目線が入って来た方のドアに行くが「りんの言う通り記憶にない日があるの。それの答えがここにあるのよね。一人じゃないから大丈夫よ。行きましょう」そう言って前を見る姿はお世辞を抜きにしてカッコいいと思えた。

「未来は次のドアの横の青い光のとこに右目を当ててた」

頷いて光を覗き込む。再びピッと短い電子音がなり扉は開いた。

遥は小さい声でやはりあきますよねと呟く。ちょっとフラッとして躓く。大丈夫かと聞くと「一人じゃダメみたい。引っ張ってもらえる」というので強く引き上げる。

そして立ち上がり前に進み始める。

「後はエレベーターで20階の2006号室だ行こう」ここのエレベーターは認証と繋がってるのか昨日と同じく3台の内の1つはドアをあけている。

乗り込むと凄い速さで登っていく。チンと短い音がして止まり扉が開く。昨日来てるので真っ直ぐ歩き突き当たった部屋。扉の横には2006号室と書いてある。

「ここに黒いカードを挿してた」と伝えると胸ポケットから黒いカードを取り出して挿入するとカチッと扉のあく音がした。

ガチャっと扉を開けると昨日あったゴミの袋が1つも無くなっている。

玄関で靴を脱ぎ二人で部屋に上がる。

最初の部屋には昨日食べたゴミも無くなっているが未来が運んで来てくれた小さなテーブルが残っていた。

そのテーブルに手を置いてみる。今はいない未来の事を思うとまた泣きそうになってる自分がいる事を理解した。その姿を遥は静かに見ていた。

「あれスマホじゃないですか?」遥が指差したとこはベットの脇で充電にさしてあるようで赤い光を発してる。

無言で拾い開いてみると待ち受けに昨日の制服を着て笑顔でピースしてる未来がいた。俺が帰った後に撮って待ち受けにしてんだと思うとその光景を想像してしまい思わず笑えた。

「私にそっくり。少し違うところもあるけどここに入れてるって事がその子と私は同じ証拠なのよね」

「そうなるな。大丈夫か?」と聞くと「ベットで胸を見るなんて何をしていたのー」と鋭い指摘を受ける。誤魔化すと逆に怪しいから正直に「誰かと繋がれば自分が消えないって思ったんだってよ。普通に未遂で終わってるから」と伝えると「じゃあ続きをする?」と瞳を閉じて近づいてくる。唇が重なりそうなくらい近くなったその時

「なーんてね。思ったより大丈夫みたいよ私」とガッツポーズを見せる。

その一言とエロねーちゃんが復活している事に少しの安心を覚えた。

「これが私の記憶にない時の答えなんですね」「他に何かあるかもしれないけど俺が知ってる限りではそうなる」そうまだ出会って一日なので知らない事もあるが入れ替わってる時が記憶にないと考える以外説明できるものが今のところない。

「よし決めました」そう言ってこっちを向き「りんお願いがあります。後1つ私について来てくれませんか?」

「ここまで来たんだから最後まで付き合うよ」そう答えるべきではなかった。遥が告げた先は「よかった先に場所を言ったらヤダって言いそうだから罠にはめました」と笑顔でこっちを見る。「え?ど、どこにいくんだ」の問いの答えは「私と一緒に両親に会ってくださいね」話を聞きたいからと未来の事もわかると思うよと今日一番の悪い笑顔を見せてくれた。

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