いつか消えてしまうかもしれないきみに
玉手箱
第1話 仕方がない
「おいカービンしっかりしろよ」
隣で銃を構えた小柄な男子がこっちをみて叫んでる。遠くから銃を撃ち込まれているのか飛んでいる弾で視界がぼやける。
「大丈夫だリピーターこっちはいけるぜ」
もう1人細長い男子がどでかい銃を携えて駆けつけてきた。
「おせえよG7」とリピーターが背中を叩く。
(これは夢か?)
よくやってるゲームに似ているな。使用してる武器の名前で呼び合ってて俺はカービンだ。
そう思った矢先後ろから人影が走り込んで来て2人を撃って逃げた。
「やばいやばい」そう叫びながらリピーターが倒れ「うわっ」っと一声だけあげてG7がやられる。
「すまねえ俺たちはここまでだ一足先に受験とおさらばするぜ」2人とも親指を立てて倒れていく。
(?何言ってんだこいつら)
よく見ると飛んでいるのは数式や英単語、歴史の年表だったりしてそれが2人には刺さっていた。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り俺は眼を覚ました。
眠い眼をこすりながら起立、礼をこなす。
授業中だったのかと思うけど、どうせ起きてても何もわからないんだから問題ない。
春の日差しと適度に効いてるエアコンの風そして5限の体育で燃え尽きた後での英語の授業は眠りの呪文のように聞こえウトウトしてしまった。
「男子掃除ー」と女子の誰かが言ってるのが聞こえる。
俺は立ち上がり机と椅子を後ろに下げてゴミ当番だったのを思い出したので捨ててくるわーと言って教室をでた。
廊下に出ると夢に出てきてたリピーターことはじめが待っていた。
夢で見た通り身長は150cm程しかなくちっちゃいのだが器は大きいと本人は言ってるがそれを証明するものは今んとこない。
男子としては目が大きく女子からはかわいいと人気はあるのだけど仲の良い女子から言わせると付き合うとかの対象にはならないんだと。
「僕もゴミ当番だから一緒に行こうよ」そう言って隣のクラスから出てきたのでさっき見た夢の話をしながら焼却炉に向かった。
「全然笑えない」とひきつりながら話す。そんな事いってもはじめの成績は学年の半分よりは上なので一般的には普通から良いと呼ばれるところだ。
「りりんはかなりやばいよね。この間の中間5教科で100点なかったでしょ?」
「はじめの言葉が弾のように刺さるわ」そう言って撃たれたふりをしてみせた。
(たしかにそうなんだけど仕方がない。何から勉強すればいいのかわからない。聞くのも今更恥ずかしい。クソ悪いやつが今更何言ってんだよって思われるのも嫌だしな)
俺たちの学年は一番下の階なんで下駄箱は見えてる。あんまり早く戻っても掃除時間なんで精一杯ダラダラ時間をかけて歩いたがすぐに着いた。
上履きから靴に履き替えながら「あーあ明日から休みだけど何するかなー。どうせ体育館使えないから朝から外周して午前で終わりだから帰ったらまたゲームでもして終わりかな」
「おーい受験生勉強わー?」とはじめが言った所で1つ思い出した。
「そういやあ湊(G7ね)彼女出来たってまじ?昨日LINEあってさ。あいつ朝練来てないから聴きそびれてた」
「それ多分本当だよ。僕も本人にはきいてないけど昨日部活終わった後、後輩の子に呼ばれてたのをみたんだ。いいよねー。湊バカだけど部活中はカッコいいからね」笑いながらはじめがそんな奴はこうだよってパンチするふりをしたので俺もだなっといって拳を合わせた。
湊は身長175cmと中学生では大きい方だがこれまた夢で見たように体重は軽いので細長い印象がある。
俺たちは3人とも中1からバスケ部だがレギュラーなのは湊だけでベンチの俺たちは体育館で実践的な練習などはなく外周が殆どで週末も勿論外周だ。
うちの学校は男子はバスケ、女子はバトミントンとソフトボールがまあまあ強い。何年かに一回は全国に行くレベルだ。
「でもまあいつモテたくてバスケ部入ったんだからオーライでしょ」
(女子ってなんかめんどくさいんじゃねって思うんだけどな。まあ湊に彼女が出来ただけで俺には関係ないない事だね)
焼却炉はパチパチと燃えかすが燻ってるような音がしててまるで何か言いたげだ。せっと一声あげてはじめのと共にゴミ箱を突っ込んでひっくり返し中をカラにする。
「今日はこの後どうする?」部活は休むと俺の数少ない名誉、皆勤と部活動は休みなしがダメになってしまうので出る事は前提で
「終わったら」と言いかけた所で
「今日は部活終わったら皆んなで買い物って約束だよね」振り返ると少し怒ってるようにも見える女子が立っている。
ショートカットに元気そうな眼の日に焼けた女の子が腕を組んで立っている。「先週逃げられたから今日は放課後より早く来てよかったよ」
「萩原ちゃん僕はちゃんと覚えてたよ」
(こいつ速攻で裏切りやがった)
仕方なしに「へいへい覚えてますよ。かろうじて。でも湊はふわふわしてて来ても仕方ないだろうし翠は塾だろうから3人でいくか?」
翠はちょっと良い高校を狙ってるから1週間のうち6日は塾だ。
俺も週に2回は塾に行ってるが今んところ成果はない。
「そうだね。湊、彼女出来たんでしょ?さっきふわふわしてるの見かけたから今勉強の話しても頭に入らないだろうからね」萩原はそう言って何故かこっちをみてる。
(ん?なんか怒らせる事したか俺)
ここには居ないが翠と萩原、はじめと湊は保育園から一緒で何かとよく一緒にいる。皆んなといっても主に萩原がありがたい事に勉強の出来ない俺に問題集を一緒に見てくれるとの事なのだが素直に喜べない。
特に成績的には俺と湊はそう変わらないが萩原もはじめも全然いいので俺たちで行ってもこの2人の選ぶのなんて正直難しいと思って逃げる予定だった。
「じゃ部活終わったらどこ集合?女子ソ(ソフトボールね)は今日は?」
「私達は今日グラウンド使えるから終わってトンボかけるからそっちより遅くなると思うの。だから先言っててよ。ただ待ってると帰りたくなるでしょ」
痛いところをついてくる。
「今日は僕もいるから必ず連れて行ってるから安心してよね」はじめが胸をはってみせる。はじめは真っ直ぐに萩原をみてる
「そうだね先週は私とりりんと湊で行こうとしてたら2人していなくなってたからね」
「僕もちゃんとよんでよね」
寂しいじゃんと小さく言うのが聞こえた
「じゃ先行ってから」そう言って萩原とは別れた。
掃除時間も終わり教室に戻ると先生が入ってきてた。
上島幸子先生。歳は30は超えてるとみんな予想してる。まだ結婚はしてなくて本人はしたいと思ってるんだと思う。そんな話をしたりはしないけどなんとなくそんな感じがする。歳は内緒だそうだ。
終わりの会はいつものように受験生らしい週末をと言うのと期末まで後一月だから提出物等そろそろ手をつけていってくださいとの事だ。まあいつものように答えを丸写せば素早く終わると考えている。
いつものチャイムが鳴り今日の授業の終わりをつげ新たに部活の始まりを合図した。
外に出るとじゃ後でとはじめが部室に向かう。俺はいつも体操服ですごしてるので部室によることもないので外周にでる専用の門に真っ直ぐむかう。正門かこの裏門かの2択で他の部との兼ね合いでスタート位置が決まっている。
はじめが来るまで部の数人と湊の話をする。どうやら1つ下の女バスの子みたいだが全然顔は浮かばなかった。
はじめがやってきて部活が終わったら湊に質問攻めだーと盛り上がっていたが今日は部活には出ずに帰ってた。
大方デートでもしてるんでしょとはじめが言ってる。
結局2人でダラダラと走り込んで1時間ほどで終わった。夏休みにある大会が終わればいよいよ引退だなと思いながらその先の受験をみてしまい忘れるかのように頭を左右にふる。
今度は着替えないとまずいので部室に行く。ボールが散乱してる中自分の場所を作る。個人専用のロッカーはレギュラーしかないのでカバンから着替えを取り出しさっさと着替える
「んじゃ着替えたしいくか」
「今日は一緒だから前みたいに逃げないでよ。その後残された僕が大変になっちゃうからね」と言われ確かにと頷いて自転車置き場に歩いて向かった。
途中数人におつーや先輩お疲れ様です、夏の大会頑張ってくださいと言う言葉をききながら歩いてるとふとこの学校に来るのもあと少しなんだなという実感が湧いた。
俺の住んでる街は駅前だけに商業施設が集まっており大概のものはここですむ。ららぽと呼ばれスポーツ用品店や服、後は映画をみたりラウンドワンやヨーカドー 、フードコートで食べる物もあるし大助かりだ。週末には駐車場がうまり渋滞になったりする程の盛況ぶりだ。まあ今日は本屋でしかも問題集というもはや未知の生物との出会いなんだけどな。
自転車を停める。入り口は一度2階に上がらないといけないからエスカレーターであがり中に入るとちょうど部活終わりの人で溢れていた。
「本屋は一番奥だから萩原ちゃんより先に行ってようよ」
はじめがそう言って歩き出したから後ろをついていく。
流行りの耳障りのいい歌がインストで流れているのが聞こえる。
ここの2階は駅からも繋がっていてまずレストランが並んでいる。まもなく18時になろうかという時間なので賑やかになってきている。そこを超えるとスポーツ用品店があるのだがここの下にお団子の美味しいお店があるのでこれを乗り切ったご褒美に買って帰ろうと思い一声かけて階段を降りた。
はじめも流石にここまで来て逃げたりはしないと思ってくれたのかすれ違ったら悪いから先に行ってると本屋に向かっていった。
俺は甘いものがかなり好きで食べるのも作るのも好きだ。将来働くならパティシエや和菓子職人を目指そうと思ってる。
手を上げて了解を伝え階段に差し掛かった所でドンっと何かがぶつかってきた。
横から俺を抜いて駆け抜けようとしたのかかなりのスピードで突っ込んできたのは女の子だった。
「ジャマ」
同じ歳くらいで背は低め、ふわっとした赤みがかった長い髪、大きいけどキツそうな眼が印象的で今まで俺が出会った中で一番美人と言っても過言ではないほどの女の子だ。
(にしても口悪りーな)
そう思ったが関わってもめんどくさそうなので一歩下がった。
「あんたずっと下向いてるわね。それ楽しい?」
(なんだこいつ)
「別に楽しかないよでもあんたにはわからんと思うしもう行けよ」
「嫌よ。ぶつかったんだからゴメンくらい言ったら?」「はぁ?ぶつかったんはそっちだろ」そう言ったあたりで周りが騒ついている事に気づく。喧嘩?男と女が口論してる。あれ大橋中の制服じゃない?女の子は瑞穂じゃない?ザワザワと色んな憶測の話が飛び交う
(ほんと暇な奴らは噂が好きだな)
このままじゃ騒ぎになると思い「悪かった。ここには連れと来てんだ。俺がなんかなるのはいいけどここで騒がれるとそいつらに迷惑がかかるからこれで引いてもらえないか」
そう伝えると「わかったわ。そのかわりちょっとついてきてよ」
「今日はまずい約束が」と言ったあたりで下から凄いはやさで蹴り上げてきた。「早く行くわよ」そうはいうもののスカートで蹴り上げるもんだからうっかり白いものが見えてしまい「バカやろう、スカートで蹴りあげると見えるだろうが」(あっやべえ)そう思ったが自分でも顔が熱くなるのがわかる。あたふたとして女の子を正面から見れない。そのこもスカートを押さえながら赤い顔で「みた?」と聞いてきた。「白いもの以外は何も見てない」
(何言ってんだ俺は)
「しっかり見てるじゃないの」と真っ赤になって今度は水平に蹴りが飛んできた。掴めそうだがそんな事するとさらに収集がつかなくなりそうだと思い一歩下がってかわすと一回転してそのまま倒れた。人もかなり集まってきて遠くにはじめと萩原もいるのが見える。
倒れたのを起こそうと手を差し出すと「行くわよ」とその手を掴んで走り出した。考える時間もなくもうその子について行くより他にこの場をおさめる方法が思いつかなかった。
(すまん2人ともこのままだと騒ぎになりそうだから後でLINEする)と心で謝罪し走り出した。
手を引っ張られながら駅の方に向かって走った。レストランのあたりまで来ると人も物凄くいてもう目立たない。
「ここまでくればもういいだろ?今日は本屋に予定があったけどもう行けないだろうから俺は帰るよ」
「ダメよここまできたら最後まで付き合いなさいよ」
そう言って駅の下にあるバス停の方に引っ張っていかれる。(ちっちゃいけどかなりな力だな)
そしてバスに乗るのかと思うとタクシーに乗り早くと言わんばかりに隣の席を叩いている。
こりゃもう帰れそうにはないので仕方なしになる事にした。
退屈な日常も蹴り飛ばしてくれそうな何かを期待している自分がいるのが珍しく思えて少し笑えた。
運転手に「ここに行って」と伝えてタクシーは動き出した。金曜の夜だからか少し道が混んでる。俺は何を話すやらと考え女の子も喋らないので沈黙と時間だけが流れる。すぐには着かないみたいで助手席の後ろについてるテレビが一人で喋ってる。「あ、ちょっとそこよって」とコンビニを指差して車を停めてもらうと「あんたもなんか食べるでしょ今日はあたしがおごってあげるから好きなのを選んでいいわよ」と胸を張っている。全然状況が把握出来ない中お茶とおにぎりを買ってもらう。「こんだけでいいの?遠慮しなくていいのよ」そう言ってくれるのはありがたいが「家に晩御飯あるからそんなに食って帰って残すと悪いだろ」と伝えるとそれが普通よねといって寂しげな顔をした。
コンビニには新大橋と書いてあるのを確認した。この辺は家の近くとは言えず歩いて行くって距離ではない。がまあ歩けない事もないので帰りはなんとかなりそうだ。タクシーに戻ると待ってくれてる間も料金がかさみすでに2000円を超えている。
そこからはそんなに時間はかからなかったが結局着いた時には3000円近くになっていた。
ポケットからカードを出しこれでと伝えるとあっという間に支払いが終わった。
俺が持ってるPASMOとはえらい違いのカードだな。
降りてからは何も話さずデカいマンションに入っていく「ここってお前ん家か?こんな時間に女の子の家には上がれないぞ」そう伝えると誰もいないからと小さくつぶやく。
(誰もいないってどう言う事だ?)
エントランスは広く煌びやかで去年の夏に家族で出かけたホテル並みの入り口だ。
その先にある端末に手のひらを当てると自動ドアが開いた「おおカッケーな指紋認証?」とはしゃぐ俺を横目に次のドアの横にある端末に瞳を近づける。ピッと言う音と共に扉が開いた「も、もしかして虹彩認証」「あーもう恥ずかしいから早くきて」と開いたエレベーターに乗せられた。
20階を押しドアを閉めるとあっという間に登っていく。ここは高級住宅地だと誰かに聞いた気がする。セキュリティも万全だ。
チーンと止まってドアが開く。ガサガサとコンビニの袋の音が響く中真っ直ぐ突き当たった所で胸からカードを出して扉を開けた。
何も喋らずこっちと顎で合図して中に入ると自動で奥まで電気がついた。
所々ゴミの袋がまとめられており奥にベットがみえる。が他は何も見当たらない。テレビもなければお帰りの声もない。上手く表現出来ないけど温度のない部屋ってイメージだ。ドサっと置いた荷物の音が奥で響いている。
靴を脱いでドカドカ歩いてベットのある部屋の隣でコンビニのサンドイッチを取り出していた「正直誰かと食べるのっていつ以来か思い出せないわね」そう言って少し嬉しそうに袋を開けている。(ここはなんなんだ中学生が一人でこんなとこにすんでんのか?)あ、確かあそこにと呟いて部屋の端に行きうんしょうんしょと小声で言いながら部屋の隅っこから小さなテーブルを引っ張って運んできた。「ここに来て腹立つ事ばっかりでいらないもの隅に寄せてたからこれももしかしたら初めて使うかも」そしてまた少し嬉しそうに言う。
言うか悩んだんだが言ってみることにした。正直色んなものを仕方がないで片付けてる俺としては非常に珍しい事だ。
「なんて言うか俺はお前の事何もわからないけどこれっていいのか?父さんに言われてもいまいちわからなかったけど温かいご飯があるってのはいい事だって言われた事今ならそれ少しわかるきがする」
そこまで言うと「そのお父さんは正しいわよ。きっと」そう言うと大きく息を吸い込んで「バカやろー」と大声で女の子が叫んだ。
「おいそりゃやかましいだろ」と言いかけた所で「ここ防音凄いから絶対よそには聞こえないよ。そういう所を選んでもらったんだから」と言って続けて「ごちゃごちゃ人の事言ってんじゃないわよ」あーもう腹立つと息巻いてる。俺はそれを見て少し笑い「勉強みてあげるなんて余計なお世話だー」と一緒に叫んでやる。こっちをみて少し笑いながら「私遥未来(はるかみらい)凄い名前でしょ」と目の下を指でなぞってる。(泣いてる?)と一瞬思ったけど「澤西りんだ」そう言って立ち上がる「彼女が出来たってうらやましいに決まってるだろー」と大声で叫ぶと「私じゃない私ってだれよー」と未来も叫んでいる。
いつのまにか二人とも立ち上がり思う事を叫んだ。
30分くらいお互い叫び続けてコンビニで買ったお茶を一気に飲み干した。
俺は殆ど勉強や受験、湊の彼女の話が殆どだ。どれも関係ないや仕方ないで済ませてきたものばかりだ。
未来はリンゴジュースを一気に飲む。こそこそ話すやつは嫌いみたいでららぽでの人や学校、後はよくわからない事を叫んでいた。「あースッキリした」そう言って仰向けに寝転がる。
急にガバッと起き上がったかと思うと「もうお互い知らない中じゃないんだからあっちいこっか」そう言ってベットの方に歩き出した。
(ついに覚悟を決める時が来た)
いつかはこんな日が来るとは思っていたけどそれが今日かと考えながら足は未来を追いかけている。
覚悟したかのようにベットの上に立ちこっちを見つめて「1つ見て欲しいものがあるんだ」そう言ってシャツのボタンを上から外していく。心臓の音が未来に聞こえるんじゃないかと思うぐらい早く大きくなっている。
数個のボタンを外すだけなのに何時間も待ってるようなほんの一瞬の様な奇妙な感覚に包まれる。
脱いだシャツを下に落とし俺の右手をそっと左の胸に当てる。
月明かりに照らされてるせいか青白く見える肌。そしてそこにはとても大きな傷がありそれのせいか生きてないかのような感じを錯覚させ言葉を失った。
「えへへびっくりした?見せたいものってこれなんだ。私が叫んでることほんとわからなかったでしょ?10歳の時に事故にあってね1年くらい目醒めなかったんだって。そして早い時で半年長くても一年に一回は手術に行っててもう目覚めないかもとか明日が来ないかもとか失敗したら死んじゃうとか思っていると怖くてもう一人の私が生まれちゃったんだー。あったことは当然ないんだけどそっちは勉強出来てしっかりしてるみたいで家族と暮らしてるんだけど私は馴染めないし口悪いし手も出ちゃうからここに住んでるんだ」
そう言って下を向き涙を流してる。
俺は下に落ちたシャツを拾ってかけてやる
「胸を張れよ」そう言って意味はないけど俺も胸を張る。「そんな怖い思いの中未来は一人で戦ってんだろ。すげーじゃねーか。俺なんか逃げてばっかりだ。初めて会った時に俺に言ったじゃないか下をみてばかりで楽しいって。それは俺みたいなやつがする事でお前は下を向いてちゃダメだ。お前のやってる事は間違いなくすげー」そう言うと指に力が入り胸を揉む感じになる。
「何してんのよー」真っ赤になって鉄拳が飛んできた。見事にみぞおちに入る。狙ったわけではなく身長差とベットのせいでその高さなんだろう。
一瞬やってしまったって顔になり恥ずかしそうに笑って「私焦ってるんだと思う。明日目覚めないかもしれないし眼が覚めても自分じゃないかもしれないし。だから誰かと繋がってみたかったの。そうしたら消えないんじゃないかと思って」未来は精一杯の勇気を出してこの作戦を実行にうつしたんだと思う。そして本当に伝えたかった事が言え緊張の糸が切れたのかその場にへたり込んだ
「ばっかじゃねーの。そんな大事なもの一瞬で築けるわけないだろ。色々あってその先にあるものをいきなり答えだけ求めても重たすぎるわ」中々正直痛かったがなんともないを意識した感じで立ち上がってみせる
「俺はもう下は向かない。だから未来も向くな。そしていつか消えるっていうんなら最後まで俺がみていてやるだから」へたり込んでる前に手を差し出す。「そこから始めるでどうだ?」
涙でぐしゃぐしゃになってるかおを無理矢理笑顔にする。
「うん」
なんとかその言葉だけしぼりだし俺の手を掴む。あの時の青白い肌が嘘のように今は確かにここにいる事をその温かさで俺に伝えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます