第32話 帰郷


〜〜マワル視点〜〜


 俺は女王様に村へ帰ることを伝えた。


「急ぐこともなかろう。そなたらには勲章も用意しておる。王都の復興が落ち着いたら、授与するゆえ、それまで城でゆっくりせよ」


「あーー。そうもいかないんですよ。ダークドラゴンが起こした嵐は村にも影響が出ています。きっとみんな引っ越しの準備をしてるんじゃないですかね」


「なるほど。ご両親がどこか遠い場所に移っては厄介だな」


「ですね。村に報告したらまた帰って来ますから」


「うむ。では旅の資金を提供しよう」


「いえ、特に必要ありません。歩けば半日で帰れますし」


「そうもいかぬ。英雄を手ぶらで帰郷させては余の名折れだ」


 そう言って1000万エーンを渡された。


 おいおいマジかよ。

 旅の資金どころじゃないぞ。

 世界一周できちまう。


「あ、あのぅ……。いくら王都を救った報酬といっても、これは貰い過ぎでは?」


「何を言う! こんなのは旅の資金に過ぎんぞ! そなたの偉業は後世まで伝えられる伝説なのだからな。帰って来たら正式な報酬を渡すつもりだ」


 ま、まだくれんのかよ。


「あは! マワルさん凄いです!!」


 やれやれ。女王様の熱量が凄いから断れそうにないな。

 もらっておくか。


「では馬車と、護衛を用意する」


 いやいやいやいや。


「待ってください! そこまでは本当に大丈夫です。そ、それに、俺に人を付けるくらいなら王都の復興に向けてくださいよ」


「おおお。な、なんと殊勝な!! 私は感動したぞ!!」


 うーーん。

 なんか俺を見る目が益々熱くなった感じだな。

 護衛なんか付けられたら気を使っちゃうよ。


 俺達は女王の申し出を断って城から出た。


「女王様って美人ですよね……」


 アイアはポツリと言う。


 なんだろう? 

 なんか不服そうだぞ?


「王都民のことを常に考えてくれてるしな。頼りになる方だよな」


「…………」


「な、なんだよ? 俺なんか変なこと言ったか?」


「あの人……。ちょーーと、マワルさんを見る目がなぁ…………」


「なに? どういう意味だ??」


「なんでもありません」


 プニ!


 突然襲う柔らかい感触。


 アイアは俺の腕を抱き、そこに大きな胸が当たっていた。


「お、おいおい! 急になんだよ」


「な、なんでもないですけど……。マワルさんは……。き、綺麗な人は好きですか?」


「は? 女王様のことを言ってんのか??」


「べ、別にそうじゃないですけどぉ……」


「綺麗な人だとは思うけど、恋愛感情なんてないぞ??」


 俺、なに言ってんだ?

 一介の冒険者が女王様を好きになるなんて訳がわからん。


 アイアは安心したように笑うと、更に強く腕を抱いた。

 プニプニと大きな胸の感触が俺を襲う。


「お、おいおい……」


「二へヘ〜〜。ちょっと安心しました」


 なにが!?

 女はわからんなぁ。


 しばらくして気がつく。


「そうだ! 新しいスキルがあれば村まで直ぐに着くんだった」


 ダークドラゴンを倒した時にレベルアップして、その時に覚えたスキルがあった。

  

 事前にヴァンスレイブから教えてもらっていたんだよな。


 俺はブーメランを回した。



「モドリ村まで、移動回転テレポスピン!」



 何も無い空間に人が1人通れるほどの穴が開いた。


「このスキルは一度行ったことのある場所に直ぐに行ける優れ技なんだ。ここを通ればモドリ村さ」


「あは! マワルさん。なんでもできちゃうんですね! 凄いです!!」


「んじゃ行こう」


 アイアはポツリと呟いた。


「私は……。ゆっくり村まで旅するのも良かったですけどね……。その方がマワルさんと2人きりだしな」


「なんか言った?」


「あはは。なんでもないです」



 その穴を潜ると、目の前は村の入り口になっていた。



ーーモドリ村ーー



 村人は荷物の整理でてんてこまい。

 家の前に荷車を置いて家具や食料を乗せる。

 みんなダークドラゴンの脅威に怯えていたのだ。

 

 昨日に起こった王都の事件。終結の情報が、この村に到達するにはもう1日かかるだろう。


 鎖鎌を腰にぶらさげたナガイさんは大きな箱を持ちながら話した。


「マワル! 無事でなによりだ! お前ん家も引っ越しの準備で大変だからさ、早く手伝ってやれよ!」


 詳しく話してやりたいけど、1人ずつに話すのは大変だな。


「ナガイさん。ダークドラゴンについて伝えたいことがあるからさ。村のみんなを集めてよ」


 彼は、俺が王都から最新の情報を仕入れたと思い込んで目を光らせた。

 なにせ、引っ越し先を決めるのはダークドラゴンの動向しだいなのだ。


 さて、ナガイさんがみんなを集めてくれている間に実家に帰ってみますか。


 母さんは俺を見るや、抱きついた。


「マワル!!」


 良かった。母さんも父さんも無事みたいだ。

 ダークドラゴンが起こした嵐の被害はそんなにないみたいだな。

 実家の外観は異常なし。問題は荷車に乗せられた積荷だけか。


 父さんは険しい顔つきになった。


「マワル!! もう冒険者なんか辞めろ!! 危険が大きすぎる!!」 


 俺がアイアと顔を見合わせていると、矢継ぎ早に話す。


「その子は仲間か? 悪いが持て成している時間はないんだ。さぁ引っ越しの手伝いをしろ!! 新しい土地で暮らすんだ!!」


「あーーえーーと……。詳しくは後で話すんだけどさ。もう引っ越しはしなくていいよ」


 父親の怒号が響く。


「バカもん!! 一体どこをほっつき歩いていたんだ!! 今、世間はダークドラゴンの対応で忙しいんだぞ!! そんなことも知らんのか!!」


「勿論、知ってるって」


「だったら引っ越しの準備をしろ! まさか、まだ冒険者を続けるなんて言いに来たんじゃないだろうな? 父さんは反対だぞ!! 最弱武器のブーメランで何ができるというんだ、まったく」


 母さんは俺の手を握った。


「私も反対。冒険者は剣や槍、斧、弓が主流でしょ? ブーメランだけなんて危ないわよ。冒険者だけが人生じゃないんだから、落ち着いた場所に引っ越しして平和に暮らしましょうよ。ね」


 やれやれ。 

 困った親だな。

 きっと、少し話した程度では理解してくれないだろう。


 丁度、ナガイさんが村のみんなを引き連れて家にやって来た。


 父さんと母さんは首を傾げる。


「マワル。村のみんなを集めてどうしようというのだ?」


 ふふ……。

 さて、詳細を語ろうか。





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現在の状況【読み飛ばしてもストーリーに影響はありません】




名前:マワル・ヤイバーン。


冒険者等級:E級。


守護武器:漆黒の飛刃。


武器名:ヴァンスレイブ。


レベル:11。


取得スキル:

戻るリターン

双刃ダブルブーメラン

回転遅延スピンスロウ

絶対命中ストライクヒット

回転防御スピンディフェンス

回転飛行ブーメランサルト

飛刃の大群ブーメランホード

凄威回転斬マイトスラッシュ。 

移動回転テレポスピン。NEW 


アイテム:薬草。図鑑。


昇級テスト必須アイテム:

白い角。黒い牙。緑の甲羅。



所持金:1千6万1千エーン。NEW



仲間:

僧侶アイア・ボールガルド。

オバケ袋のブクブク。

ダークドラゴン。

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