第25話 多勢に無勢。そして絶望

〜〜マワル視点〜〜


 俺はダークドラゴンにブーメランを投げ続けていた。


 奴の攻撃を掻い潜り、 回転飛行ブーメランサルトを使って頭部に飛ぶ。


「よぉし。10メートルに入った!  絶対命中ストライクヒット!!」


 今度は眼球だ。



コンッ!!



 ありゃッ!?



「目ん玉も硬いのかよぉお!!」



 何度も攻撃するが、全く通用しない。

 ブーメランは刺さることなく簡単に弾かれるだけ。


 俺は 双刃ダブルブーメランを使ってブーメランを2つにし、1つを 回転飛行ブーメランサルト。もう1つを 絶対命中ストライクヒットに割り当てていた。


 さぁて、困ったぞ。

 ダークドラゴンの攻撃は当たらないけど、俺の攻撃が通用しない。


「スキルでも使ってんのかな? あいつ硬すぎなんだけど」


『相手の魔力量が多すぎるのだ! 奴の体から溢れ出る魔力で我のブーメランが弾かれている』


「なんじゃそりゃ!? そんなのどうしようもねーーじゃんかよ」


 ダークドラゴンは王都を破壊しようと黒い炎を吐いた。





ボワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!




 おいおい、俺はこっちだっての!!



 急いで炎の先へと移動する。



回転防御スピンディフェンス!!」



 炎はブーメランの回転によって消滅した。



「こんにゃろう!! 俺が倒せないからって王都を破壊しようとすんなぁ!!」


『ふん……。いまいましい小童よ。虫けらの存在で粋がるなよ』


 ダークドラゴンはニヤリと笑うと、大きな口を開けた。

 その中から真っ黒い球体がいくつも排出される。

 それは羽を広げ、四肢を伸ばして5メートルの小型のダークドラゴンになった。


「げっ!?」


 小さい竜が増えやがった。


『フハハ! 飛刃使いよ! 小竜の攻撃は全部防げるかな? 貴様を絶望の淵に落としてやろう!!』


 小竜達は散り散りに飛び発って王都中に入った。


 これは厄介だぞ。

 敵の数が増えちまった。


 

 ダークドラゴンは中央広場に立つと剣聖ブレイズニュートの石像を見つめる。



『300年前は、この剣聖ともう1人、女の大賢者にやられたな。あの時は2対1だった』



 大きな尻尾を振る。


 まさか壊す気か!?

 そ、その石像は、俺の大切な目標なんだ!!



「やめろーーーー!!」


 

 止めようとする俺に1匹の小竜が襲いかかる。



『ギエェエエエッ!!』


 

 くっ! 邪魔すんなぁ!!



絶対命中ストライクヒット!!」



 ブーメランは小竜の眉間に刺さった。



グサッ!!



『グエ!!』


 絶命した小竜はそのまま落下。


 どうやらブーメランは刺さるみたいだな。

 小竜なら倒せる。

 

 しかし、遅れてしまった。




バゴォオオオオオオオオン!!




 ダークドラゴンの尻尾は石像を粉々に破壊した。



『グハハ!! 我は進化したのだ!! 小竜を使って王都を滅ぼしてやる。この石像のようになぁ!!』



 くそぉ……。

 大好きだった剣聖の石像がボロボロだぁ……。



『主! 感傷に浸っている場合ではないぞ。小竜が人々を襲っている!!』


 

 俺はダークドラゴンを睨んだ。





「お前は絶対、許さない!!」





 奴は大声で笑った。




『ダハハーーッ!! どう許さんと言うのだぁあ? ちっぽけな飛刃使いよぉお。小竜は100匹もいるのだぞ? ほぉら、お前が動かねばみんが死ぬぞぉお?』



 こんにゃろぉおお!!


 

 でも怒ってばかりじゃダメだ。

 まずは冷静に小竜をやっつけるんだ。


 

絶対命中ストライクヒット!」 「 双刃ダブルブーメラン!!」



 俺の攻撃は次々に小竜を倒す。

 しかし一向に数が減らない。

 ダークドラゴンは更に笑った。



『グハハーーッ!! どれだけ体力が保つのだ? 疲れ切った時がお前の最後だぁ!!』



 もう30匹は倒したか?

 


「ハァ……ハァ……。ま、まだ半分以上いやがるぜ」


『ダーーハッハッ!! 飛刃使いの小童よぉお。もう肩で息をしているぞぉおおお!! もう終わりが近づいて来たなぁああああ!!』


「ハァ……ハァ……。残り70体くらい……ま、まだやれるっつーーの」


『グフフ強がりよって。ならば、こんな趣向はどうだぁああ?』


 

 奴は小竜を吐いた。その数30体。



『グワァッハッハッハッ!! 常に100体ににできるんだよぉおおおおおお!! 我のスキルでなぁああああああああああ!!』



 ドラゴンの嘲笑は王都に響く。





『ギャハハ!! 終わったなぁ飛刃使いぃいいい!! 絶望しかないなぁあああああああ!! 敵の数は減らないんだからなぁああああああああああああああ!! ギャハハハーー!!』




 ハァ……ハァ……。

 なるほどな。減らないのか……。



 俺は両手をゆっくりと上げた。それはバンザイのポーズ。



『おいおい、なんだそれはぁ?? 降参の合図かぁあああ?? お前さっき、我のこと許さないとかなんとか言ってなかったかぁ?? とか豪語してたよなぁああ? それなのに降参かぁあああ? ギャハハハハハーー!!』



 俺は眉を上げた。

 その顔はスッキリとして清々しい。







「あんがとな」








 その言葉にダークドラゴンは首を傾げる。



『は? 気でも触れたか?? プクク……恐怖のあまり気でも狂ったかぁ??』



「んな訳ねぇだろ。感謝の気持ちを素直に述べただけなんだからよ」



『は? どういう意味だ??』



 俺の口角は上がる。

 それと同時、俺の周囲にはいくつもの球体が現れた。それは淡い光を放ち、その中にはブーメランが見える。



「お前が敵を増やしてくれたおかげでさ……。さっき、レベルが上がったんだ」


『な、なにぃいい!?』


「その力……。見せてやるよ」



 俺は上げていた手を真横に振り下ろした。

 その動作に連動して無数のブーメランが飛び立つ。

 まるで渡鳥が拡散するように。









「  飛刃の大群ブーメランホード!! 」








 

 飛び立ったブーメランは100匹の小竜に命中した。





ズザザザザザザザザザザザザザザザザザシュンッ!!





 その全てが絶命し、地に伏せる。




『なにぃいいいいいいい!? こ、小竜が全滅だとぉおおおおおおお!?』



 ヴァンスレイブの歓喜の声。



『主! 今の100匹の殲滅で、またレベルが上がったぞ!!』


「そうか。そりゃあ、もう一回お礼を言っておかねぇとな」


 俺は不敵な笑みを浮かべた。







「あんがとな。おかげでさ。俺は益々強くなったよ」





 


 心の底から後悔する叫び声が王都に響いた。




『なんだとぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?』




 おおっと、忘れるとこだった。これもキチンと言っておかねぇとな。






ってのは確定だかんな」







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現在の状況【読み飛ばしてもストーリーに影響はありません】




名前:マワル・ヤイバーン。


冒険者等級:E級。


守護武器:ブーメラン。


武器名:ヴァンスレイブ。


レベル:10。NEW


取得スキル:

戻るリターン

双刃ダブルブーメラン

回転遅延スピンスロウ

絶対命中ストライクヒット

回転防御スピンディフェンス

回転飛行ブーメランサルト

飛刃の大群ブーメランホード。NEW

?????   NEW



アイテム:薬草。図鑑。


昇級テスト必須アイテム:

白い角。黒い牙。緑の甲羅。



所持金:6万1千エーン。



仲間:僧侶アイア・ボールガルド。

オバケ袋のブクブク。

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