第22話 ケンゼランドの策略
〜〜ケンゼランド視点〜〜
ダークドラゴンが王都に向かった直後の話。
俺達は絶望していた。
ダークドラゴンの復活に成す術がなかったのである。
槍を守護武器とする眼帯の男、ヤーリーは泣き叫ぶ。
「うえぇええええええええん!! 俺は解放の呪文なんか読む気はなかったんだぁ〜〜。あいつに操られただけなんだぁ〜〜!!」
彼はダークドラゴンの化身に操られカイジョルの聖典を持って解放の呪文を読んだ。
「こんな聖典!!」
そう言って手に持った聖典を投げようとする。
そういえばヤーリーはカイジョルの聖典を持っていたんだ。
これは使えるかもしれんぞ。
「待てヤーリー! 捨てるな!!」
「だってよぉ……。うう……。こんな本があるからよぉ。ダークドラゴンが復活しちまったじゃねぇか」
……確かにそうかもしれんが、もしかしたら。
「その聖典のおかげで俺達は殺されなかったのかもしれんぞ」
私はドラゴンによって薙ぎ倒された木々を見て確信する。
奴は聖典を持つ私達に手出しができなかったんだ。
これだけ荒らされたというのに、私達だけが無事なんだからな。
そう考えるのが順当だろうよ。
となると、ダークドラゴンは聖典の力を恐れているのか。
これを使えば、またドラゴンを封印できるかもしれんぞ。
……そうなると、これはもしかすると好機かもしれん。
私が聖典を見るとそこには白紙のページが並ぶ。
「な、何も書いていないぞ!?」
「は? 何言ってんだ? 沢山の文字が書いてあるじゃないか?」
……聖典は選ばれた者しか使えないという話を聞いたことがある。
「ほらほら。難しい文字が書いてんだろうが」
「……いや、見えん」
どうやらヤーリーにしかこの文字は見えないらしいな。
そうなると使えるのはヤーリーだけか。
……よぉし。いい考えが浮かんだぞ。
「ヤーリー。私達は親友だったな」
「だったらなんだよ? 一緒に死んでくれとか言うなよな!」
「私はお前のブレインになる」
「なんの話だ?」
「その聖典を使って一発逆転を狙うんだよ」
ヤーリーは首を傾げた。
丁寧に説明してやろうか。
「その聖典でダークドラゴンを封印するのだ」
「なんだと!? いや……しかし。ダークドラゴンに近づけば殺されてしまうぞ」
「それはないな。ダークドラゴンは聖典に手が出せないんだ。その証拠に俺達は生きている」
「つまり、この聖典に護られたってことかよ?」
「おそらくな。それで、その聖典を使って国王に交渉するんだ」
「げっ!? マ、マジかよ!? い、一体どんな交渉をするんだ?」
……それが大きな問題なんだ。
ダークドラゴンの封印を解いて、また封印したんじゃ単なる迷惑行為にすぎん。
私達の罪は免れないだろう。
国王に恩赦を頼んだ所で爵位剥奪は免れん。
ならば……。
「いっそ国を乗っ取るか」
「何ィイイイイ!?」
「考えてもみろよ。このままいけば国が滅ぶ。国王にバレれば爵位剥奪だぞ」
「……た、確かに。な、なら! こっそり封印すればいいじゃないか!!」
「おいおい。せっかく聖典という強い力を手に入れたんだぞ? この力をミスミス逃すのか!?」
「う、うーーん」
「お前ん所のランサーゴ家は士爵だろう? 将来、男爵にでもなれる可能性はあるのか?」
「いや……。今は泰平の時代だ。爵位が上がるなんて、天と地が逆さまになってもありえん」
「そうだろうよ。私だってそうだ。男爵のソードル家が公爵になんかなれんからな。それに6男の私は家督にもなれん。しがない冒険者で終わりさ」
「…………」
「これはチャンスだ! 運命神バーリトゥースが我々にチャンスを与えてくださったのさ!! 私達は貴族から王族になるんだ!!」
「す、すげぇ……。し、しかし、国王と交渉か……」
ヤーリーはブルブルと震えた。
ククク。この計画には度胸と頭脳が必要だからな。
ヤーリーには荷が重すぎるだろうよ。
「ヤーリー。私がいるじゃないか……。安心しろよ。国王には私が交渉してやる」
ダークドラゴンの封印を条件に王位を奪ってやる。
「ケンゼランド! お前は頼りになる男だ」
「フフフ。お前は聖典を読める。私は計画を立てる。役割分担は完璧じゃないか」
「だな!!」
「ランサーゴ家とソードル家で王都ハジマールを制圧してやろうじゃないか!!」
「うは! 凄いことになってきたぞ!!」
よぉし最高の展開になってきた!
王都が私のモノになればアイアさんを妻にできる!!
マワルは奴隷として一生こき使ってやろう。
ククク。最高の筋書きだぁ〜〜。
私達は、ここに来る為に停めていた馬に乗って王都へと向かった。
◇◇◇◇
ダークドラゴンは破壊行動を楽しんでいた。
王都に向かいながらも、炎を吐き、嵐を起こす。
長年封じられていたうっぷんが溜まっているのだろう。
よぉし、これならば先回りできそうだ。
ーーハジマール城ーー
やった!
ダークドラゴンより早くついたぞ!!
私は門番に叫んだ。
「国王に会わせろ! 緊急事態だ!!」
門番が怪訝な顔をしていると、嵐が起こる。
曇った雲の間から顔を出したのはダークドラゴンだった。
ほうら、お出ましだ。
「ダークドラゴンが復活したんだよ!! 国王に会わせろ!!」
私達は王の間に通された。
さぁ、この国を奪ってやるぞぉおお!!
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