第17話 テストの合否

 俺は軽々と宙に舞い、ゴブリンリーダーの槍攻撃を避けていた。


 驚愕するチェックさん。


「は、速い! よく避けた!!」


  

 まぁ、大した事はない。

 それに──。



「避けるだけじゃないんだよね」



 リーダーの槍はゴブリンキングの巨体に突き刺さっていた。



『グワォオオオッ!!』



 キングの苦悶の叫び。

 チェックさんは目を見張る。


「何ィイイイイイ!? リーダーの槍をキングに突き刺すだとぉおおお!?」


「即死攻撃は敵同士でやってくれるのが一番効率いいっしょ?」


「そうか! 片目を潰したのは標的をわかりにくくするため! しかも怒らせていたから尚更わからなかったのか!!」


『流石だ! 主の素早さあっての芸当だな!!』


 説明と絶賛ありがとうございます。

 さぁて、止めといきますか!



「行け! ヴァンスレイブ!!」



 ブーメランはゴブリンキングの眉間に命中。



グサッ!!



「やった! 刺さった!!」



 キングの咆哮が響く。



『ブォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』



 それは断末魔ではなかった。怒りと共に力を増幅する脅威の叫び。


ズシャン!!


 一筋の閃光。

 キングが斧を一振りするとゴブリンリーダー3体の首が飛んだ。

 緑色の鮮血が飛び散る。


 うはぁ、グロ注意。


「マワル! キングは怒って更に力を増したぞ!!」


『主!  回転遅延スピンスロウの効果が強制解除されてしまった!!』


 あらら、これはピンチかな?

 なんちゃって。残念ながらマイナス要素だけじゃないんだよね。


回転遅延スピンスロウが解除されてもさ、防御のスキルが無くなってブーメランが刺さっただろ?」


『しかし主。奴の肉体は分厚い。少し刺さった程度では倒すことはできないぞ! 肉の鎧だ!』


 肉の鎧ねぇ……。


「だったら深く突き刺せばいいじゃん」


『そんなスキルは持ち合わせていない!!』


「ヴァンスレイブ……。俺さ。剣聖になりたかったんだ」


『なんの話だ?』


「だから毎日、剣の素振りしてさ。何年もそれを続けて……何万回もやってきたんだ」


 こんな肉の鎧……。


 俺はブーメランを振りかぶって飛び上がった。

 それと同時。アイアは対峙していたゴブリンに向かって鉄球を構えていた。



「はぁ……はぁ……。マワルさんは……ブーメランで一番の使い手になります! そして、私は──」



 深く溜めたスイングフォームをゴブリンに向かって解き放つ。





「 大 僧 侶 に な る ん で す !! 」





 鉄球はゴブリンの頭部に命中した。



ゴンッ!!



 同じタイミング、俺はキングの額に向かってブーメランを振り下ろしていた。




「俺は剣聖にはなれない。でも──」




 それはただの斬撃。毎日やってきた剣の素振りだった。



 肉の鎧を貫いてやる!






「 俺 は 飛 刃 聖 に な る ん だ !! 」







 ブーメランはゴブリンキングの額に深々と刺さった。







グサァアアアアアアアアアアアアアッ!!

 




『グァ……………!!』



 キングは絶命して地に伏せた。



ズシィーーーーン!!



『凄いぞ主! ただの斬撃でキングの分厚い肉を貫いてしまった!!』


 砂煙が舞い上がる中、チェックさんは顎が外れそうなくらい驚愕していた。

 それは驚きと言うより呆れに近い。



「キ……キングを……。た、倒しちまいやがった……」



 もう一人。

 その事実を把握できない人がいた。



「はぁ……はぁ……。あ、あれ??」



 アイアは地面に横たわるゴブリンを見つめていた。

 ピクリとも動かないゴブリンに目を瞬かせる。




「ゴブリン……。命中……してる? よね??」




 アイアの奴、まだ状況を理解してないんだな。教えてやろう!



「アイア! やったな!! 鉄球がゴブリンに命中したんだよ!!」


「あ、マワルさん……。わ、私……。あは……。ゴ、ゴブリンを、た、倒しちゃった……」


 アイアは状況を理解した。

 大きく飛び跳ねる。


「あは! 私、ゴブリンを倒しちゃいました!!」


「おお! やるじゃんかよ!!」


 アイアは駆けつけた俺に抱きつく。


「マワルさん! やったーー!!」


「うほぉ!! おう、やったなーー!!」


 俺達は飛び跳ねて喜んだ。


『主! 朗報だ! 今の勝利でレベルが2つも上がったぞ! 上位モンスターは経験値が高いようだ! 当然スキルも2つ覚えた!!』


「んあ〜〜後々!! んな事は後でいいよ。今はめでたいんだからよ」


『おお、そうであったか。これは無粋なことをした』


「見ましたかマワルさん。私が鉄球でゴブリンを倒す所を!?」


「おう! 見た見た! バッチリ見たぞ!」


 チェックさんが首を振る。


「いやいや。そんな場合じゃなかったぞ!」


「え? どういう意味ですか??」


 おいおい、チャックさんそれはないって!


「マワルは凄いんだ! なにせゴブリンキン……。んぐ……」


「?」


「あーー。な、なんでもない……」


 チェックさんは思わず口を閉じた。俺が唇の前で人差し指を立てているのを見たからだ。


「マワルさんが、どうかしたんですか?」


「なんでもねーーよ! ね!? チェックさん!!」


「え? あ、ああ。ま、まぁ……そうだな」


「それで、アイアのテストはどうなんですか?」


 チェックさんは倒れているゴブリンを見つめる。


「あ、うん! 合格だ!!」


 俺達は喜んでまた跳ねた。



 今日の主役はアイアで決まりだ!

 


「あはは! マワルさんの応援のおかげです!!」



 彼女の汗は日の光に照らされてキラキラと輝いていた。




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現在の状況【読み飛ばしてもストーリーに影響はありません】




名前:マワル・ヤイバーン。


冒険者等級:E級。


守護武器:ブーメラン。


武器名:ヴァンスレイブ。


レベル:8。


取得スキル:

戻るリターン

双刃ダブルブーメラン

回転遅延スピンスロウ

絶対命中ストライクヒット

魔力感知センシング

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アイテム:薬草。図鑑。


昇級テスト必須アイテム:

白い角。黒い牙。緑の甲羅。



所持金:4万5千エーン。



仲間:僧侶アイア・ボールガルド。

オバケ袋のブクブク。



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