第16話 ゴブリンキングとの戦い

 俺はブーメランを持って飛び出した。

 そこは大岩の裏側に位置しており、アイアからは見えない場所である。

 俺の眼前にはゴブリンキング。そして3体のゴブリンリーダーが荒い息をしていた。

 粗方、アイアと戦っているゴブリンを助けようとしているのだろう。


「おいマワルよせ! 俺達が敵う相手じゃない!! 今日のテストは中止だ!!」


「そんなことさせない。頑張るアイアを応援するんだ」


 アイアは肩で息をしていたが、その目には闘志が宿っていた。

 目の前の敵に精一杯。大岩の裏側にいるモンスターには気がついていないようだ。


「私はマワルさんと大陸に名を馳せます。ハァ……ハァ……。約束したんです。あの日。私が冒険者になった満月の日に」


 ヴァンスレイブは 魔力感知センシングの能力で危機感を募らせた。


『無茶だ主! ゴブリンキングの魔力量は圧倒的すぎる!!』


 ゴブリンキングは目の前にいた。

 大きな鼻息は凄まじい風量だ。奴が呼吸をするだけで俺の髪が揺れる。


『ブフーー! ブフーー!!』


 試験官達は逃げる隙を作る為、ゴブリンキングに立ち向かった。

 しかし、奴が腕を軽く降っただけで彼らは吹っ飛ばされた。



「「「 うわぁあああッ!! 」」」

 

 

 3人の試験官は大岩に強打。その衝撃で2人は気を失った。

 チェックさんは打った頭を摩る。


「痛てて……。風圧だけでこの威力。攻撃が当たれば即死だぞ」


 確信と共に大声を出す。


「マワル! 逃げるんだ!!」


 ゴブリンキングは3メートルを超える大斧を振り上げた。


「なぁヴァンスレイブ。たしかブーメランの最高位は飛刃聖って言ったよな?」


『な、なんの話だ主? 今はそんなことはどうでも良いだろう?』


「大事な話さ。俺は飛刃聖。アイアは大僧侶になるって決めたんだからよ!」


 強敵に遭って逃げてる場合じゃないっての!!


 俺はブーメランを投げた。それはゴブリンキングの振り上げた腕にまとわりつく。

 やがて旋風を作り、その動きを止めた。


回転遅延スピンスロウ!!」


『ギギ!?』


 キングは振り下ろせない腕に戸惑いを隠せない。

 そんなキングをフォローしようと3体のゴブリンリーダーが大きな槍を俺に向かって刺してきた。


「マワル避けろ!!」


 言われなくても大丈夫ですって。


 俺はその攻撃を飛び跳ねて避けた。


「よっと!」


「速い!! リーダーの槍を軽々と交わしたぞ!?」


 ゴブリンキングは大きな体だ。こんな大きな的だったらよ。ブーメランが刺さり放題だよな。


「行け! ヴァンスレイブ!!」


『心得た!』


 投げたブーメランはキングの心臓を捉えた。


「よし。命中だ!」


カンッ!!


 ブーメランは跳ね返される。奴の体には傷一つない。


戻るリターン!」


 俺はブーメランを戻した。


 やれやれ、まいったな。随分と硬い体じゃないか。


「マワル! キングは防御のスキルで全身が硬いんだ。お前のブーメランじゃダメージを与えられない!!」


「ふーーん。流石はキングだな。となると、その防御のスキルを解けば攻撃が当たるってことだな?」


「何を呑気なことを言っているんだ! ホラ見ろ! ゴブリンリーダーが攻撃してくるぞ!!」


 俺は3体のゴブリンリーダーの槍をジャンプで交わした。


「うーーん。でもさ。防御スキルってどこまで影響あるんだ?」


 疑問を持ったら確かめるのが一番だな。

 柔らかい箇所を攻撃してみますか!


絶対命中ストライクヒット!!」


 俺はブーメランをゴブリンキングの眼球目掛けて投げつけた。



カンッ!!


 

 眼球はブーメランを弾く。



「ありゃ!? 目ん玉まで硬いのかよ!?」


「マワル! だから言っているだろう! 防御のスキルは硬いんだ。あの体には俺の剣も通用しないぞ! 柔な力じゃ貫通できん!!」


 柔な力じゃ貫通できないと……(メモメモ)

 んじゃあ反対に強い一撃なら貫通できるんだな。


「危ない!! リーダーの攻撃だ!!」


「はいはい」


 俺はゴブリンリーダーの槍攻撃をヒラリと交わした。


「キングは目ん玉硬いけどさ。リーダーはどうなんだ?」


 俺はブーメランを放った。


双刃ダブルブーメラン!! からの──」


 ブーメランは2つに分離。


絶対命中ストライクヒットだ!」


 このスキルは10メートルの範囲ならば、狙った所に必ず当てることができる。


 狙いは眼球!





グサァッ!!





『『  ギギャァアアアアアッ!! 』』


 2体の片目に見事命中。


「ふむ。こちらの眼球は問題ないようだな」


「す、凄い! ゴブリンリーダーにダメージを与えたぞ! し、しかし、まだ1体は無傷だ!」


「ああ、大丈夫っす。えい!  絶対命中ストライクヒット


『グギャァアアアッ!!』


 残った1体の眼球。その片目に命中。

 これでゴブリンリーダー3体の片目は潰れた。


『主! どうして両目を潰さないのだ!? あれだと暴れ回って攻撃するのが厄介になったぞ?』


「まぁそう焦んなって」


『しかし、あのゴブリンリーダーの槍を一撃でも喰らえば即死確定だ!』


「確かに……。でもさ。そんな強い一撃なら、利用しない手はないだろ?」


『どういう意味だ主よ?』


 チェックさんは暴れるゴブリンリーダーに恐怖を募らせた。


「ダ、ダメだ! 手がつけられん!! どうして両目を攻撃しなかったんだ!? やはり、日の浅い冒険者には無理がある!! 逃げる準備をするんだマワル!!」


「何言ってんすか! あなたは試験官なんだから、アイアをしっかり見といてあげてくださいよ!」


「バカもん! こんな非常時に何を言ってるんだ!! あんな状態の奴らが集中して攻撃すれば、いかなお前でも一溜まりもないぞ!!」


 チェックさんは俺がやる次の言動で更に呆れた。


「はいはいーー! ゴブリンリーダーさん。攻撃はこっちですよーー!」


「終わったーー! マワル! 何考えてんだぁああああああ!!」


 俺の呼び込みに3体のゴブリンリーダーは更に怒り狂った。大きな槍を俺に向かって突き刺す。




グサァアアアアアアアアッ!!




「マワルゥウウウウウウウ!!」



 チェックさんの叫びが空に響いた。





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現在の状況【読み飛ばしてもストーリーに影響はありません】

*今回変化なしです。



名前:マワル・ヤイバーン。


冒険者等級:E級。


守護武器:ブーメラン。


武器名:ヴァンスレイブ。


レベル:6。


取得スキル:

戻るリターン

双刃ダブルブーメラン

回転遅延スピンスロウ

絶対命中ストライクヒット

魔力感知センシング


アイテム:薬草。図鑑。


昇級テスト必須アイテム:

白い角。黒い牙。緑の甲羅。



所持金:4万5千エーン。



仲間:僧侶アイア・ボールガルド。

オバケ袋のブクブク。

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