第12話 ケンゼランドのざまぁ仕掛け

 王都へ帰る途中。

 モンスターを倒してヴァンスレイブがレベルアップした。


『主!  魔力感知センシングのスキルを覚えたぞ!』

 

 この技はモンスターや、魔力の高い存在を感知することができる便利なスキルだ。


 まぁ、もう目的地に着いちまったけどな。

 今後の活用に期待しようか。




ーー王都ハジマールーー


 午後。


 俺達はギルドへと向かった。


「マ、マワルさん」


「ん、どした?」


 アイアがオドオドしながら俺の背に隠れる。


「じ、実は……。以前から気になっていたのですが……。私、どうも誰かに恨まれてるみたいなんですよね。強い視線を感じるんです」


「そんな殺気は感じねぇけどな。ヴァンスレイブ。お前は感じるか?」


『うむ。我も感じぬぞ。 魔力感知センシングにも反応は無い』


「あーー。その……。王都に来るといつもなんです」


 王都限定?


 俺はキョロキョロと辺りを見渡した。


「はぁーー。可愛いなぁ……」

「あの子。めちゃくちゃイケてるんだけど……」

「うう……。あの男が羨ましい……」


 もしかして……。アイアの感じてる視線って、街中を歩く男達が送る熱い視線のことか?


「ほ、ほらマワルさん! あの人、なんか私に恨みがある感じです!!」


 彼女が指差す先には頬を染めた男がアイアに見惚れていた。

 耳を澄ますと「美少女だなぁ」とため息をついている。


「いや、あれは違うよ」


「何が違うんですか?」


 こいつ……。自分が美少女だという自覚がないのか……?

 若干、被害妄想癖があるな。


「ほ、ほらぁ! あっちの人も、こっちの人もぉお! 私を恨むような目で見つめてますよ!! 真っ赤な顔で怒ってます! マワルさぁあん!!」


 そりゃ見惚れてるだけだっつーーの。

 もうハッキリと自覚させてやろう。


「アイアがモテてるだけだよ」


「そんなぁ! 私なんかがモテたりしませんよ!!」


 自分を落とすなぁ……。


「いや……。でも道ゆく男達はアイアに見惚れてるじゃないか」


「私なんかがそんな対象になったりしませんよ。僧侶の学校でもね。嫌がらせの手紙を沢山貰ったんですから」


「……なんじゃそりゃ? ちなみにどんな内容だったんだ?」


「私のことが好きだとかなんとか……。愛の告白ですよ!」


 おいおい……。そりゃ、リアルにラブレターじゃねぇか。


「喋ったこともない人が私のことを好きになります??」


 まぁ……。大半の男は見た目重視なんだよな。

 アイアは顔が可愛くてスタイル抜群。胸がデカいし余計にモテるんだろう。

 恋なんてさっぱりわからんが、男が可愛い女の子に惚れる理屈はよくわかる。

 そのラブレターを出す男にとって性格は二の次なんだろうな。


「男って悲しい生き物なんだよ」


「なんですその理屈? わぁッ! また見られてますぅう」


「まぁいいじゃん。見せとけば」


「うう……。怖いですよぉ。後ろから刃物で刺されたらどうするんですか!?」


「ははは……そんなことある訳な……」


 いや、待てよ。変態はいるからな。

 好きが暴走すれば、そんなことにもなりかねんか。


「あーー。そん時は俺が守ってやるよ。変な男が近寄らないようにさ」


 アイアは全身を真っ赤にした。

 そして、俺の腕を抱きしめる。


「お、おいおい! なんでそうなるんだよ!?」


「えへへ……。だってぇ……。嬉しいんですもん」


「こんなに近い距離だと、仲間以上の関係じゃないとかなんとか喚き出すんじゃないのか?」


「そ、それは……。その……。そうですがぁ……。わ、私のこと……変態さんから守ってくれるんですよね?」


「ま、まぁな。仲間だからな」


「えへへ……」


 アイアは顔をくっつける。


「おいおい! 近付きすぎだろうがぁ!」


「だってぇ……。ほらぁ、あっちの人もこっちの人も、こっちを見てますぅう! 変態さんです! 守ってくださいマワルさん!!」


「大袈裟な……」


「ほら! どう見ても人を恨んだ目をしてますよ!!」


 それは俺に対する嫉妬の視線だ……。

 アイアより俺のが危ないんじゃないだろうか。


 俺達はギルドへと向かった。



◇◇◇◇


 

 ーー緑のギルドーー



 俺は受付でE級クエスト達成の申請をしていた。



「ふ……。マワル」



 この人を小馬鹿にしたような声は……。



 剣士ケンゼランドがめかし込んだ女と立っていた。

 女はシルクのドレスを着て、ギルドには場違いな装飾品をまとっている。


 貴族の依頼者かな?


「ククク。やはり気になるか?」


 はぁ? 聞き方がウザいな。


「ちょっとギルドには場違いな人だからな」


「クハハ。こいつは俺の仲間さ。魔法使いのホージョリーだ」


 ホージョリーは髪をかき上げて、まるで俺を誘惑するように自分をアピールした。


「えらく煌びやかに飾ってんだな。とても魔法使いには見えねぇや」


「ダハ! どうだ美人だろう?」


 え? なんて答えたらいいんだ??


 彼女は中肉中背。胸は普通。一重まぶたに大量のアイシャドウを塗りたくっていた。


 び、美人なのか、この人?? 


「ホージョリー。今日も綺麗だよ」


「ちょいとケンゼランド、やめとくれよ。本当のことを言うのは。オホホ」


「私はお前みたいな美人が仲間で鼻が高い」


「ホホホ……。あたしの色気はお子ちゃまには刺激が強すぎるかもね。アハン」


 …………なんだなんだ? 

 よくわからんがケンゼランドってこういう女がタイプだったのか?


 俺が眉を寄せていると、槍使いのヤーリーが、これまた同じように煌びやかに着飾った女を連れて現れた。


「よう! ブーメラン」


「なんだよお前まで。今日はパーティーでもあんのか?」


「こいつは仲間の賢者、美少女ベスタニアだ」


 紹介された女は、目が線のように細くて顔はそばかすだらけ。胸はまな板だった。

 

 ……び、美少女ぉ? 

 ふ、普通な感じだけど……?。


「ベスタニア、今日も可愛いぜ」


「ちょ! ヤーリーやめろし! 照れるしーー! 本当のこと言われたら、ガチで照れるしーー!」


「ハハハ! 照れてるところも可愛いなぁ!!」


「ちょ、ガチでやめろしーー! 恥ずいしーー! 可愛いのは認めるけどぉ〜〜」



 おいおい。俺はどんな対応をしたらいいんだ!? 




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現在の状況【読み飛ばしてもストーリーに影響はありません】




名前:マワル・ヤイバーン。


冒険者等級:E級。


守護武器:ブーメラン。


武器名:ヴァンスレイブ。


レベル:6。NEW


取得スキル:

戻るリターン

双刃ダブルブーメラン

回転遅延スピンスロウ

絶対命中ストライクヒット

魔力感知センシング。NEW


アイテム:薬草。図鑑。


昇級テスト必須アイテム:

白い角。黒い牙。緑の甲羅。NEW



所持金:4万5千エーン。NEW



仲間:僧侶アイア・ボールガルド。

オバケ袋のブクブク。

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