第13話 仲間自慢 【ざまぁ】

 俺は2人に問いただした。


「お前ら、彼女の自慢でもしたいのか?」


 ケンゼランドは笑った。


「ハハハ! 別に付き合っている訳ではないさ。ただ仲間を紹介したかっただけさ」


「右に同じ。俺も美少女な仲間を紹介したかっただけだ」


 紹介してくれた女達は綺麗というには微妙なんだよな。

 俺の感覚がおかしいのかな??


 ケンゼランドはニヤついた。


「時に……。お前は最近仲間ができたらしいなぁ? 何やら鉄球が守護武器らしいじゃないか」


「ああ、今は昇級テストの申請をしてるからな。もうすぐしたら帰って来るよ」


「プフゥッ! そ、それじゃあ紹介してもらおうかな……。そのゴリ……。プフゥッ。その仲間の女を」


 なんで俺がこいつらに仲間を紹介しなくちゃならんのだぁ?

 まぁでも、ギルドで顔を合わすしな。少しくらいはいいのかな?


 ケンゼランドとヤーリーは互いにグフフと笑っていた。


 なんか嫌な含み笑いしてんなぁ……。


「あ! さてはお前ら、仲間の守護武器が鉄球だから、笑いものにしようとしてんなぁ!?」


 ケンゼランドは両手を振った。


「いやいやいや! そんな失礼なことはせん! 私達は女性には優しいんだ!」


「まぁ、だったらいいけどよ。馬鹿にしたらただじゃおかねぇかんな!」


「ハハハ、なーーに。単なるコミュニケーションさ。互いの仲間を紹介するな!」


 やれやれ。よくわからんが、少しくらいは付き合ってやるか。


 ヤーリーはコホンと咳をついてかしこまった。


「それで。お前の相方は語尾にウホッて付けるのか?」


「はぁ?」


 なんの話だぁ??


「ちょ! ヤーリー! 馬鹿! んなこと聞くな!」

「プフゥッ! だって知りたいだろうがぁ!」

「ギャハハ! それは後のお楽しみだぁ!!」


 なんだこいつら? 気持ち悪……。




「マワルさーーん」




 お、帰って来たな。


「昇級テストの申請してきました」


「おう、そかそか」


「私みたいなF級冒険者の場合、昇級テストの受験条件は上級クエスト1つの達成だけでもいいそうです!」


「おう、良かったな!」


「えへへ。これもマワルさんのおかげです」


 ケンゼランドとヤーリーは顔面蒼白で顎が開いたまま動かなくなっていた。


「彼女が俺の仲間の僧侶……っておい! お前ら聞いてんのか!?」


「「 ハガ……ハガハガ…… 」」


 ガクガクと震える。

 目は見開いたまま、ただ瞬きをするだけ。


「マワルさん、この方達は?」


「ギルドの顔見知りだよ。お前を紹介しようと思ったんだけどさ」


 ケンゼランドはゴクリと唾を飲み込んだ。

 正気を取り戻したかと思うと、真っ赤な顔になって頭を下げた。


「わ、私はケンゼランド・ソードル。守護武器は剣です。あ、あなたは?」


「私はアイア・ボールガルド。僧侶をやっています。守護武器は……て、鉄球です」


「あ、あなたが噂の鉄球僧侶……」


「ハハハ。噂なんですか? で、でも。本気で冒険者やってますからね! 今度E級の昇給テストを受けるんです。えへへ。受かればマワルさんと一緒になれます」


 ケンゼランドは全身を真っ赤にした。そしてアイアの両手をがっと掴む。


「どうしてあなたが!?」


「キャッ!!」


「あなたのような美しい方が! どうしてこんな嘘つき野郎と冒険をしているのですか!?」


アイアはその手を離し、俺の後ろに回った。


「マワルさんは嘘つきなんかじゃありません! とっても優しくて誠実で、強くて……も、もうとにかく、めちゃくちゃ素敵なんです!!」


 なんなんだよ急に……。お世辞でも照れるじゃんかよ。


 ヤーリーはケンゼランドにすがり付いた。


「おいゴリラじゃねぇぞ!? どうなってんだ!?」

「知るか! 今はそんなことどうでもいい!!」

「語尾にウホッって付いてないぞ!?」

「だから、知らん!! それよりあんな美少女がマワルの仲間だということの方が重要だ!!」


 なんの話だぁ??


 ケンゼランドは俺の背に隠れるアイアを覗き込んだ。


「ア、アイアさん。そんな奴と組まずに私のパーティーに来ませんか?」


 アイアを見つめる顔は真っ赤になり、目は血走っていた。鼻からはブフーと荒い息を出す。

 彼女はその異様な雰囲気に震える。俺の肩をぎゅっと掴んだ。


「へ、変態……」


「へ、ヘンタイ??」


 ケンゼランドは首を傾げる。


「よ、よくわかりませんが。そんな奴の影に隠れていないで出てきて下さいよ」


「きゃッ!! 変態ッ!!」


 アイアは怯えて更にしがみついた。


「おい、ケンゼランド! アイアに変態認定されたんだからもう近づくな!」


「へ、変態だと……? こ、この私がぁ??」


「そうだ! 彼女が怖がっているだろうが!」


「は? な、なぜ私が……。へ、変態扱いされなければならないんだ??」


「その血走った目! 自分の顔を鏡で見てみろよ」


「ち、違ッ!! これはその!! 綺麗な女性を見てときめいているだけだ!!」


 アイアは肩をすくめた。


「うう……。変態ですぅ」


「ど、どうしてそうなるのですか!? アイアさん! 私はソードル男爵の6男です! 由緒正しい貴族の出なんですよ!!」


 へぇ〜〜。知らなかったな。

 まぁ、身なりが立派だし、貴族でも違和感はないか。


「でもな、ケンゼランド。アイアが怖がって、お前を変態認定したのは事実なんだからな!」


「なぜそうなるのだ!? 私は変態ではないぞぉッ!!」


「うう……。初めて会っていきなり勧誘。へ、変態ですぅ……。マワルさん助けてくださいぃいい」


「なんでそうなるんですかアイアさーーーーーーん!!」


「さぁどうする? パーティーの仲間にセクハラするなんて重罪だぞ。王都の衛兵を呼んで逮捕されれば爵位剥奪……なんてこともありえるかもなぁ」


「くっ……! くぅうう〜〜!!」


 俺はブーメランを手に取った。




「んじゃぁ……現行犯逮捕といきますか〜〜」





 ケンゼランドは汗を滝のようにかいた。



「くっ!! お、覚えていろよマワル!!」



 そう言って去って行く。



「ハハハ。俺の目の前で仲間を勧誘なんかするからそうなるんだよ!!」



 状況を掴めないホージョリーがケンゼランドの裾を引っ張る。


「どういうことだいケンゼランド? 女の仲間は私でいいんじゃないのかい!?」


「要は済んだ帰るぞ!!」


「ええ? もう何よ急なんだからぁ??」


 ヤーリーも同じように去って行く。

 同行したベスタニアも釈然としない。


「どうして帰るし? ヤーリー状況を説明しろしーー!」


「う、うっせえなブス!! もう終わったんだよ!!」


 その瞬間、ヤーリーはベスタニアの平手を食らった。


バチィイン!


「げふぅッ!!」


 ホージョリーはケンゼランドの腕を組んだ。


「じゃあ、今夜は2人きりでディナーにでも行くかい?」


「離せブス! ディナーなんか1人で行け!!」


「誰がブスですって!? このヘタレ野郎ッ!!」



バチィイインッ!!



 ホージョリーのビンタが彼の頬を打つ。その音と同時。ケンゼランドの悲鳴がギルドに響いた。




「あぎゃああッ!! 父さんにもたれたことないのにぃいッ!!」




 なんだこいつら……。

 結局何がしたかったんだろうな?

 さっぱりわかんねぇや。




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現在の状況【読み飛ばしてもストーリーに影響はありません】

今回変化なしです。



名前:マワル・ヤイバーン。


冒険者等級:E級。


守護武器:ブーメラン。


武器名:ヴァンスレイブ。


レベル:6。


取得スキル:

戻るリターン

双刃ダブルブーメラン

回転遅延スピンスロウ

絶対命中ストライクヒット

魔力感知センシング


アイテム:薬草。図鑑。


昇級テスト必須アイテム:

白い角。黒い牙。緑の甲羅。

残り2つ。


所持金:4万5千エーン。



仲間:僧侶アイア・ボールガルド。

オバケ袋のブクブク。

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