12 剣聖三兄弟 ✳︎ステータス記載

 ネイビス、イリス、ビエラの三人はFランクダンジョンである『ウサギパラダイス』の入り口の前で作戦会議をしていた。既に掲示板で『ウサギパラダイス』の情報をある程度確認し終わり議題は次に進む。


「次はそれぞれのステータスを確認しようか」

「賛成!」


 ネイビスの提案にイリスが元気よく同意する。イリスは初ダンジョンがとても楽しみなのだ。三人はお互いのステータスを見せ合う。


 名前:ネイビス

 年齢:17

 性別:男

 職業:ノービスLv.24(経験値二倍)

 HP:105/75+30

 MP:75/75

 STR:25+10

 VIT:25

 INT:25

 RES:25

 AGI:25

 DEX:25

 LUK:25

 スキル:『応急処置』

 アクセサリー:『ミスリルバングル』『ロコルリング』


 名前:イリス

 年齢:17

 性別:女

 職業:剣士見習いLv.22

 HP:219/69+150

 MP:69/69

 STR:46

 VIT:46+50

 INT:23

 RES:23

 AGI:23

 DEX:23

 LUK:23

 スキル:『スラッシュ』

 アクセサリー:『シルバーバングル』『ゴールドバングル』


 名前:ビエラ

 年齢:17

 性別:女

 職業:僧侶見習いLv.21

 HP:66/66

 MP:96/66+30

 STR:22

 VIT:22

 INT:44+15

 RES:44

 AGI:22

 DEX:22

 LUK:22

 スキル:『プチヒール』

 アクセサリー:『魔晶石のネックレス』『銅の指輪』


「やっぱり基本は俺とイリスが前で戦ってビエラが後ろで待機かな」

「そうね。それでいいと思うわ」

「回復は私に任せて!」


 結局いつもの戦い方に決まり、作戦会議は直ぐに終わった。三人はダンジョン入り口の受付まで向う。五組のパーティーが並んでいたので三人はその後ろに並ぶことにした。すると一つ前のパーティーの会話が聞こえてくる。


「俺ら142期の中でダンジョン一番乗りだよな?」

「違いない。142期の掲示板を見てもみんなイカルにすら着いてなかったぜ」

「俺達が事実上142期最強パーティーってことだな!わはは」


 どうやら一つ前の男三人組は142期の卒業生パーティーのようだ。彼らの話を聞いていたイリスが小声でネイビスに尋ねる。


「あなた、飛空艇使わなくてもイカルまで一週間で来れるって言ってなかった?あの先輩方、一年かかってるっぽいんだけど」

「私も気になる!」


 イリスとビエラが抱いた疑問はネイビスの発言と現実の間の齟齬についてだった。ネイビスは一つ心当たりがあった。


「俺達は一日で王都の隣の町ロコルに着いただろ?先ずそれが普通じゃないんだろうな」


 ネイビスの言葉にイリスは首を傾げて指摘する。


「でも、勇者パーティーもロコルの町に着いてたわよね?」

「それは勇者パーティーだからだ。勇者、剣聖、賢者。これ以上にない最強パーティーだからな」

「でもでも。それなら勇者パーティーくらい強ければ一ヶ月もあれば来れるんじゃない?」


 ここでビエラが意見する。ネイビスはまたなぜ一年もかかったのか考える。


「もう本人に聞けばよくね?」

「ええ!あなた本気?」


 ネイビスはイリスの事など目もくれず、男三人組のパーティーに話しかけに行く。


「もしかして勇者学院の卒業生ですか?」


 ネイビスが声をかけると三人とも振り返ってネイビスをジロジロ見る。


「そうだが、やはり分かるか?」

「ええ、強そうですから」


 ネイビスの言葉に三人は笑顔になる。ネイビスはチョロそうだなと思うが声には出さない。


「そうかそうか!聞いて驚けよ。俺達はな、三人とも上級職の剣聖なんだぜ!」

「どうだすごいだろ!」

「そうなんですか!俺なんかノービスですよ」

「そうかそうか。それは災難だったな。まぁ見てろ。俺達がいずれAランクダンジョンクリアしてやるから」

「はい!それとなんですが、是非勇者学院からここまでの旅の話を聞きたいんです!」


 ネイビスは聞きたかった本題に入る。


「おう、いいぜ!とは言ってもあまり面白くはないぞ?」

「いえ、そんなことは。是非お聞かせください!」


 それから男が語った話を要約すると次のようになる。先ずは王都周辺で3日ほどレベル上げをしてロコルの町に向かった。だが、そこでお金が尽きてロコルの町の冒険者ギルドで依頼をこなすことで生活費を稼いでいたらしい。あとはその繰り返し。次の町に行って、冒険者ギルドで金を稼いで、それを七回経てようやくダンジョン都市イカルに着いたそうだ。


「ありがとうございました!」

「おうよ!何か困ったら俺達にいつでも頼りな!」


 ネイビスは三人にお辞儀をしてイリスとビエラの元へと戻っていった。


「あなたも大概あざといわね。ペコペコお辞儀しちゃって」

「いいんだよ。別に減るもんじゃないしな。それより聞いてたか?やっぱり必要なのは金だって分かっただろ?」


 ネイビスは王都の噴水の前で二人に説明したのを思い返していた。


「そうだね。私達は隠しエリアでいっぱい儲けちゃったからね。なんだか申し訳ないよ」

「気にしたら負けよビエラ。ほら私達の番だわ」


 受付の説明を受け終わった剣聖三兄弟がダンジョンのゲートに入っていき、次はネイビス達のパーティーの順番となった。


「こんにちは。ギルドカード、もしくはマギカードをご提示ください」


 受付の女性にそう言われて三人はインベントリからマギカードを取り出して見せる。


「はい、確認しました。どうやらダンジョンは初参加のようですね。説明は必要ですか?」


 イリスとビエラがネイビスに視線を送る。


「じゃあ、お願いしてもいいですか?」


 ネイビスは前世の『ランダム勇者』の知識は持つものの、現実世界となったこの世界では勝手が違う可能性もあるので一応説明は受けることにした。


「かしこまりました。先ずはあちらに見える青白く輝いているのがダンジョンのゲートになります。ゲートを通ると一パーティーにつき一つのダンジョンが生成され、その異空間に飛ばされます。ダンジョンのボスを倒して出現する帰還ゲートか、スタート地点にあるリタイアゲートのいずれかを通ることでダンジョンの外に出ることができます。何か質問はありますか?」


 受付の女性は淡々と説明をする。受付の女性の説明に「ほう」とネイビスは息を漏らした。この世界のダンジョンは一体どんな仕組みなのかネイビスは気になっていた。『ランダム勇者』では操作するパーティー以外の冒険者をダンジョン内で見たことはなかった。そもそも『ランダム勇者』には141期や142期の先輩も同期の143期も出てくることはなかった。だがこの世界にはロコルの町のダルフィスや勇者パーティーなど他の冒険者だって存在するのだ。パーティー毎にダンジョンが生成されるのなら混雑の心配はないなとネイビスは安心した。


「イリスとビエラは質問あるか?」

「私はないわ」

「私も大丈夫」

「なら説明は以上で終わりです。ゲートにお進みください」


 三人は受付の女性に促されるままにゲートへと進む。青白く輝く大きな光の渦の前に三人は立ち息を呑む。イリスやビエラはもちろん、今までゲームの中でしかゲートを潜ったことがないネイビスも緊張していた。


「三人でせーので行きましょう」

「そうだな」

「ねぇ、二人とも。手繋ごう?」

「ビエラ、ナイスアイデア!」


 三人はビエラを中心にして手を繋いで並び一緒にゲートを潜るのだった。

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