熱を帯びる赤い瞳
巨人たちの追跡は
二人は巨人たちの死角を通り、レーダーを
ガルダの作戦は功を奏した。巨人たちは標的を完全に見失い、苛立ちのあまり
「もうすぐ合流地点だが……気を抜くなよ」
ガルダの忠告を聞いていたにも関わらず、ダルタンは先行する彼女に話しかける。
「助けてくれたことには感謝します。でも、僕は貴女に従うわけじゃない。リオラを助けるために行動を共にするだけです。もし、リオラを見捨てるようなことになれば、僕は相応の行動を取ります。リオラの命を最優先に……」
続く言葉は
「ごめん、リオラ……僕が弱いばかりに、あんな、あんなことに……」
ダルタンのか細い声が次第に大きくなっていって、やがては大粒の涙が頬を伝い、話し声は泣き声に変わった。
瞬間、ガルダはダルタンの口を左手で塞ぎ、右手を彼の後頭部に回す。
ガルダは自身の額をダルタンの額にぶつけると、熱された刃のように赤い瞳を突き付けた。
「喚くな小僧。リオラってのが誰なのか生きてるのか死んでるのか私には分からないが、泣いている場合か。悔恨の情でその身を焼き焦がすくらいなら、我々にしか出来ないことをしろ。分かるか」
余りにも突然の接近と威圧感に、ダルタンは気圧されて抵抗できない。彼は弱々しく首を横に振った。
「未来に向かうことだ。死人には目がない。口もなければ手も足もない。だが、我々は幸運なことに五体満足で生きている。その足で歩き、その手で奴を殴り飛ばすことだって出来る。生き残った者達だけが、この世界を変えられるんだ。そうだろう」
ダルタンは、はっとして頷く。生きている限り幸せに向かって歩く。それがリオラの口癖だった。
「なら、涙は祝杯の時に取っておけ。今は一刻も早くここから立ち去り、仲間たちと合流しなくてはならない。私の言う通りに出来るか」
ダルタンは大きく頷く。
彼の決意の
「よし、いい子だ。ここまでよく頑張ったな……さあ、行くぞ」
二人は火力発電所の残骸を通り抜けて、先刻の戦いとはかけ離れた静けさの中、月明りから逃れて歩く。滅びた鋼鉄の樹海に響くは、
道中、ダルタンは体中に残った痛みに耐えかねて
ガルダはそっと歩み寄って、ダルタンの前で屈み、物言わず背中を近づける。
ダルタンは意図を読み取れなかったが、ガルダの手招きを見て、彼女の気遣いに気が付いた。
ダルタンは彼女の背中にそっと抱き着く。
ダルタンを背負いながらも、ガルダは速度を緩めることなく、足音を立てることもなく、合流地点の倉庫へと辿り着く。
一寸の光も届かない暗黒空間に足を踏み入れ、ハンディライトで床を照らすと、地下室へと続く入り口が露わになった。
「下ろすぞ」
「はい……」
ガルダはダルタンを側に座らせ、そして屈み込み、手の甲を一定の間隔で扉に当てる。仲間が到着したことを報せる合図だ。
ゆっくりと、鈍い音を立てて入り口は開いた。中から顔を出したのは、額から右目にかけて裂傷の谷が形成されている男。
「おかえり、軍曹」
男は低く
「そちらは?」
男がそう言い切る前に、ガルダは返答を口にし始めた。
「協力者だ。経緯は追って話す。中に入れてくれ、マイルズ」
マイルズは右手で傷を抑えると、喉から出かかった意見を飲み込みながら頷く。
「了解……これは良い知らせなんですね」
「多分な」
これからの気苦労を案じてマイルズは表情を曇らせるが、一方で大きな期待を胸中で膨らませた。長い付き合いだからこそ彼は知っている。ガルダが厄介ごとを持ち込んで来た時、それは
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