第11話 商業の街、ビートシティ
「一応学校は卒業したし、シーカーとしてのライセンスももらったけど‥どこに行こっか?」
「そうですわね…これといってあてもありませんし‥。」
わずか半年で学校を卒業した2人は今、何処に行こうか迷っていた。
特に行くあてもなければ、卒業したらここに行こう!なんて場所は決めてない。
本当に行き当たりばったりで、一つの町に下宿をとっていた。
その日の夜、2人はどこに行こうかの相談をしていた。
「それにしても、シーカーになったら公共機関とかが全部タダになるなんて驚いたなぁ。」
「まぁ…そもそもシーカー自体が少ないですし、人外の討伐においてシーカーは欠かせない存在ですから。」
「うーん…本当にどこに行こうかね?」
「カタログでも見ながら決めませんこと?」
丁度下宿先の宿に置いてあったカタログを片手に、アナスタシアが提案する。
特に異論もないため、ソフィアはアナスタシアと一緒にカタログを開いた。
「えっと…闘技場にリアル人狼ゲーム、鬼ごっこ…いろいろあるみたいだね。」
「あまり外に出る事がありませんでしたから、この様な催しがあるだなんて知りませんでしたわ。」
「私も知らなかった。でも…なんだかどれもこれも、あんまりピンとこないと言うか…なんだか違うって感じがする。」
「どうにもパッとしない催しが多いですわね。…なら、賞金稼ぎのためにもお尋ね者狩りでもします?」
「確かに、お金は大切だし…腕試しにもなるかも。」
「でしたら、その様な依頼が集まるビートシティにでも行きましょう。」
「ビートシティ?」
「ビートシティはシーカー同盟の支部が置いてある街でもあり、商業が盛んな街ですわ。」
「そこにいけば依頼がもらえるの?」
「えぇ、商業が盛んな分、強盗や盗賊などが多くなるものですから。あの街は日々問題ごとを解決するために人手を募っています。」
「なんだか物騒な街みたいだね…ちょっと怖いかも。」
「そこまで怯える必要もないわ。ビートシティにはシーカー支部があるおかげで見回りや盗賊討伐もシーカーたちによってされていますし、少なくとも街中を警戒してあるかなければいけない、などと言った事はないですわ。」
「そうなの?でも…そしたら私たちが依頼を受ける必要もないんじゃない?」
「どうやら年中人手が足りていないみたいですね。ですから、外部のシーカーや実力者にも協力をお願いしているみたい。」
「それなら私たちにも依頼が回ってくるね!」
「えぇ。…では、早速行きましょうか。」
2人で話し合った結果、ビートシティに行って何かしらの依頼をこなすことになった。
シーカー学校を出て実力も十分ついたと思うし…その腕試しにもちょうどいい。
そんなことを思いながら、ソフィアは自分の数歩先を歩むアナスタシアの後ろをついていきながら、これから自分が目にする新たな世界への期待に胸を躍らせた。
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ガタゴトと電車に揺られながら、ソフィアは一瞬で過ぎ去っていく窓の外の世界を眺める。
遠くの方には森がみえ、すぐ近くには小さな村がある。
「わぁ…!見て見てアナスタシア!すぐ近くに村があるよ!」
「村?」
ソフィアが指差す方向をアナスタシアも見る。
確かに、小さな村があった。
遠ざかっていく村を見つめながら、アナスタシアはソフィアに話しかける。
「そういえば、あの村からはビートシティ1番の料理屋で使われている作物が購入されているのだとか…。」
「街1番の料理屋?それって‥すごく美味しい料理がたくさんあるってことだよね?」
「えぇ、実際に食べたことこそありませんが、大層美味なのだとか。」
「気になるなぁ…ねえ、街に着いたら一度その料理屋に行ってみない?なんだかお腹も空いたし…記念にさ。」
「そうですわね…わたくしも兼ねてから気になっておりましたし、ちょうどいいですわ。」
「やったぁ!じゃあ、街に着いたらすぐに食べに行こう。」
「そうしましょうか。」
ビートシティ1番の料理‥どんな味なのか想像すると、よだれが出てきそう。
美味しい料理のことを考えれば考えるほど、お腹が空いてくる。
ビートシティにたどり着くのはまだかまだかとワクワクしながら、ソフィアは窓の外の景色を堪能しながら時間を過ごした。
電車が目的地の駅に到着し、2人は座席から降りて改札を潜り抜け…
「ここが…ビートシティ!」
ワイワイと活気付いた市場が眼前に広がった。
皆一様に呼びかけをしたり…中には店の店主と値切りをしている者もいる。
どこを見ても商売人ばかり、あちらこちらから宣伝の声や街ゆく人を捕まえる声が飛び交う。
そして風に運ばれて香ってくる塩の香り…。
遠くから聞こえてくるのは漁船の汽笛の音…故郷を思い出す、ソフィアの好きな音だ。
ここは海沿いの街、ビートシティ。
商業が盛んで、夜も人の声が絶えないほど賑やかな街だ。
「アナスタシア!早速料理屋に行こうよ!」
「ちょっと!お待ちになって!」
ソフィアの目に移った街並みは目を瞑ってしまいたくなるほどキラキラしていて、新鮮で、心が躍る。
感極まったソフィアはアナスタシアの言っていた料理屋の場所もわからないのに、一目散に汽笛の音がする港の方へと駆け出した。
多くの人々が真逆へとゆっくり歩いていく中、ソフィアはその人並みに逆らって逆走し、心地のいい風をめいいっぱいに浴びる。
ウキウキと弾む心のまま、港についた時、一陣の風がソフィアの髪をたなびかせ、美しく光る水面を揺らす。
「すごい!島の外にはこんな場所があったんだ!」
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