第11話 儀式
この森の奥に住む、緑の瞳を持つ者達には、一つの儀式がある。彼らは普段、森の奥に住み、その森から外へは出ないが、一度だけ、森の外へ出る時がある。弓取の儀と言われている。
子供達が成長した証に、数日分の食料と弓矢だけを持って、森から外へ出て、森の中にいる小動物ではなく、森の外にいる動物を狩猟して帰ってこなければならない。見事、狩猟を遂げ、村に帰ってきたときに大人として認められる。これは、自分達の森以外の動物を知ることと、自分達以外の民族と触れ合い、知識とともに魂を高めるという意味がある。
そして今、ちょうど一人の若者が見事に狩猟を終え、村に帰ってきたところだ。森の民達は、暖かく彼を迎え、狩猟の成功を労う。一通りの挨拶が済み、弓取の儀も滞りなく執り行われ、大人達は外界の様子を聞く。するとあらぬ事を言う様に、若者が喋り出す。
外界は、今まで聞いてきた様子と全く違う。狩猟はできたが、村に住む人々は老人と女だけ、男達は高い壁の側で、武器を持ったまま其処から動こうともしない、と言う。
それを聞いた老人は、小さな池の前に立ち、しばらく水面を眺めていると、子供達が拐われて行く情景が現れた。
早々に老人は民達を集め、水面に現れた状況を皆に伝える。あちらこちらから溜息が聞こえた。老人は、実に悲しい出来事だ、外界へ出て行われるべき学びの時がこの様な結果をもたらすとは、と語った。
「どうしますか?」
と初老の男が老人に聞く
「見捨てるわけにはいかないだろう」
「では?」
「弓取の儀を終えた若者を二人集めよう」
「然し、一度外界へ出たものに二度目はない、二度目に出て行ったものは帰る事を許されない。それでも弓取りの儀を終えた若者を選ぶのですか?」
「若者を二人選んでくれ」
「分かりました」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます